−ほれ(hore)−
・惚れた腫れた(ほれたはれた) 色恋に気を取られた状態にあることを、冷やかしや罵(ののし)りを込めて言う言葉。 例:「惚れた腫れたなんて言っているうちが華」 ★「腫れた」は、語呂を合わせて調子を整え、また、強調する言葉。
・惚れた腫れたは当座のうち(ほれたはれたはとうざのうち) 惚れたの惚れられたのと喜んで言っていられるのは、恋愛中と結婚当初の束(つか)の間だけである。やがて熱が冷(さ)めれば、そんなことを言っていられないほど生活に追われるものだということ。熱愛真っ只中にある男女を戒(いまし)めて、また、囃(はや)して言う。
・惚れた病に薬なし(ほれたやまいにくすりなし) 恋煩(わずら)いをするくらいに誰かに夢中になってしまったら、それを治す薬はない。自然に治るのを待つ以外手立てはないということ。 類:●恋の病に薬なし●恋は盲目 参考:民謡・草津節「お医者さんでも草津の湯でも、惚れた病は治りゃせぬよチョイナチョイナ」
・惚れた欲目(ほれたよくめ) 惚れた相手を、実際以上に良く見たいと思う心情。惚れてしまうと、欠点までが好ましく見えてしまうものである。 類:●痘痕も笑窪 例:「惚れた欲目で言ってるんじゃない」
・惚れて通えば千里も一里(ほれてかよえばせんりもいちり) 惚れた相手の所へ通うときは、遠い道も短く感じられて苦にならない。 類:●千里も遠からず 出典:江戸期の吉原の俗謡からか。「惚れて通えば千里も一里、長い田圃も一跨ぎ」「〜、逢わで帰ればまた千里(作者不詳)」など。
・惚れ惚れ(ほれぼれ) 1.思考力を失うなど、放心している状態。ぼんやりして普通の状態でない。 類:●ぼんやり●呆然 用例:夜の寝覚−四「心地もほれぼれとして」 2.何かに心を奪われて、うっとりする。 用例:伽・中書王物語「いつしかはや、御心も、ほれぼれとなりて」 3.深く心を惹かれるような様子。恋い慕いたくなるような様子。 用例:伽・秋夜長物語「ほれぼれと見かへりたる目つき顔ばせ」 例:「女でも惚れ惚れするような美人」 用例の出典@:中書王物語(ちゅうしょおうものがたり) 御伽草子。室町時代。一条兼良? 「太平記」巻18の「一宮御息所の事」に忠実に基づく物語。後醍醐天皇の第一親王尊良親王と御息所の恋を中心に、秦武文の武勇を織り交ぜて描く。 用例の出典A:秋夜長物語(あきのよのながものがたり) 御伽草子。南北朝時代(14世紀末)。1巻。作者未詳。比叡山の僧桂海と、三井寺の稚児梅若との悲恋と、それを巡って起きた三井寺と比叡山の争いを描く。仏教説話的な面、突拍子もない展開などもある。物語中数カ所に「太平記」と類似点があり、実際深い関連性もある。