−いた(ita)−
・痛い上の針(いたいうえのはり)[=針立(はりたて)] 痛い所に更に針を刺すという意味で、災難の上に災難が重なること。 類:●痛む上に塩を塗る●泣き面に蜂
・幼い気(いたいけ) 1.幼くて可愛らしい。幼児などが、弱々しくていじらしい。 用例:日葡辞書「Itaiqena(イタイケナ)コ」 2.素直で素朴な様子。 用例:中華若木詩抄−上「じて詩は、かやうに、あり目のたけを云て、いたいけながよいなり」 3.小さくて愛すべき。 用例:看聞御記−嘉吉三年二月二一日「いたいけなる小庭也」 4.言動に思い遣りがあり、優しい様子。 用例:洒・傾城帑「万事心ざしやさしくいたいけにて」 ★「痛き気」の変化で、心が痛むくらいかわいいの意<国語大辞典(小)> 用例の出典@:看聞御記(かんもんぎょき) 後崇光院(伏見宮貞成親王)の日記。41巻、他に御幸記、別記、目録各1巻。応永23年(1416)から文安5年(1448)にわたり、宮廷、室町幕府、諸大名の動向、世俗の出来事などを記す。看聞日記。 用例の出典A:傾城帑(けいせいけい) 洒落本。山東京伝。天明8年(1788)。1冊。「俳諧帑」を風刺しながら、遊女の評判を記したもの。
・痛痛しい(いたいたしい)・傷傷しい 1.見るからに痛そうである。 用例:日葡辞書「イタイタシュウ折檻スル」 2.こちらの心が痛むくらいに弱々しくて、可哀想(かわいそう)だと感じられる。とても哀(あわ)れである。また、非常に痛ましい。 類:●不憫(ふびん) 用例:浄・丹波与作待夜の小室節−道中双六「可愛の形(なり)や、いたいたしや」
・異体同心(いたいどうしん) 体は別々だけれど、心は一つであるということ。 類:●一心同体●身も心も一つ
・痛いところ(いたいところ) 弱点。欠点。 例:「痛いところを衝(つ)かれる」
・痛い目に遭う(いたいめにあう)[=を見る] 酷(ひど)い目に遭う。
・衣帯を正しくす(いたいをただしくす) 身なりをきちんとして、威儀を正しくすること。
・居高振り(いたかぶり) 自分だけで好い気になっている様子。自惚(うぬぼ)れた態度。 用例:仮・悔草−上「とみにおかされ。居(ヰ)たかぶりのていたらく」 用例の出典:悔草(くやみぐさ) 仮名草紙。3冊。・・・調査中。
・痛くない腹を探られる(いたくもないはらをさぐられる) 悪いことも疾しいこともしていないのに他人から疑いを掛けられる。
・痛くも痒くもない(いたくもかゆくもない) なんの影響も受けず、まったく平気である。 類:●痛痒(つうよう)を感じない 出典:「晋書」
・居丈高(いたけだか) 座ったまま、身をぐっと反らせる姿勢のことで、人を威圧するような態度、怒りを含んでいきり立つ様子を指して言う。 用例:太平記−二「居丈高に成て申しける間」 類:●居(い)高ぶる
・板子一枚下は地獄(いたごいちまいしたはじごく) 舟の床板の下は、地獄のような深い海である。舟乗り稼業の危険なことを喩えた言葉。
・痛し痒し(いたしかゆし・かいし) 掻けば痛く掻かなければ痒いという意味から、二つのことが互いに差し障りがあって、一方のことをすると他方に支障が生じるという状態を指す。どちらとも決められない場合に使う。 類:●河豚(ふぐ)は食いたし命は惜しし
・悪戯になる(いたずらになる) 1.期待した結果にならないままに終わる。役に立たなくなる。無駄になる。 用例:宇津保−藤原の君「仏に奉る物は、いたづらにならず、来世、未来の功徳なり」 2.死ぬ。また、生きていても仕方がないような状態になる。 用例:拾遺−九五〇「あはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな」 類:●台なしになる●棒に振る ★「悪戯」は当て字。「徒(いたずら)に」の転で、「無益なこと」から。 用例の出典:宇津保物語(うつぼものがたり・うつほものがたり) 平安中期の物語。20巻。作者未詳。源順(みなもとのしたごう)など複数の作者によって書かれたと思われる。円融、花山天皇の頃の成立とされる(10世紀後半ごろ)。清原俊蔭(としかげ)、その娘、仲忠(なかただ)、犬宮の四代にわたる琴の名人一家の繁栄と、仲忠ら多くの青年貴族に求婚された貴宮(あてみや)が東宮妃となり、やがて皇位継承争いが生じる過程を描く。幻想的、伝奇的な「竹取物語」から写実的な「源氏物語」に展開していく過渡期の作品。 ★「うつほ」は仲忠母子が杉の空洞にひそんでいたことにちなむ<国語大辞典(小)>
・戴く物は夏もお小袖(いただくものはなつもおこそで) 貰える物なら、夏に不用な絹の綿入れでも喜んで貰うという意味で、欲の深いことを指して言う。
