−いぬ(inu)−
・犬一代に狸一匹(いぬいちだいにたぬきいっぴき) 狸を獲(と)るような大きな機会は一生の内に一度あるかないかのことである。好機は滅多にやってこないものだということ。
・犬々三年人一代(いぬいぬさんねんひといちだい)[=一生] 初めは犬畜生と軽蔑されても、我慢して過ごし、残りの一生を不自由なく送る者もいる。節約を薦めることの喩え。 ★逆の意の「人々三年犬一代」を添えても言う<国語大辞典(小)>
・犬打つ童まで(いぬうつわらべまで) 犬を追い掛け回す三歳の児童でも知っていることだ。誰でも知っていることだということ。
・犬が西向きゃ尾は東(いぬがにしむきゃおはひがし) 疑う余地もないほど、誰が考えても当たり前なこと、分かり切ったことである。それが自明の理であることの喩え。 類:●蛸に骨無し水母に目無し●雨の降る日は天気が悪い●雉(ぎし)の雌鳥(めんどり)ゃ女鳥(おんなどり)●鶏(にわとり)はどれも裸足(はだし)●唐辛子(とがらし)辛くて砂糖は甘い●親父(おやじ)男でおっかあ女●親父ゃワシより歳が上●兄は弟より年ゃ上だ●指を切れば血が出る
・犬が星をまもる(いぬがほしをまもる)[=見る] 高望みをする。物欲しそうにする。
・犬死に(いぬじに) 何の役にも立たない死に方。 類:●徒死(とし)●無駄死に 用例:狂・文山立「かうして死ぬるは犬死ぢやによつて」 ★接頭語の「犬」について @「燕石雑志−巻一」「似て非なるものを犬といふ。これ本邦の故実か。〔いぬたで〕、〔いぬほうづき〕、〔いぬわらび〕、〔いぬよもぎ〕、〔いぬなづな〕、〔いぬとくさ〕、〔いぬそらまめ〕、〔いぬやへなり〕等、毛挙(かぞへあぐる)に遑(いとま)あらず。宗鑑が犬筑波集亦このこゝろにて名づくといへり」 A「似て非なるもの」から転じて、卑しめ軽んじて「くだらないもの、無駄なもの」の意として用いた表現=「犬医者」、「犬侍」、「犬死」など。 参考の出典:燕石雑志(えんせきざっし) 江戸後期の随筆。滝沢解(馬琴)。文化6年(1809)成立、8年(1811)刊。5巻。和漢の故事から、市井の話まで様々な主題について述べたもの。
・狗猛ければ則ち酒酸くして售れず(いぬたけければすなわちさけすくしてうれず) 酒屋の飼い犬が剛猛であると、客が寄り付かないために酒が売れ残り、腐って酸っぱくなってしまう。そのように、王の傍(そば)に姦臣がいると賢良の者が寄り付かず、やがて国は衰えてしまうということ。 出典:「韓非子−外儲説・右上」「狗猛則酒何故而不售。曰、人畏焉」
・犬っ腹(いぬっぱら) 次々と子供を産む女性を、お産が軽く安産が多い犬に喩えて言ったもの。 ★侮蔑表現なので、使用には注意のこと。
・犬と猿(いぬとさる)
・犬に小判(いぬにこばん)[=懸鯛(かけだい)] 価値が分からないこと、また、意味が通じないこと。 類:●猫に小判●豚に真珠
・犬に肴の番(いぬにさかなのばん) 人選を誤まること。
・犬になるとも大所の犬になれ(いぬになるともおおどこのいぬになれ) どうせなるなら、大きな家の飼い犬になれということ。また、ものごとをするには、どんなつまらないことでも、相手や主人を選ばなくてはならないということ。 類:●犬になっても大家(たいか)の犬
・犬にも知らすな(いぬにもしらすな) 絶対に秘密にしろということ。
・犬に論語(いぬにろんご)[=念仏] どんな道理を説き聞かせても効果がなく、無駄である。 類:●馬の耳に念仏●豚に念仏猫に経
