−いの(ino)−
・いの一番(いのいちばん) 「いろは」で順番を付けたもののうちの第一番目という意味から、真っ先。一番最初。 例:「いの一番に籤を引く」
・豕を抱いて臭きを知らず(いのこをだいてくさきをしらず) 自分の欠点や醜(みにく)さは、自分では気付き難いものである。人のことは良く分かるが、自分のことは分からないものだということ。
・豕を憎みて臭さを愛す(いのこをにくみてくささをあいす) ものごとの大元を憎んでいるのに、そこから派生することには寛大であることの喩え。
・猪の手負い(いのししのておい) 非常に気が立っていて危険であることの喩え。 ★雄略天皇が葛城山で狩猟をした時の歌「やすみしし 我が大君の遊ばしし 猪(しし)の病猪(やみしし)の 唸(うた)き畏(かしこ)み 我が逃げ登りし 在丘(ありを)の榛(はり)の木の枝」と関わりがあるか。
・猪武者(いのししむしゃ) 前後の事情も考えないで我武者羅に突進するだけの武士のこと。向こう見ずな武士。また、転じて、そのような無鉄砲な人。
・猪も七代目には豕になる(いのししもななだいめにはいのこになる) 変わりようがないように思えても、長い年月のうちには変化するものだということ。 ★「豕」は、豚のこと。
・命あっての物種(いのちあってのものだね)
・命から二番目(いのちからにばんめ)[=より二番目] 命の次に大事なものという意味。非常に大切にしているもの。
・命知らず(いのちしらず) 1.命の危険を顧みないで、無鉄砲な振る舞いをすること。また、その人。 用例:浄・津国女夫池−一「命しらずの狼藉者」 2.物が丈夫で長持ちすること。 用例:浮・日本永代蔵−一「此の手紬の碁盤島は命しらず」 用例の出典:津国女夫池(つのくにめおといけ) 浄瑠璃。近松門左衛門。享保6年(1721)。将軍・足利義輝がからむお家騒動に、大阪天満にあった夫婦池伝説(仲のよい夫婦が入水)を結びつけたもの。人間の愛憎と罪業から、複雑に入り込んだ親子と夫婦が、救いようのない因果に苦しめられる話<近松門左衛門でござーい!>
・命取り(いのちとり) 1.命、地位、財産などを失う原因となるもの。 例:「思い上がりが命取りになる」 2.美女。
・命長ければ恥多し(いのちながければはじおおし) 長生きすればそれだけ、何かにつけて恥を掻くことが多いものだ。 出典:「荘子−天地」「多男子則多懼、富則多事、寿則多辱、是三者非所以養徳也」
・命の洗濯(いのちのせんたく)[=土用干(どようぼ)し] 日常の苦労から解放されて、命が延びるほど思う存分に楽しむ。寿命を延ばすための休養。
・命の綱(いのちのつな) 命を繋(つな)いでいく頼(たよ)り。生きてゆくのに最も頼みとなるもの。また、家や企業などにとって、最後の支(ささ)えとなるものなどの喩え。 類:●命綱●生命線●ライフライン 類: 例:「家賃収入が命の綱だ」
・命は義に縁りて軽し(いのちはぎによりてかるし) 掛け替えのない命も、正義のために拾てるのならば惜しいものではないということ。 出典:「後漢書−朱楽何列伝」「情為恩使、命縁義軽」
・命は鴻毛より軽し(いのちはこうもうよりかるし) 命を捨てるのが少しも惜しくないということ。 類:●死は鴻毛より軽し●命より名を惜しむ●命は義によりて軽し 反:■命あっての物種■命に過ぎたる宝なし■人の命は地球より重い■死んで花実が咲くものか■死は泰山より重し 出典:「文選」に見える司馬遷の「報任少卿書」「人固有一死。或重於泰山、或軽於鴻毛。用之所趨異也」
・命は風前の灯の如し(いのちはふうぜんともしびのごとし)[=風中(ふうちゅう)の灯の〜] →風前の灯
・命は法の宝(いのちはほうのたから) 有り難い仏法を聞くことができるのも、命があればこそであるということ。 ★仏教唱歌などに歌われた言葉。
・命を鯨鯢の腮に懸く(いのちをけいげいのあぎとにかく・げいげいの〜) 「鯨鯢」は雄・雌の鯨のこと。海上に一命を掛ける。船上の危険な生活の喩え。
・命を削る(いのちをけずる) 1.寿命を縮める。 例:「煙草で命を削る」 2.寿命を縮めるほど苦労する。 例:「株価が暴落したときは命を削る思いだった」
・命を捨てる(いのちをすてる) 自分の命が危険になるのも顧(かえり)みないで努力する。 類:●一命を賭す 用例:竹取「命をすてて、かの玉の枝持ちて来るとて」 2.死ぬべきでないのに死ぬ。 用例:平家−九「汝はいのちをすつべからず」 例:「早まって命を捨てるな」
・命を縮める(いのちをちぢめる) 肉体や精神の過労で)寿命を短くする。また、ショックによって命が短くなったような感じを与える。
・命を棒に振る(いのちをぼうにふる) 無意味に命を棄てる。無益に死ぬ。 類:●無駄死にする●犬死にする
・命を養う者は病の先に薬を求め、世を治むる者は乱れぬ先に賢をならう(いのちをやしなうものはやまいのさきにくすりをもとめ、よをおさむるものはみだれぬさきにけんをならう) 体を養生する者は病気に罹(かか)る前に薬を探して手遅れにならないように注意し、国政に携(たずさわ)わる者は世が乱れないうちに平生から賢者の教えに従って心を配っていなくてはいけない。 出典:「潜夫論−思賢第八」「養寿之士先病服薬、養世之君先乱任賢、是以身常安、而国永永也」
・井の中の蛙大海を知らず(いのなかのかわずたいかいをしらず)
・胃の腑に納める(いのふにおさめる) 十分に理解する。
・胃の腑に落ちる(いのふにおちる)[=落ち着く] 十分に納得がいく。良く分かる。 類:●腑に落ちる●心腹に落つ●腹に落ちる 用例:浄・今宮心中「さらさら胃の腑に落ちませぬ」