−あん(an)−
暗影を投ずる(あんえいをとうずる) 暗い影が差すという意味で、ことをなそうとするときに一抹の不安が生じること。 類:●不安を宿す
案外者(あんがいもの) 思いの外のことをする者。特に、無礼な者。 類:●慮外者
鮟鱇の餌待(あんこうのえまち) 口を開いて、ぼんやりしている様子。
鮟鱇の唾に噎せたような人(あんこうのつにむせたようなひと) 口を開けてぽかんとし、腰の落ち着かない愚鈍な者。
鮟鱇の待ち食い(あんこうのまちぐい) 1.鮟鱇は小魚が寄ってくるのを待って食べることから、食べ物が出されるのをただ待っていること。2.転じて、自分は何も貢献していないのに、ご馳走(ちそう)に与(あず)かること。 反:■働かざる者食うべからず
鮟鱇武者(あんこうむしゃ) 口では大きなことを言うが実際は臆病な武士のことを、罵って言う言葉。 類:●鮟鱇侍(あんごうざむらい)
闇室を欺かず(あんしつをあざむかず)・侮(あなど)らず[=暗室を〜] 誰も見ていない暗い部屋の中にいても、後ろめたいことをしたことをしない。自分自身の行動を慎(つつし)むべきであるということ。 類:●君子は独りを慎む●屋漏に愧じず 出典@:「宋史−呂希哲」「不欺闇室」 出典A:「南史−阮長之伝」「長之固遣送曰、一生不侮暗室」 故事:中国、梁の簡文帝(かんぶんてい)蕭綱 (しょうこう)は大宝2年(551)の10月、酔臥している間に土嚢(どのう)を積まれ、圧死して果てた。自室の壁には「自序」が書き付けられていた。「有梁の正士の蘭陵の蕭世纉(しょうせいさん)、身を立て道を行ない、終始一の如し。風雨は晦(やみ)の如く、鶏鳴は已(や)まず。暗室を欺かず、豈(あ)に況(いわ)んや三光をや。数は此こに至る、命や如何(いかん)せん」
晏子の御(あんしのぎょ)[=御者(ぎょしゃ)] 他人の権威に寄り掛かって得意になっている者。 故事:「史記−晏嬰伝」 宰相晏子の御者が、宰相の御者であるのに満足していたのを妻に窘(たしな)められ、発奮した。
安車蒲輪(あんしゃほりん) 老人を、労って遇すること。老人を重んじること。 ★「蒲輪」は、蒲(がま)の葉で車輪を包み、車の動揺を和らげたもの<国語大辞典(小)>
暗礁に乗り上げる(あんしょうにのりあげる) 航海中、船が暗礁に乗り上げると動きがとれなくなる。転じて、思い掛けない困難や障害によって、事の進行が妨げられること。 類:●二進も三進も行かない
鞍上人なく鞍下馬なし(あんじょうひとなしあんかうまなし)
安心立命(あんしんりつめい・あんじんりゅうめい・あんじんりゅうみょう) 人力を尽くしてその身を天命に任せ、どんな場合にも落ち着いていること。信仰によって心を平安に保ち、下らないことに心を動かさないこと。 類:●天を楽しみ命を知る 出典:「伝燈録」 ★初め儒学の語であったが、のちに主として禅宗の語として使われ、その後、広く使われるようになった<大辞林(三)>
案ずるより生むが易し(あんずるよりうむがやすし) 心配して手を拱(こまね)いてばかりいないで、実際に事に当たってみれば、案外容易(たやす)いことだったりするものだということ。取り越し苦労をするなということ。 類:●An attempt is sometimes easier than expected. <「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典>
暗中飛躍(あんちゅうひやく) 密かに計画を立てて活動する。暗躍する。また、向こう見ずの行動にも言う。 類:●影の工作
暗中模索(あんちゅうもさく) 闇の中で、手探りに捜し求めること。転じて、手掛かりのないものを、色々探ってみること。 類:●暗索●川の中の手探り●砂漠の塩探し
安直(あんちょこ) 教科書にある問題に解答を付けた解説書。中学、高校生などの学生用語。 類:●虎の巻 ★「あんちょく」の変化<国語大辞典(小)>
案に落つ(あんにおつ)[=入(い)る] 推量通りになる。思う壺に嵌(は)まる。また、計略に引っ掛かる。 用例:源氏−藤袴「人のおしはかるあんにおつることもあらましかば」
案に違う(あんにたがう) 予想が外れる。考えていたことと違う。 類:●案に相違する●当てが外れる 反:■案の定(じょう)■案の如く■案に落つ
鞍に拠りて顧眄す(あんによりてこべんす) 馬の鞍に寄り掛かって前後を見回す。老人の威勢の盛んな態度を表わす表現。 出典:「後漢書・馬援伝」の故事
安寧秩序(あんねいちつじょ) 国家や社会などが平穏で、乱れていないこと。
