−いか(ika)−
如何わしい(いかがわしい) 1.疑わしい。信用できない。 用例:伎・濃紅葉小倉色紙−発端「斯やうな儀を御諫言申し上げられぬは如何はしう存じまする」 2.よろしくない。怪(あや)しげである様子。 @下品で卑猥(ひわい)な様子。 例:「いかがわしい言葉遣い」 A正体がはっきりしないで、いんちきな様子。 例:「いかがわしいよそ者」 ★「いかがしい」の変化<国語大辞典(小)> 用例の出典:濃紅葉小倉色紙(こいもみじおぐらしきし) 歌舞伎。奈河晴助。文化10年(1813)大阪中座初演。九州豊前小倉藩の小笠原家で実際に起こったお家騒動に同家に伝わる狐の伝説をからめたもの。
毬栗頭(いがぐりあたま) 髪を毬栗のように短く刈った頭。また、毛の伸びかかった頭。 類:●いがぐり●いがあたま●坊主頭
毬栗も中から破れる(いがぐりもなかからやぶれる) 時期が来て年頃を迎えれば、どんな者でも自然と色気付くものである。 類:●豌豆(えんどう)は日陰でも弾ける●陰裏の桃の木も時がくれば花咲く●鬼も十八番茶も出花
鋳掛け屋の天秤棒(いかけやのてんびんぼう) 鋳掛屋の天秤棒は普通の天秤棒より長く、棒の端が荷より先に長く出るところから、出しゃ張り者のこと。また、出過ぎた行ない。
生かさず殺さず(いかさずころさず) 積極的に生かそうともしないし殺しもしない、という意味で、中途半端な状態において苦しめる。やっと生きてゆける程度の苛酷な状態に置いておくこと。 類:●生(なま)殺し●生けず殺さず
如何様(いかさま) 1.状態、方法などについて、疑問である。どんなものか。どんな風(ふう)。 用例:万葉−167「何方(いかさま)に思ほしめせか」 用例:宇津保−菊の宴「いでや、いかさまになすべき」 2.相手の意見に同意して、感動的に応答する言葉。如何にも。その通り。正に。なるほど。ご尤も。 例:「いかさま、得心がいった」 用例:虎寛本狂言・素袍落「『定て汝が行くで有う』『いか様(さま)』」 3.いかにも本当らしく見せ掛けたもの。似せたもの。 類:●いんちき●ぺてん 用例:雑俳・川柳評万句合−安永三「いかさまの元祖は小野の小町なり」 例:「露店には如何様が多い」
如何様師(いかさまし) 贋物を作ったり売ったりする者。また、詐欺やいんちき賭博を常習とする者。 類:●詐欺師●いかもの師
嫁かず後家(いかずごけ)・不嫁後家 1.婚約者と死に別れ、または生き別れて、未亡人同様に暮らしている女。 ★一緒に死ねなかった後家の意味からか。 2.婚期を失い独身で過ごす女。 ★近世上方語では、前者をいい、後者を「いかず」として区別した<国語大辞典(小)>
桴に乗りて海に浮かばん(いかだにのりてうみにうかばん) 今の世はどんなに努力してもものの道理が通らないから、いっそのこと、世間から抜け出して、筏(いかだ)に乗って海に浮かんでいたい。現実に失望して、どこかへ逃避したいと願うという意味でも使う。 出典:「論語−公冶長」「子曰、道不行、乗桴浮于海」 乱世を嘆いた孔子の言葉。
如何にせん(いかにせん)[=如何せん] 1.為すべき手段を躊躇(ためら)い、困っている様子。どうしよう。どんなにしたら良かろうか。 用例:万葉−3712「ぬば玉の妹が干すべくあらなくにわが衣手を濡れて伊可爾勢牟(イカニセム)」 2.嘆き、諦(あきら)める気持ち。どうしようもない。仕方がない。 用例:万葉−3418「上つ毛野佐野田の苗の占なへに事は定めつ今は伊可爾世母(イカニセモ)」
烏賊の金玉(いかのきんたま)・睾丸 地口(じぐち)の類(たぐい)。「そうは旨くは烏賊の金玉」などと言い、そう巧い具合いに行くものではないぞの意味で言う。 ★「烏賊の金玉」は、足の間にある骨格質の咀嚼(そしゃく)器の俗称で、江戸時代、珍味として持て囃(はや)された。俗に「とんび」などとも呼ばれる。 参考:江戸後期の川柳「金玉も入れなと女房烏賊を買い」
烏賊の甲より年の劫(いかのこうよりとしのこう) 「亀の甲」の誤用、または洒落。年功は積めば積むだけ価値がある。年長者の経験は重んじなければならない。 類:●亀の甲より年の功
