−いと(ito)−
・厭うに栄ゆ(いとうにはゆ) 嫌だと思えば思うほど却ってそのものごとが盛んになる。 用例:後撰−六〇九「あやしくもいとふにはゆる心かな」
・糸の切れた凧のよう(いとのきれたたこのよう) 1.操作できずにどこへ飛んでいくか分からない凧のことで、どこをほっつき歩いているのか分からない者などの喩え。 類:●根無し草●極楽蜻蛉 ★英語「a
threadless kite」の和訳からか。 2.目的を持たない者の喩え。
・井戸の端の童(いどのはたのわらんべ) 井戸端で遊ぶ幼児が危険であるところから、危険な状態のこと。
・井戸端会議(いどばたかいぎ) 共同井戸の周りで水汲みや洗濯などをしながら、女たちが噂話や世間話に花を咲かせることを揶揄して言った言葉。また、主婦たちが家事の合間に集まってするお喋りのこと。
・暇が出る(いとまがでる) 休暇が出る。解雇される。離縁される。
・暇を乞う(いとまをこう)[=申す] 1.休暇を願い出る。暇を貰う。 用例:竹取「おほやけには〈略〉とていとま申て」 2.人に別れを告げる。別れる。勤めを辞(や)める。 用例:宇津保−俊蔭「三人の人にいとまをこひて」 類:●暇を取る
・暇を取る(いとまをとる) 1.勤めを辞(や)める。願い出て主従の関係を絶つ。 類:●暇を貰う 2.夫や主人に願い出て、夫婦や主従の関係を解消する。離婚する。
・糸目を付ける(いとめをつける) ものごとに限度を決める、制限を加える。多く打消しの形で、金品を思いのままに使うことに使う。 例:「金に糸目を付けない」 ★糸目[=凧(たこ)の釣り合いをとるために、表面につける数本の糸]をつけてない凧が風まかせに飛ぶことにたとえて<大辞林(三)> ★一説に「いとめ」は「厭(いと)い目」の意とも<国語大辞典(小)>
・糸を治めんとして之を乱す(いとをおさめんとしてこれをみだす) 1.縺(もつ)れた糸を解(ほぐ)そうとして、却(かえ)って余計に縺れさせてしまう。2.人民を治めるのに徳を以ってではなく、動乱を以ってすることの喩え。人民を武力で統治することはできないということ。 出典:「春秋左氏伝−隠公四年」「衆中曰、〈略〉臣聞以徳和民、不聞以乱。以乱、猶治絲而[林/分]之」
・糸を引く(いとをひく) 糸で操り人形を動かすように、陰で人を操る。裏で指図をして人を思うように動かす。 用例:浄・神霊矢口渡−一「合戦に及ぶ様に糸を引かせ」
・猗頓の富(いとんのとみ) 莫大な富。 出典:「史記−貨殖伝」などにみえる猗頓の話。 ★猗頓(いとん) 中国春秋時代、または戦国時代の大富豪。