−あし(を)(asiwo)−
足を挙ぐれば法と為る(あしをあぐればほうとなる) 孟子や荀子が一度(ひとたび)動作を起こせば、その行動がそのまま人の法則となるほどであった。 類:●辞を吐けば経と為る 出典:韓愈「進学解」「吐辞為経、挙足為法」 韓愈(かんゆ)が孟子と荀子を讃(たた)えた言葉。
足を翹げて待つ(あしをあげてまつ) 機会がやって来るのを、足を爪立てるようにして、今や遅しと待つ。 出典:「史記−商君伝」「亡可翹足而待」
足を上げる(あしをあげる) 職を失わせる。失業させる。首にする。足上がりにする。
足を洗う(あしをあらう) 悪事や、卑しい職業の世界から抜け出す。一般に、好ましくない行為を止(や)める。職業や仕事を辞(や)める。特に、娼妓や芸人などが、勤めを辞めて堅気(かたぎ)になることを指した。 類:●足を抜く●手を切る●手を引く 反:■足を入れる■手を染める ★ 仏教語から 昔インドの僧は、終日、裸足で街中を托鉢(たくはつ)して歩かねばならなかった。寺に帰るときには、足は泥や汚物に汚れており、それを洗い清め、心身共に清浄になることが一日の終わりであった。巷(ちまた)を「迷いの世界」とし、寺の中を「救いの世界」とみたてた。この、宗教的行為が、どういうわけか、悪事から抜け出すという意味に転化したとされる。
足を濯う(あしをあらう) 1.川の水が澄んでいれば冠の紐を洗い、濁っていれば足を洗うものである。ものごとは己の心掛けの善し悪しによって、善くもなり悪くもなるということ。 類:●濯纓濯足(たくえいたくそく) 出典:「孟子−離婁」の「孺子歌(滄浪歌)」「滄浪之水C兮、可以濯我纓。滄浪之水濁兮、可以濯我足」 2.治世でも乱世でも、そのときの状況によって己の進退を判断しなければならないということ。また、世俗から抜け出すこと。 出典:楚辞「漁父(ぎょほ)」 3.長旅から帰った者を招くこと。
足を入れる(あしをいれる) 1.入り込む。それまで関係のなかった人がそのものごとに関係するようになる。 反:■足を抜く■足を洗う 例:「古典芸能の世界に足を入れる」 2.日本舞踊で、一方の足を他の足の前に交差するように出す。
足を奪う(あしをうばう) 交通手段を断つ。主に、受け身の「足を奪われる」の形で使う。 例:「電車の人身事故で10万人の足が奪われた」
足を重ねて立ち、目を側だてて視る(あしをかさねてたち、めをそばだててみる)「=仄(そば)だてて〜」 非常に恐れる様子。 出典:「史記−汲黯伝」「必湯也、令天下重足而立、側目而視矣」
足を食われる(あしをくわれる) 草鞋(わらじ)や下駄(げた)の鼻緒で足の皮が擦れて、傷ができる。
足を削って履に適せしむ(あしをけずってくつにてきせしむ) 靴が小さいときに、足の方を削って靴に合わせる本末が転倒していることの喩え。 類:●頭を殺(そ)ぎて冠に便(べん)ならしむ●本末転倒 出典:「淮南子−説林訓」「譬猶削足而適履、殺頭而便冠」
味を占める(あじをしめる) 一度味わったその良い味が忘れられないで、次にもそれを期待する。やったことが巧くいって、再び同じことをしようと思う。 類:●柳の下の泥鰌(どじょう) 例:「一度味を占めたらやめられない」
足を掬う(あしをすくう) 相手の隙(すき)に付け入って、相手を打ち負かす。思い掛けない手段で相手を失敗させる、負かす。 ★「足元を掬う」として使うのは、誤用。
足を出す(あしをだす) 1.相場で、損失し、完済できなくなること。2.予算、または収入を越える金額を使う。赤字になる。3.予定外の結果になる。4.隠し事をして襤褸(ぼろ)を出す。5.逆児(さかご)を出産する。
足を溜める(あしをためる) 足を地面に付けること、転じて、踏みとどまること。 類:●足をとどめる
足を翹てて待つ(あしをつまだててまつ)[=立てて待つ] 足を爪立てて、今か今かと待つ。転じて、機会が間もなくやってくることを表わす。 類:●頸を延べ踵を企つ 出典:「史記−商君伝」「亡可翹足而待」
足を取られる(あしをとられる) 1.金銭が不足して動けなくなる。2.酒量が過ぎて歩けなくなる。3.交通機関を利用できず、立ち往生する。4.障害物などに邪魔されて、歩行が乱れる。 例:「泥に足を取られる」
足を抜く(あしをぬく) 1.引き続いた訪問や面会などの間に、抜け出る。2.組織などから抜け出る。また、これまでの関係を断つ。 類:●足抜けをする
足を延ばす(あしをのばす)・伸ばす[=延べる] 1.正座に対して、足を放り出した座り方をする。寛(くつろ)いだ姿勢になる。 類:●膝を崩す 2.ある場所へ着いた後、更に遠くへ行く。
足を引っ張る(あしをひっぱる) 1.他人の前進や成功を妨げる。2.集団でものごとをするとき、全体に反するような行動を取る。
足を棒にする(あしをぼうにする) 足が酷く疲れるほど、歩きまわること。 類:●足を擂(す)り粉木(こぎ)にする●奔走(ほんそう)する
足を向ける(あしをむける) 1.そちらへ向かう。 例:「駅へ足を向けた」 2.恩がある人に失礼なことをする。主に「足を向けられない」の形で、感謝の気持ちや恐れ多さを表わす。 例:「先生には足を向けて寝られない」