−いろ(iro)−
・色男、金と力は無かりけり(いろおとこ、かねとちからはなかりけり) 女に好かれるような美男子には、兎角(とかく)財力と腕力がないものだということ。 ★川柳からか。
・色衰えて愛弛む(いろおとろえてあいゆるむ) 美貌(びぼう)によって寵愛(ちょうあい)を受けている女性は、その容色が衰えると、愛も薄れてしまうものである。 出典:「史記−呂不韋列伝」「以色事人者、色衰而愛弛」 秦の昭襄王の正室華陽夫人(かようふじん)には子がなかった。そこで異人(子楚=後の荘襄王・始皇帝の父)を養子に迎えるようにと、呂不韋(りょふい)が勧めて言った言葉。
・色気違い(いろきちがい) 1.情欲が異常に強いこと。 類:●色情狂 2.矢鱈に、好色っぽい態度や身なりをすること。また、その人。
・色気より食い気(いろけよりくいけ) 色欲より食欲の方が先であるという意味で、転じて、見栄より実利を取ることの喩え。 類:●花より団子
・色と欲の二筋道(いろとよくのふたすじみち) 美貌の女と資産家の女の両方を手に入れようと、二股掛けて、それぞれを誘惑すること。
・色の白いは七難隠す(いろのしろいはしちなんかくす)[=十難隠す] 色白の女性は、少しぐらい醜い点があっても、目立たない。 類:●髪の長いは七難隠す
・伊呂波(いろは) 1.「いろは歌」の最初の三字を取ったもの。「いろは歌」の仮名四七字の総称。または、これに「ん」あるいは「京」を加えた四八字。 2.「いろは歌」を手習いの初歩に使ったことから、ものごとの初歩。稽古事の初歩。また、基礎的なこと。入門的で、平易なこと。 類:●ABC 例:「剣道のいろは」 新内・恋娘昔八丈−城木屋「恋のいろはを袂から」 ★いろは歌「色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ(※) 常ならむ 有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず(ん)」 ※「そ」は清音で読まれることもある。 ★弘法大師(空海)の作であるとする俗説があるが、疑わしい。 用例の出典:恋娘昔八丈(こいむすめむかしはちじょう) 浄瑠璃。世話物。5段。松貫四・吉田角丸。安永4年(1775)。江戸外記座初演。江戸の材木商白子屋の娘お熊が婿の又四郎を殺そうとした事件を脚色し、萩原家の家老の子才三郎と腰元お駒の情話としたもの。通称「お駒才三」。
・色は思案の外(いろはしあんのほか)[=心の外・思いの外] 恋愛は常識では規定できないものだ。色事というものは兎角分別を越え易いものだ。 類:●恋は思案の外
・色眼鏡で見る(いろめがねでみる) ものごとを、ありのままではなく、先入観に頼って見ること。偏(かたよ)った観察をすること。 ★進駐軍が一様にサングラスを掛けて日本人を見たことに由来するか?(未詳)
・色めき立つ(いろめきたつ) 怒りなどで緊張した空気が漲(みなぎ)る。 例:「一同色めきたつ」 類:●気色(けしき)ばむ
・色目を使う(いろめをつかう) 1.異性の気を引くような目付きをする。流し目をする。 類:●秋波を送る 2.あるものごとに興味があるという態度を取る。 例:「政界に色目をつかう」
・色好い(いろよい) 1.姿形が美しい。容貌が美しい。2.こちらの望みに適(かな)っている。こちらとして好ましい。 例:「色好い返事」
・色を失う(いろをうしなう) 1.物の色がなくなる。色が見えなくなる。2.驚きや恐れで顔色が青くなる。意外な事態にどうして良いか分からなくなる。 類:●口が利けない●声も出ない●顔色(がんしょく)なし 3.蹴鞠(けまり)で、蹴上げた鞠が風に流される。
・色を替え品を替える(いろをかえしなをかえる) 様々に手段や方法を尽くす。 類:●手を替え品を替える
・色を変える(いろをかえる) 怒りや喜びなどで、顔色を変える。 類:●色を違(たが)える●色を動かす●色を変ず
・色を付ける(いろをつける) 1.紙や物に(ぬ)色を塗る。2.ものごとの扱(あつか)いで、相手に温情を示す。多少の祝儀を出す、値を引く、景品を付けるなど。 例:「手間賃に色を付けておいたからね」
・色を直す(いろをなおす) 1.元気を取り戻して顔色が元に戻る。元気を回復する。 用例:太平記−十五「色を直して方々より馳せ参りける間」 2.怒って興奮していた顔色を和(やわ)らげる。怒りが解ける。 用例:浄・心中天の網島−中「おさんも色を直し」
・色を作す(いろをなす) 顔色を変えて怒る。 類:●怒髪(どはつ)天を衝(つ)く●気色(けしき)ばむ
・色を見て灰汁をさす(いろをみてあくをさす) 染色で灰汁を加えるときには色の具合いを見て加減をするところから、時と場合に応じて適当な手段を取ること。無闇に事を行なわないという戒め。