歪みの物取る大盗人(いがみのものとるおおぬすっと) 悪漢の物を盗み取る大盗人という意味で、悪人にも、上には上があるということ。 類:●盗人の上前を取る 出典:「新版歌祭文」
偽物食い(いかものぐい) 1.普通の人の食べないようなものを好んで食べる、または、わざと食べること。また、そういう人。2.普通の人が相手にしないような女を愛すること。また、そういう人。3.普通の人と違った趣味、または嗜好を持つこと。類:●悪食(あくじき)●下手物(げてもの)食い
怒り心頭に発する(いかりしんとうにはっする) 激しい怒りの気持ちを心の内に抑えておけなくなる。転じて、激しく怒る。 ★「心頭」は、「心の内」の意味。
怒りは敵と思え(いかりはてきとおもえ) 腹を立てれば、判断を誤ったり人の反感を買ったりする。怒りは我が身を滅ぼす敵だと思って、慎(つつし)まなくてはいけない。 類:●堪忍は無事長久の基 ★徳川家康の遺訓の一つ。
怒りを移す(いかりをうつす) 立腹して、他の関係のないものにまで当たり散らす。 類:●八つ当たりする●当り散らす
錨を下ろす(いかりをおろす) 1.船舶を港などに繋ぎ止めるために錨を水中に降ろす。 類:●係船する●停泊する●ふながかりする 2.比喩的に、そこにゆっくりと腰を落ち着ける。 類:●尻を据える●御輿(みこし)を据える●根を生やす●居続ける 用例:浮・傾城歌三味線−一「此揚屋に碇をおろし」 用例の出典:傾城歌三味線(けいせいうたじゃみせん) 浮世草子。5冊。八文字屋自笑・江島其磧。享保17年(1732)刊。遊女小女郎と新兵衛は周囲の迫害を受け、島原、吉原、新町と流転する。やがて新兵衛の勘当も許され、小女郎は身受けされるが、新兵衛の妻へ義理を立てて尼となる。当時流行りの浄瑠璃、歌舞伎の趣向をきかせた長編小説。
怒りを買う(いかりをかう) 怒られる。相手を怒らせてしまった要因がこちら側にある場合。
忿りを懲らし欲を窒ぐ(いかりをこらしよくをふさぐ) 心に生じた怒りを止(とど)め、貪欲な心を閉ざしなさいということ。過(あやま)ちを起こす根本原因は、怒りと欲である。つまり、怒りと欲は損(そん)の元である。 出典:「易経−損象」「象曰、山下有沢、損、君子以懲忿窒欲」
いかれぽんち 軽薄で頭の悪い男のこと。腑抜けな男や不良っぽい男に言うこともある。 ★「ぽんち」は関西方言「ぼんち(=坊ッチャン)」の転<大辞林(三)> ★19世紀の大衆週刊誌「パンチ」または雑誌「ザ‐ジャパン‐パンチ」に由来する、「ポンチ絵」(=明治時代の漫画の呼称)からとも言う。
いかれる 1.先を越される。先手を打たれる。してやられる。 例:「この勝負はあんたにいかれた」 2.物が古くなって役に立たなくなる。機械などが壊れて駄目(だめ)になる。また、生き物が死ぬ。 例:「エンジンがいかれた」 3.生意気な様子をする。不良じみる。 例:「いかれた身なり」 4.頭の働きがまともでなくなる。腑抜(ふぬ)けになる。 例:「お頭(つむ)がいかれている」 5.心を奪われる。夢中になる。 例:「彼女にすっかりいかれている」 類:●参る ★もと「行かれる」の意か。俗語<国語大辞典(小)>
怒れる拳笑面に当たらず(いかれるこぶししょうめんにあたらず)・笑顔に〜 怒って拳を振り上げてきた人も、笑顔で対応する人には気勢を殺(そ)がれてしまうものである。怒りや強気に対しては、むしろ優しい態度で接する方が効果的であったりするということ。 類:●尾を振る犬は叩かれず●杖の下に回る犬は打てぬ●窮鳥懐に入れば猟師も殺さず 出典:「五燈会元−一五、智門祚禅師法嗣・雲台省因禅師」「僧問、如何是和尚家風、師曰、嗔拳不打笑面」
いかん通(いかんつう) 自称「通人」のこと。 類:●半可通 ★安永(1772−81)頃の流行語。「いかん」は「行かん」か<国語大辞典(小)>
遺憾ながら(いかんながら) 会話の冒頭に言って、残り惜しさや同情の気持ちを示す言葉。残念ではあるが。また、気の毒ではあるが。 例:「遺憾ながら欠席」
遺憾なく(いかんなく) 1.心残りになることなく。残念とは思わないで。 例:「遺憾なく割愛する」 2.十分に。全部。洩(も)れるところなく。 例:「実力を遺憾なく発揮する」