・頂けない(いただけない)・戴けない 1.貰(もら)えない。食べられない。飲めない。 例:「そんな高価なものは頂けません」 2.良いと思えない。甘んじて受け入れられない。また、感心できない。 例:「その案は頂けないね」
・居た堪れない(いたたまれない) 「居た堪らない」の変化。その場にこれ以上留まって居られない。これ以上我慢できない。 用例:滑・浮世風呂−三「居溜(ヰタタマ)らねへから下らうと云たらの」
・鼬ごっこ(いたちごっこ) 両者が同じようなことをしあって埒(らち)が明かないこと。愚かしいこと繰り返しをすること。 例:「ウイルスとワクチンの鼬ごっこ」 ★鼬ごっこ(いたちごっこ) 子供の遊戯の一つ。二人が向かい合って、互いに「いたちごっこ、ねずみごっこ」と唱えながら、相手の手の甲をつまみながら順次にその手を重ねてゆく遊び。*雑俳・柳多留‐四二「いが栗を鼬こっこでつまみ上げ」<国語大辞典(小)>
・鼬の最後っ屁(いたちのさいごっぺ)
・鼬の道切り(いたちのみちきり)
・韋駄天走り(いだてんばしり) 韋駄天のように非常に速く走ること。 参考:韋駄天(いだてん) 仏教用語。南方の増長天に属する八将軍の一人。四天王の八将軍を合わせた32将軍全体の長。元バラモン教の神で、シバ神またはアグニ神の子という。仏教に取り入れられ、僧あるいは寺院の守護神となった。形像は、身に甲冑(かっちゅう)を着け、合掌した両腕に宝剣を持つ。釈迦が涅槃(ねはん)の後、捷疾鬼(しょうしつき)が仏舎利から歯を盗み去ったとき、この神が追いかけて取り戻したという俗説がある。非常な速さで駆け、魔鬼を排除するとされるところから、足の速いことや人をもいう。
・板に付く(いたにつく) 1.役者が経験を積んで、芸が舞台にしっくりと調和する。2.一般に、その仕事に物慣れている様子を言う。また、服装・態度などがその職業によく似合う様子などにも言う。 類:●それらしくなる 例:「板に付いた司会ぶり」「和服姿が板に付いている」 ★「板」は、芝居の舞台のこと。
・板の間稼(いたのまかせぎ) 風呂屋の脱衣場で、他人の衣服や金品を盗み取ること。また、その盗人。 類:●板場かせぎ●板場を踏む
・板挟み(いたばさみ) 対立する、あるいは、両立しない二つの選択肢の間に挟まって自分の態度を決め兼ね、迷い悩むこと。 例:「恋と出世の板挾み」
・痛み入る(いたみいる) 1.相手からの親切や好意を、自分にはもったいないこととして心に深くすまないと思う。 ★現代では、挨拶に用いることが多い<大辞林(三)> 類:●恐縮する●恐れ入る 用例:咄・軽口露がはなし−三「あまり慇懃なるあひさつにいたみ入」 2.意表を突かれて、やられたと感じる。また、相手の厚かましい態度に呆れる。 類:●恐れ入る 用例:談・地獄楽日記−二「痛(イタミ)いらせる挨拶に」 用例の出典:軽口露がはなし(かるくちつゆがはなし) 咄本。露の五郎兵衛。元禄4年(1691)。・・・詳細調査中。
・痛み分け(いたみわけ) 相撲で取り組み中、一方が負傷したために引き分けになること。喧嘩や他の勝負事で決着が付かないようなときに用いることもある。
・痛む上に塩を塗る(いたむうえにしおをぬる) ただでさえ痛い傷口に塩を塗れば、沁(し)みて一層痛くなることから、悪いことの上に更に悪いことが起こって、辛(つら)さが増すことの喩え。 類:●傷口に塩を塗る●痛い上の針●弱り目に祟り目●泣きっ面に蜂●踏んだり蹴ったり
・至らない(いたらない) 1.〜するには及ばない。〜するほどではない。 例:「小火程度で大事には至らなかった」 2.思慮が不十分で、ものごとに気が付かない。未熟で欠点が多い。 類:●修行が足りない 用例:咄・醒睡笑−三「京より、いたらぬ者ども連立ち」
・至り賢し(いたりかしこし) 考え深く、才知が優れていること。
・至り深し(いたりぶかし) 1.思慮深く手抜かりがないこと。 用例:源氏−横笛「いといたりふかき人なれば」2.学問などに深く通じている。また、風景などに奥深さが感じられて、趣(おもむき)が深い。 用例:源氏−若紫「なにのいたりふかき隈(くま)はなけれど」
・至る所(いたるところ) 1.行く先々、どこも。2.何処(どこ)も彼処(かしこ)も。 例:「町中至る所に吸殻が落ちている」
・至れり尽くせり(いたれりつくせり) 何もかも非常に良く行き届いている。 類:●痒いところに手が届く 用例:俳・伊勢紀行−跋「此人や、この道に到れり尽せり」 用例の出典:伊勢紀行(いせきこう) 雑俳。尭恵。文明18年(1486)。・・・詳細調査中。