・犬猫にも馴染めば思う(いぬねこにもなじめばおもう) 犬や猫も、こちらから可愛がってやれば、良く懐(なつ)いて主人のことを思うものである。取るに足らない者でも、こちらが目を掛けてやれば、恩に着るものだという喩え。 類:●犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ●飼い養う犬も主を知る
・犬の一年は三日(いぬのいちねんはみっか) 仔犬は三日ほどで、ヒトの一歳児くらいの行動をするようになる。仔犬の成長は早いということ。 類:●猫は三月を一年(ひととせ)とす
・犬の川端歩き(いぬのかわばたあるき)[=犬の川端] 1.何かにありつこうとしてうろつくこと。幸運を得ようとして彷徨(さまよ)うこと。2.見物や買物などで外出して、途中で飲食しないですごすこと。 類:●犬川 用例:伎・富士額男女繁山−三幕「いつでも犬の川端だが、恩を知らねえ畜生に、如何に酒が呑みてえとッて、尻尾を振って行くものか」 用例の出典:富士額男女繁山(ふじびたいつくばのしげやま) 歌舞伎。河竹木阿弥。明治10年(1877)。通称「女書生」。頭の良い娘(シゲ)を持った父親は、この娘にどうにか学で生計を立てさせたいと思った。娘を男装させて東京へ、そして書生となった。
・犬の糞(いぬのくそ) 1.汚いもの、軽蔑すべきもの、多くあって、手に負えないものなど。2.一般的に、「伊勢屋稲荷に犬の糞」など、単に多くあるもののこと。ありふれたものの喩え。 例:「(苗字で)鈴木佐藤は犬の糞」 蛇足:姓について、中国では「張・王・李・趙・劉はどこにでもある」などと言われる。
・犬の糞で敵を討つ(いぬのくそでかたきをうつ)[=取る] 卑劣な手段で復讐する。
・犬の糞に手裏剣(いぬのくそにしゅりけん) 下らないことに貴重なものを使うことの喩え。
・犬の糞も焼味噌も一つ(いぬのくそもやきみそもひとつ) →糞も味噌も一緒
・犬の手も人の手にしたい(いぬのてもひとのてにしたい) 忙しい時は、誰でも好いから手伝いが欲しいものだ。 類:●猫の手も借りたい
・犬の遠吠え(いぬのとおぼえ)
・犬の蚤の噛みあて(いぬののみのかみあて)[=食いあて] 犬が小さな蚤を噛み当てるのは簡単ではない。滅多(めった)にないこと。非常に稀(まれ)なこと。 類:●まぐれ当たり●当てずっぽう
・犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ(いぬはみっかかえばさんねんおんをわすれぬ)[=養えば〜] 犬でさえ三日飼えば、飼主に懐(なつ)いて恩を忘れない。まして、人間は恩を忘れないのが当然である。 反:■猫は三年の恩を三日で忘れる
・犬骨折って鷹に取られる(いぬほねおってたかにとられる) 鷹狩りで犬が折角(せっかく)骨折って追い出した獲物を鷹に取られるというところから、苦労してようやく得たものを、他に奪われてしまうこと。
・犬も歩けば棒に当たる(いぬもあるけばぼうにあたる)
・犬も食わぬ(いぬもくわぬ) 非常に嫌がられること、人から全く相手にされないこと。
・犬も朋輩鷹も朋輩(いぬもほうばいたかもほうばい) 狩猟用の犬と鷹とは、その受ける待遇は違っていても、同じ主人を持つ仲間であるということから、役目や地位に違いがあっても、同じ主人を持てば同僚であることに変わりはないということ。
・犬を悦ばす(いぬをよろこばす) 飲食物を吐き戻す。反吐(へど)を吐く。 類:●犬悦(けんえつ)する●小間物屋を開く