−はか1(haka1)−
・馬鹿(ばか)[=莫迦・破家] 1.知能が足りない者。愚か者。 例:「馬鹿は死ななきゃ治らない」 ★「馬鹿」は当て字。梵moha=慕何(痴)、または梵mahallaka=摩訶羅(無智)の転で、僧侶が隠語として用いたことによる。また、「破家」の転義とも<国語大辞典(小)> ★鎌倉時代末期頃から「ばか」の用例があり、室町中期の「文明本説用集」では、「母娘」「馬娘」「破家」に「狼藉之義也」と説明している。 ★雅語形容詞である「はかなし」の語幹が変化したという説もある(金田一春彦ら)。 ★故事の「鹿を指して馬と為す」との関連については、「後付け」であり、語源とは直接関係ない。 蛇足:中国語の「馬鹿(マールー)」は「赤鹿(あかしか)」のこと。 2.身近の人について親しみを込めて言う。女が、親しい男に甘えて言ったりもする。 例:「あの馬鹿が。早とちりしやがって」「『今日は一段と綺麗だね』『馬鹿』」 3.「馬鹿なこと」の略。 例:「馬鹿を言うな」 4.程度が甚(はなは)だしいこと。 例:「馬鹿にあっさり引き受けて呉れたな」 ★「馬鹿でかい」「馬鹿力」など、接頭語としても使う。 5.用を成さない。 例:「ドアの錠が馬鹿になった」
・歯が浮く(はがうく) 1.歯の根が弛(ゆる)む。また、酸っぱいものを食べたり、不快な音を聞いたりして、歯の根元が弛むように感じる。2.軽弾みで気障(きざ)な言動に接して、不快な気持ちになる。 例:「歯が浮くお世辞」
・量が行く(はかがいく) 仕事が順調に進む。効果が上がる。捗(はかど)る。
・羽が利く(はがきく)[=を利かす] 羽振りが良い。勢力がある。 類:●羽振りが利く 用例:浄・狩剣本地−一「恨みいうてもはがきかぬ」 ★一説に「歯が利く」とし、歯が立つの意とする<国語大辞典(小)>
・馬革に屍を裹む(ばかくにしかばねをつつむ) 1.中国では昔、戦死した者の死体を馬の皮に包んで送り返したことから、戦場で討ち死にすること。2.これから従軍しようとする者の覚悟。 出典:「後漢書−馬援伝」「男児要当死於辺野、以馬革裹屍、還葬耳」 3.転じて、取り引きなどで、不首尾であったら罷免(ひめん)されても本望であるという覚悟。
・馬鹿正直(ばかしょうじき) どんな場所にも正直一辺倒で、融通(ゆうずう)が利かない。臨機応変の才がないこと。あまり正直過ぎて気が利かないこと。また、そのような様子や、その人。 類:●愚直
・場数を踏む(ばかずをふむ) 実地に経験する度数を重ねる。多くの経験を積んで慣れる。 類:●場所を踏む 例:「実戦の場数を踏む」
・歯が立たない(はがたたない) 1.固くて噛むことができない。 例:「この木は固過ぎて鑿の歯が立たない」 2.自分の力が及ばなくて、対抗することや理解することができない。
・歯が立つ(はがたつ) 自分の力が及ぶ。相手に対抗して張り合うことができる。多く、打消しの言葉を伴って用いる。 類:●手に合う 例:「難問で歯が立たない」
・馬鹿と鋏は使いよう(ばかとはさみはつかいよう) 鋏は使い方によって切れたり切れなかったりするし、愚かな者でも、仕事の与え方さえ良ければ役に立つ。 類:●阿呆と剃刀は使いようで切れる
・儚くなる(はかなくなる) 死ぬ。亡くなる。
・儚し事儚事(はかなしごとはかなごと) 取るに足りないようなこと。つまらないこと。また、取り止めもない話題。ちょっとした話。 用例:源氏−蛍「はかなしごとと知りながら、いたづらに心動き」
・ばかに 程度が甚(はなは)だしいこと。無闇に。酷(ひど)く。非常に。 例:「今年の梅雨は馬鹿に暑い」
・馬鹿にする(ばかにする) 1.相手を自分より劣る者と見なす。軽蔑する。2.軽視して油断する。 類:●舐める●見縊(くび)る
・馬鹿に付ける薬はない(ばかにつけるくすりはない) 愚か者を治す方法はない。愚かな者は救いようがない。 類:●馬鹿は死ななきゃ治らない
・馬鹿にならない(ばかにならない) 軽視できない。好い加減に扱うことができない。 例:「電話代も馬鹿にならない」
・馬鹿になる(ばかになる) 1.自ら愚か者を装ってその場を切り抜ける。自分の意志を抑える。2.無邪気になる。理性的な態度でいるのを止める。3.本来持っているべき機能が失われる。感覚がなくなる。 例:「ねじ山が馬鹿になる」「鼻が馬鹿になる」
・墓に布団は着せられず(はかにふとんはきせられず) →石に布団は着せられず
・馬鹿の大足(ばかのおおあし) 大きい足の者は、愚鈍な者が多いということ。 ★「独活の大木」や「大男総身に知恵が回り兼ね」などとの関連からか。 ★これに対して「間抜けの小足、中途半端のろくでなし」などとも言う。
・馬鹿の大食い(ばかのおおぐい)・大食らい 1.住み込みの丁稚(でっち)や居候(いそうろう)などが、一人前に仕事も出来ないのに、食べることに関しては一人前以上であるということを言った言葉。2.一般に、大食いの人を諌(いさ)める言葉。 類:●馬鹿の三杯汁
・馬鹿の三寸間抜けの五寸(ばかのさんずんまぬけのごすん)[=間抜けの開けっ放し] 戸や障子を閉めるとき、馬鹿は三寸、間抜けは五寸ほど残すという意味で、戸をきちんと閉めない者は品性の劣った者であるということ。箪笥(たんす)の抽斗(ひきだし)などについても言う。 類:●鈍間の一寸馬鹿の三寸
・馬鹿の一つ覚え(ばかのひとつおぼえ) 愚か者は、聞き覚えた一つのことを、いつも得意げに持ち出す。何度も同じことを言う者を嘲(あざけ)る言葉。 類:●He that knows little often repeats it. (ものを知らない人ほど知っていることを繰り返す)<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典>