−かけ(kake)−
・掛け合う(かけあう) 1.二つが釣り合う。 類:●匹敵する 用例:連理秘抄「すべてこの句にかけあひたる秀逸は」 2.要求や要望を持って相談に行く。 類:●談判する●交渉する 用例:洒・南門鼠「其都合は切手に掛合ておくから」 3.関わり合う。参加する。 類:●関与する●関係する 用例:随・孔雀楼筆記−三「黄河の水を引て運河とす。これにかけあふ役人」 用例の出典@:連理秘抄(れんりひしょう) 連歌論。1巻。二条良基著。貞和五年(1349)頃の成立。前半は連歌の沿革、作句の心得、付方、賦物、嫌物、風体など、後半の式目は「応安新式」の草稿とも考えられる。 用例の出典A:南門鼠(なんもんねずみ) 洒落本。塩屋艶二。寛政年間(1799頃か?)。後編に「鼠帰(ねずみかえし)がある。・・・詳細調査中。
・家鶏野鶩(かけいやぼく) 1.家に飼っている鶏(にわとり)と野生の家鴨(あひる)という意味で、日常見慣れている、有り触れたものを遠ざけ、新しいものや珍しいものを尊ぶこと。家にある良いものを捨てて、外にある悪いものを好むことの喩え。 用例:随・孔雀楼筆記−二「家鶏野鶩の謗を免がれず」 2.良いものと悪いもの、有用なものと無用なもの、また妻と妾(めかけ)などを表わす。
・駆け馬に鞭(かけうまにむち) 強い者に、更に力を添えてやって、一層強くすること。 類:●行く馬に鞭●走る馬に鞭●虎に翼●鬼に金棒
・陰裏の芋も味の付く時分(かげうらのいももあじのつくじぶん) 「芋」は男性器の比喩。青年男子が年頃になると色気付く。
・陰裏の豆もはじけ時(かげうらのまめもはじけどき) 「豆」は女性器の比喩。日陰に植えた豆でも、時期が来ればいつのまにか成熟するということから、どんな娘でも年頃になれば色気付くものであるということ。 類:●日陰の豆も時が来れば爆ぜる●芝栗も時節が来れば弾ける●陰裏の桃の木も生(な)る時分には生る●陰裏の桃の木も時が来れば花咲く
・陰裏豆(かげうらまめ) 1.日陰や葉陰などに生(な)る豆。2.「豆」は女性器の比喩。街頭で客を誘い、売春をする女。 類:●街娼●辻君
・影が薄い(かげがうすい) 1.目立たない存在になっている。また、零落(おちぶ)れかけている。落ち目である。 用例:雑俳・柳多留−四「茶の会にかげのうすいがてい主也」 2.何となく元気がなく、衰(おとろ)えて見える。死神に取り憑かれたように見える。
・掛け替えのない(かけがえのない) 代わりになるものがない。二つとない唯一つの。二人といない唯一人の。とても大事な。 例:「掛け替えのない命(人)」
・陰口を利く(かげぐちをきく) 当人がいない所で、その人の悪口を言う。
・陰口を叩く(かげぐちをたたく) 当人がいない所で、その人の悪口を言う。
・駆け出し者(かけだしもの)・駆け出し 1.田舎を飛び出して都会に来た者。2.未熟な者。 類:●初心者
・駆け付け三杯(かけつけさんばい) 酒宴の席に遅れて来た者に対して、罰として、続けて三杯の酒を飲ませること。 類:●遅れ三杯
・陰で糸を引く(かげでいとをひく) 操り人形使いが陰で糸を操って人形を動かすように、人目に付かない裏面にいて、ものごとを支配したり、他人を動かしたりする。 類:●糸を引く
・欠け徳利(かけどくり・どっくり) 1.口の欠けた徳利ということで、口が悪いこと。また、その人。 用例:浄・忠臣金短冊−二「さりとはけうとい欠徳利、わる口をいはずとも」 2.よく喋(しゃべ)ること。また、その人。 類:●転け徳利 用例の出典:忠臣金短冊(ちゅうしんこがねのたんざく) 浄瑠璃。並木宗助・小川文助・安田蛙文合作。享保17年(1732)。赤穂浪士討ち入り物。題に「忠臣」と付いたのはこれが初めて。「仮名手本忠臣蔵」の16年前。