案の定(あんのじょう) 思った通り。果たして。案のごとく。 用例:雑俳・川傍柳−二「あんのじゃう封をきったら女筆也」 ★「定」は、…の通り、様子などの意の名詞<国語大辞典(小)> 類:●案の如く●案に落つ 反:■暗に違う■案に相違する■当てが外れる 用例の出典:川傍柳(かわびやなぎ) 雑俳。全5編。柳樽余稿。安永9年(1780)−天明3年(1783)。牛込御納戸町・蓬莱連の組連句集<川柳博物館>
塩梅(あんばい・えんばい)・安排按排 1.程よく配置したり処置したりすること。程あいを加減する。 例:「安排してそちらにも人をやる」 用例:正法眼蔵−栢樹子「此の沙弥別処に安排せよ」 2.食物の味加減を調えること。また、よい味加減であること。 用例:俳・類船集−天「料理の按排は亭主の心にしたかへば」 3.ものごとの具合い、様子、格好。 例:「エンジンの塩梅が好い」 用例:浄・傾城反魂香−上「武士の刀のあんばい見よと」 4.身体の具合い。健康状態。 用例:浮・世間侍婢気質−一「頭痛が致しまして、あんばいがわるさに」 5.やり方。 用例:洒・古契三娼「深川という所は、客人のあそびにでへぶあんばいのある所さ」 ★程よく排列する意の「あんばい(安排・按排)」と、塩と梅の酢で食物の味加減を調える意の「えんばい(塩梅)」とが、中世末期から近世初頭にかけて混同された語とされるが、「あわい(間)」からとする説もある<国語大辞典(小)> 用例の出典@:類船集(るいせんしゅう) 俳諧連想辞典。高瀬梅盛。延宝4年(1676)。付合の題材をいろは順に掲出し、それぞれに付合語を列挙する。見出語、付合語が先行書や前著『便船集』に比べ極めて多く、見出し語に関する詩歌・故事・物語・伝説など様々な知識を注記している。貞門・談林の連句を解釈する上には不可欠。 用例の出典A:傾城反魂香(けいせいはんごんこう) 浄瑠璃。時代物。3段。近松門左衛門。宝永5年(1708)大坂竹本座初演。狩野元信が土佐光信の女婿になり、絵所の預かりとなった史実を中心に、吃(ども)の又平の伝説、反魂香の説話、名画の威徳、名古屋山三の話などを加えて脚色したもの。「吃又」。 用例の出典B:世間侍婢気質(せけんこしもとかたぎ?) 浮世草紙。・・・調査中。 用例の出典C:古契三娼(こけいのさんしょう) 江戸時代の洒落本。1冊。山東京伝。北尾政演(=京伝)画。天明7年(1787)刊。借家人同士で気心の知れた古傾城三人が、遊里の風俗や遊びの機微を物語る。 人物:山東京伝(さんとうきょうでん) 江戸後期の戯作者。1761〜1816。本名岩瀬醒、通称伝蔵。北尾重政に浮世絵を学び北尾政演(まさのぶ)として活躍。また、黄表紙、洒落本に筆をとり、その第一人者となるが、寛政改革時の筆禍後は、読本に主力をそそいだ。黄表紙「江戸生艶気樺焼(えどうまれうわきのかばやき)」、洒落本「通言総籬」、読本「桜姫全伝曙草紙」などはその代表作。
安本丹(あんぽんたん) 愚か者を指す言葉。多く、人を罵(ののし)って言う。 類:●阿呆●馬鹿●すっとこどっこい●頓痴気 用例:談・根無草−二「あの通の安本丹にては行末心もとなし」 ★関西の俗語「阿呆太郎」から成立した「あほ(ん)だら」からの転とするのが、有力。また、薬の名、「反魂丹」に準(なぞら)えた語とも言われる。 参考:→67話の最下段
按摩の稼ぎで掴み取り(あんまのかせぎでつかみどり) 地口(じぐち)の一つ。按摩は元手なしに稼ぐことから、掴(つか)んで取るように儲(もう)けること。ぼろ儲けしたときなどに言う。 類:●坊主丸儲け ★利が多い職種を並べて「百姓百層倍、薬九層倍、魚三層倍、坊主丸儲け、按摩掴み取り」などとも言われた。
余り(あんまり) 1.非常に。度を過ぎて。 用例:狂言記・柿売「あんまりあまふて物がいはれませぬ」 ★「余(あま)り」を強調した言葉。 2.多く、前に「余りと言えば」を伴って、あまりにも酷(ひど)い。あまりにも非道だ。 例:「僕だけ置いてきぼりなんてあんまりだ」
暗夜に灯を失う(あんやにともしびをうしなう)[=消ゆ] これからどうしたら良いか途方に暮れる。
暗夜の礫(あんやのつぶて) 1.不意に訪れる襲撃。防ぎようがなく、恐ろしいことの喩え。2.当たるか当たらないか覚束ないこと。目当ての付かないことの喩え。また、当たらないこと。
暗夜の燈(あんやのともしび) これからどうしたらよいか途方に暮れる。 類:●闇夜の燈●一筋の光明
安を偸む(あんをぬすむ) のんびりと過ごす。一時の安逸を貪(むさぼ)る。
案を回らす(あんをめぐらす) あれこれ考える。工夫を凝らす。 用例:風姿花伝−三「心中にあんをめぐらすべし」