−あな(ana)−
・穴埋めをする(あなうめをする) 1.地面にできた穴を埋める。2.不足や欠損、また、落ち度などを補(おぎな)う。 類:●穴を埋める●埋め合わせをする 例:「デートをすっぽかした穴埋めは必ずするから」
・穴が開く(あながあく)[=空く] 1.損失や不足ができる。 用例:黄・文武二道万石通−下「路銀にはどうしたあなのあく事と」 2.手順通り事が運ばないで、空虚な時間、間の抜けた場面ができる。3.定員の一部が欠けたり、担当者が居なくなったりする。 用例の出典:文武二道万石通(ぶんぶにひゃくまんごくとおし) 江戸後期の黄表紙。3冊。朋誠堂喜三二作、喜多川行麿画。天明8年(1788)刊。頼朝の命により、畠山重忠が諸大名を文武二道に分けるという趣向の展開の中で、寛政の改革の文武奨励の実相をうがち、洒落やこじつけによる滑稽を狙った作品。
・穴があったら入りたい(あながあったらはいりたい)・あれば〜 恥じ入って身を隠したいほどに思う。 類:●穴をして入(い)るべからしむ●汗顔の至り●面目ない 出典:「新書−審微」「季孫聞之、慙曰、使穴可入、吾豈忍見[ウ冠+必]子哉」 出典:新書(しんしょ) 政治論。賈誼(かぎ)。前漢。紀元前170年頃。10巻。道術篇は百家総合の文書で、法家、道家、墨家、儒家を含んでいる。法治の効能をハカリや鏡の喩えで現わす。また“清静を尊ぶ”も含み、黄老道家の書でもある。
・穴が埋まる(あながうまる) 1.損失、不足、欠員などが補われる。 用例:談・古朽木−一「むだ遣ひの穴が埋らぬから」 2.手順通り事が運ばないでできた、空虚な時間、間の抜けた場面が補(おぎな)われる。
・侮る葛に倒さる(あなずるかずらにたおさる)[=金木(かなき)で目を突く] 相手を侮(あなど)り、馬鹿にして事に及び、思わぬ不覚をとること。
・穴なき笛は耳より外に音を聞くべし (あななきふえはみみよりそとにねをきくべし) 説明されたり、見せられたりしなくても、ものごとの本質を見抜きなさいということ。 類:●無声の声を悟れ
・穴の開くほど(あなのあくほど) じっと見詰める。特に、相手の顔を擬視するときの形容に使う。
・穴の狢を値段する(あなのむじなをねだんする) 狢の巣穴の前で、まだ捕らえてもいないのに、毛皮を売る算段をすること。当てにならないことを当てにして、あれこれと目論(もくろ)むことの喩え。 類:●沖な物当て●飛ぶ鳥の献立●捕らぬ狸の皮算用
・穴場(あなば) 1.芝居用語。舞台で、予想していた役者が出られなくなって生じた空白。2.俗語。競馬や競輪で、馬券や車券の売り場。3.観光地や娯楽場などで、あまり人に知られていなかったり、人が行かなかったりするが、状況の好い場所。安くて美味しいものを出す飲食店などにも言う。 例:「すすきのの穴場」
・穴へも入りたい(あなへもはいりたい) 穴に隠れてしまいたいほど恥ずかしい。→穴があったら入りたい 類:●汗顔の至り●面目ない
・穴を開ける(あなをあける) 1.欠損、損失を生じさせる。特に、金銭を使い込むときに使うことが多い。 用例:人情・春色江戸紫−二「唄女(げいしゃ)に首丈、大造(たいそう)穴を明けたけれども」 2.事が手順通りに運ばないで、空虚な時間や間の抜けた場面を作ってしまう。3.興行などで、欠員を生じさせる。出演者が自分の都合で休む。 例:「公演に穴を開ける」 用例の出典:春色江戸紫(しゅんしょくえどむらさき) 人情本。山々亭有人(さんさんていありんど)の筆名を持つ条野伝平(1832〜1902)の著。・・・詳細調査中。
・穴を言う(あなをいう)[=穿(うが)つ・探(さぐ)る] 人の欠陥、矛盾、癖などを指摘する。また、人が見過ごしているものごとの本質的なことを、裏面や側面から捉えて指摘する。 用例:談・風流志道軒伝−五「浮世の穴をいひ尽して」 用例の出典:風流志道軒伝(ふうりゅうしどうけんでん) 江戸中期の滑稽本。5巻5冊。風来山人(平賀源内)。宝暦13年(1763)刊。当時著名な辻講釈師深井志道軒を主人公に借り、その異国遍歴を通して、当時の世相を風刺した談義本風の作品。
・穴を埋める(あなをうめる) 1.損失や欠損、また、落ち度などを補(おぎな)う。 類:●穴埋めをする●埋め合わせをする 2.ものごとがうまく運ばないでできた空虚な時間や間の抜けた場面を巧(うま)く補う。 3.欠員を補う。 例:「あいつの穴を埋めるためには三人が必要」
・坑を掘って虎を待つの計(あなをほってとらをまつのけい) 中国三国時代、曹操が劉備に命令したとされる戦略。坑は落とし穴のこと。囮(おとり)の城を残し、本体が別方向の敵を攻撃するように装(よそお)う策略。囮を攻撃中の敵を、迂回(うかい)した本体が側面から襲う。 故事:「三国志演義−第十七回」「操密謂玄徳曰、吾令汝屯兵小沛、是掘坑待虎之計也」 この場合、「坑」は劉備のことで、「虎」が呂布のこと。曹操は袁術を攻めたが兵糧不足になり、方向を変えて宛城の張繍(ちょうしゅう)征伐に向かう。その時に、劉備に命じて小沛に布陣させ、徐州の呂布軍を良く見張らせた。