・陰に居て枝を折る(かげにいてえだをおる) 恩を仇(あだ)で返すことのたとえ。 類:●恩を仇で返す
・陰になり日向になり(かげになりひなたになり) 人に知られない面でも表立った面でも両方。 類:●陰(いん)に陽に ★絶えず庇(かば)い守るような場合に用いることが多い<国語大辞典(小)>
・掛け値なし(かけねなし) 1.実際の売り値そのままであるということ。値段を吹っ掛けていない、ということ。 例:「掛け値なしで5万円だ」 ★「現金掛け値なし」は、江戸日本橋の呉服商・三井越後屋(今の三越)が「引き札」に書いた文句。付け(=掛け売り)が当たり前であった当時に、現金での販売のみにし、その代わり儲(もう)けなしの価格で売るという意味。天和3年(1683)頃か? 2.ものごとを大袈裟(おおげさ)に言っているわけではないということ。誇張していないこと。 類:●正真正銘 例:「あそこのラーメンは掛け値なしに美味い」
・影の形に添うよう(かげのかたちにそうよう)[=随(したが)うが如し] 物に必ず影が付き添うようにという意味で、親子や夫婦などが常に一緒にいて離れない様子。 類:●影身に添う●影身を離れず
・陰の朽木(かげのくちき) 物陰にある朽木のことで、人に認められないまま老いて朽ち果てる者の喩え。
・陰の舞い(かげのまい) 1.見る人のいない所で舞うことから、骨折り甲斐がないこと。2.煩(うるさ)い人がいない間に自由に振る舞うこと。 類:●鬼の居ぬ間の洗濯 用例:浄・右大将鎌倉実記−二「陰の舞の我儘か」 用例の出典:右大将鎌倉実記(うだいしょうかまくらじっき) 浄瑠璃。竹田出雲。享保9年(1724)。・・・詳細調査中。
・駆け引き(かけひき) 1.交渉・談判や試合などで、相手の出方や状況に応じて、自分に有利なように事を運ぶこと。また、その術。臨機応変の処置や策略。 例:「恋の駆け引き」 2.戦場で、臨機応変に兵を進退させること。 ★2.が原義<大辞林(三)>
・陰弁慶(かげべんけい) 人のいない所でばかり強がって、人前では意気地の者。 類:●隠れ弁慶●内弁慶 用例:雑俳・柳多留−一〇「里の母かげ弁慶を遣ふなり」
・陽炎稲妻水の月(かげろういなずまみずのつき) 手に取ることができないもの。また、動作が素早くて捕まえられないもの。
・影を畏れ迹を悪む(かげをおそれあとをにくむ) 自分の影に怯(おび)える。自分の心の中で、勝手に苦悩を作り上げ、心を平静にできないことの喩え。 故事:「荘子−漁父」 自分の影と足跡から逃れようと走り続けて、遂に死んだ。
・影を落とす(かげをおとす) 1.光を投げ掛ける。光が射している。 例:「夕日が影を落としていた」 2.光を受けてその影法師を他の物の上に写す。3.転じて、悪い影響を与える。 例:「核問題が暗い影を落としている」 ★「影を投げ掛ける」のようにも使う。 4.料理で、汁物などに醤油を少し注(さ)す。
・影を隠す(かげをかくす) 身を隠す。
・陰をする(かげをする)[=致(いた)す] 姿を消す。隠れる。 用例:浄・悦賀楽平太−役目尽し「さあ両人一まづおちてかげをせよ、あとのことは某にまかせし」 用例の出典:悦賀楽平太(えがらのへいた) 浄瑠璃。近松門左衛門。元禄5年(1692)。・・・詳細調査中。
・影を潜める(かげをひそめる) 表立った所から姿を隠す。また、比喩的に、ものごとが表面から消える。 例:「彼はすっかり影を潜めている」「思慮も分別も影を潜めてしまった」