−かね(kane)−
・鐘鋳るまでの土鋳型(かねいるまでのつりいがた)[=泥鋳型] 目的を達成するまでの手段として用いるだけのもののこと。また、成功するまでは粗末なもので我慢するということ。
・金請けに立つとも人請けに立つな(かねうけにたつともひとうけにたつな)[=するとも人請けするな] 借金の保証人にはなっても、人物の保証人になどなるものではない。
・金が唸る(かねがうなる) あり余るほどのたくさんの金銭を蓄え持っていることの喩え。
・金が敵(かねがかたき) 1.金銭は人にとって敵のようなもので、そのために苦しんだり、災いにあったりするものだ。2.尋ねる敵のように、金銭には中々巡り会えないということ。金銭を得るのは難しいということ。
・金が物を言う(かねがものをいう) 金銭は言葉や道理以上に威力を発揮するということ。
・鉦太鼓で探す(かねたいこでさがす) 鉦や太鼓などを打ち鳴らして迷子を探し回るという意味で、大騒をぎしながら方々を捜し歩くこと。
・金蔓(かねづる) 金銭を手に入れる手段や手掛かり。金銭を出してくれる人。 例:「金蔓を掴む」
・金で面を張る(かねでつらをはる) 金銭の力で相手を圧倒する。 類:●金があれば馬鹿も旦那●金が物を言う●金さえあれば飛ぶ鳥も落ちる
・金銅鑼を打つ(かねどらをうつ) 「銅鑼を打つ」と同じ意味。「金尽く」を「鉦撞く」と掛け、そこから「銅鑼を打つ」、更に「金銅鑼を打つ」と洒落たもの。やりたいことをやって、財産を使い果たしてしまったということ。
・金に飽かす(かねにあかず) たくさんある金銭を惜しまず使って事をする。費用をたっぷり使う。 用例:浮・傾城色三味線−鄙「銀(カネ)にあかして、工手間のかかりし物ずきの大座敷」 ★「飽く」は「満ち足りる」の意。「〜に飽かす」で「〜を十分に使って…する」の意。 用例の出典:傾城色三味線(けいせいいろじゃみせん) 浮世草子。5冊。江島其磧。元禄14年(1701)刊。遊里、遊女を主題とする短編24話を収める。西鶴の影響が濃いが、新趣向がこらされている。「八文字屋本」の最初の小説。
・金に糸目を付けぬ(かねにいとめをつけぬ) 際限なく金銭を使うこと。糸目は凧(たこ)が全面に平均した風を受けるよう引きしめる糸で、それを付けない凧は無制御の状態となるところから喩えた言葉。 類:●金に飽かす
・金の切れ目が縁の切れ目(かねのきれめがえんのきれめ)
・金の鎖も引けば切れる(かねのくさりもひけばきれる) 金属の鎖でも強い力が掛かれば切れる。どんなに意志の堅い人でも、時には誘惑に負けることがあるということ。また、努力してできないことはないということ。
・金の轡を食ます(かねのくつわをはます) 金銭を与えて口止めする。
・金の蔓(かねのつる)[=手] 金銭を儲けさせてくれる手掛かり。 類:●金蔓
・金の生る木(かねのなるき) 1.金が実るという想像上の木のことで、比喩的に、家賃、地代、金利など次次と利潤を生み出すような財源。または、金蔓(かねづる)。2.弁慶草科の植物、縁紅弁慶(フチベニベンケイ)の別名。「成金草」とも呼ばれる。
・金の番人(かねのばんにん) 1.お金の番をする人。2.専(もっぱ)ら金銭を貯めているだけで使い道を知らない人。または、守銭奴。
・金の草鞋で尋ねる(かねのわらじでたずねる)[=足駄(あしだ)で〜]・[=捜す] 値打ちの高いものを根気強く探し回る。 ★鉄製の草鞋は磨り減らないことから。 参照:年上の女房は金の草鞋を履いてでも探せ
・金は天下の回りもの(かねはてんかのまわりもの)
・金は湧き物(かねはわきもの)[=湧く物] 金銭は思い掛けなく手に入ることもあるから、くよくよすることもない。 類:●金銭は湧き物●宝は湧き物
・金回り(かねまわり) 1.金銭の流通。2.収入の具合い。 類:●懐具合い 例:「近頃金回りが良い」
・鐘も撞木の当たりがら(かねもしゅもくのあたりから) 鐘の音の良し悪しは撞木の当たり具合に因るというところから、接し方次第で、それ相応の反応をすること。また、連れ添う相手次第で、良くも悪くもなるということ。
・金持ち金を使わず(かねもちかねをつかわず) 金持ちほど金を惜しがって使わないものだということ。 類:●弁当持ち先に食わず ★あとに「貧乏人は金を使えず」や「人を使う」などと続けても言う。
・金持ち喧嘩せず(かねもちけんかせず) 金持ちは他人と争わない。金持ちは計算高いから、計算に合わないことは決してしないということ。
・金持ち小銭に困る(かねもちこぜににこまる) 金持ちは、却(かえ)って日常遣う少額の金銭に不自由する。矛盾していることの喩え。
・金持ちと灰吹きは溜まるほど汚ない(かねもちとはいふきはたまるほどきたない) 煙草の灰が灰吹き(=煙草盆の筒)に溜まれば溜まるほど汚なくなるように、金持ちは財産が増えるほど、心が卑(いや)しくなったり、けちになったりする。
・金を食う(かねをくう) 効果がない割りに費用ばかり嵩(かさ)むこと。
・金を攫む者は人を見ず(かねをつかむものはひとをみず) 眼前の欲に目が眩(くら)む者は、周りの状況を良く見ない。欲のために状況を顧(かえり)みないことの喩え。 出典:「虚堂録」「逐鹿者不見山、攫金者不見人」 故事:「列子」 昔、斉の国に強欲な男がいた。男は、金属を商(あきな)う者のところに行って、それを盗んで去ろうとしたが、あっという間に官憲に捕らえられてしまった。官憲が問い質(ただ)すと「金を掴むときは人を見ず、ただ金を見るのみ」と答えた。
・金を寝かす(かねをねかす) 金銭を利殖などに使わないで、無駄に蓄えておくこと。