−から(kara)−
・空馬に怪我なし(からうまにけがなし) 無一文の者は損のしようがないということの喩え。 類:●裸馬に怪我なし
・唐傘一本(からかさいっぽん) 破戒僧が寺を追放されること。寺を追放される時、唐傘を一本だけ持つことを許されたところから。 類:●出家一本傘
・柄が悪い(がらがわるい) 性格や性質が悪い。身なりや態度が悪い。品(ひん)がない。 例:「ああいう柄の悪い奴らとは付き合うな」
・辛き命(からきいのち) 1.辛うじて助かった命のこと。 用例:平家−六「からき命生きて、川より東へひきしりぞく」 2.細々と暮らしている命のこと。 用例:読・弓張月−後「からき命を繋ぎつつ」
・からきし・からっきり・からっきし 主に、後に否定表現や否定的な意味を含む言葉を伴(ともな)う。 まるっきり。てんで。全然。 例:洒・繁千話「馬骨はからっきりの文盲ゆへ」 例:「酒はからきし飲めません」 用例の出典:繁千話(しげしげちわ) 洒落本。山東京伝作・画。寛政2年(1790)。「洒落本は、通を描くにあらず半可通を描くにあり、馬骨なる半可通を描く」として、それまでのこじつけ・洒落・穿(うが)ちに留まらず、人物の心理描写にも広げた作。『洞房妓談繁々千話』。
・絡繰り人形(からくりにんぎょう) 糸やゼンマイなどの仕掛けで動くように作ってある人形から転じて、他人の意のままに動く人。他人に操られる人のこと。
・烏が鵜の真似(からすがうのまね) → 鵜の真似をする烏
・烏に反哺の孝あり(からすにはんぽのこうあり)
・烏の頭が白くなる(からすのかしらがしろくなる) 容易に起こり得ないこと、有り得ないことの喩え。 故事:「史記−刺客伝賛注」・「燕丹子」 中国の戦国時代、秦に人質となっていた燕の太子、丹が帰国を望んだところ、秦王が「烏の頭が白くなり、馬に角(つの)が生えたら許可しよう」と答えたという。 類:●烏頭白●烏頭変毛 出典:燕丹子(えんたんし) ・・・調査中。 人物:燕丹(えんたん) 戦国時代、燕の国の太子。荊軻(けいか)に秦の始皇帝を暗殺させようとして失敗した。父、燕王喜は丹を切り、秦に献じた。
・烏の行水(からすのぎょうずい) 入浴で、ゆっくり洗うこともしないで、すぐに出てしまうこと。 類:●烏浴び
・烏の雌雄(からすのしゆう) 烏の雄雌(おすめす)のように、よく似ていて区別し難いものの喩え。 出典:「詩経−小雅・正月」「具曰予聖、誰知烏之雌雄」
・烏は自分の子が一番美しいと思っている(からすはじぶんのこがいちばんうつくしいとおもっている) 多くの親は、その愛情ゆえに、我が子を客観的に見ることができないものである。 類:●親の欲目●親の目は贔屓目●親馬鹿 ★英語の諺The crow thinks her own bird fairest.から。
・烏を鵜に使う(からすをうにつかう) 能力のない者を、才能を必要とする重要な地位に置くこと。
・烏を鷺(からすをさぎ) 理を非に、非を理に言い包(くる)めること。不合理を押し通すこと。黒を白ということ。 類:●鷺を烏
・唐竹を割ったよう(からたけをわったよう) → 竹を割ったよう
・枳殻になる(からたちになる) 木が変わるところから、気が変わるの洒落(しゃれ)。心を入れ替える。改心する。 用例:雑俳・柳多留−七「からたちに成てかん当ゆるす也」 参考:江南の橘(たちばな)が江北に移されて枳(からたち)になるという中国のことわざによる。
・体を惜しむ(からだをおしむ) 労力を惜しむ。 類:●骨惜しみをする●怠(なま)ける
・体を粉にする(からだをこにする) 苦労を厭(いと)わず、一所懸命骨折って尽くすこと。 類:●身を粉にする●粉骨砕身する
・体を張る(からだをはる) 一身を擲(なげう)って行動する。命懸けでする。
・空っ穴(からっけつ) 1.まったく何もないこと。 類:●無一物●空っぽ 用例:人情穴探意の裡外−二「たんすはさっぱり空虚(カラケツ)」 2.特に、財布の中に一文もないこと。 類:●一文なし●空穴●おけら ★芝居者の通言から出て文化・文政期に流行した語。空(から)の穴の意から<国語大辞典(小)> 用例の出典:人情穴探意の裡外(にんじょうあなさがし??) 滑稽本。・・・調査中。
・がらっぱち 言葉遣いや行為が粗野で、落ち着きがないこと。またそういう人。 ★「がら」は、がらがらしたの意<国語大辞典(小)>
・空唾を飲む(からつばをのむ) ご馳走を出されたり、あることに出会って酷く緊張したりしたときなどに、思わず唾液を飲み込む。
・空鉄砲(からでっぽう) 事実ではない話。 類:●法螺(ほら)●大言●鉄砲 用例:滑・人間万事虚誕計−自序「或はヨタロウ殻鉄炮(カラデッパウ)」 用例の出典:人間万事虚誕計(にんげんばんじうそばっかり) 滑稽本。前編は式亭三馬、文化10年(1813)。後編は滝亭鯉丈、天保4年(1833)。・・・詳細調査中。
・辛党(からとう) 菓子類などの甘いものよりも酒類の好きな人。 類:●酒飲み●左党 反:■甘党
・柄にもない(がらにもない) 地位や能力・性格などに相応(ふさわ)しくない。 例:「柄にもなく緊張している」
・空念仏(からねんぶつ・そらねんぶつ) 1.信仰心なく、口先だけで念仏を唱(とな)えること。また、心が篭もっていない信仰の喩え。 用例:俳・文政句帖−五年六月「久かたの人目ばかりは有明のつきづきしさの空念仏かな」 例:「親の小言を空念仏のように聞き流す」 2.実行が伴わないで口先だけでする、表面だけは立派な主張。 例:「選挙公約は往々にして空念仏に終わる」
・唐へ投げ金(からへのなげがね)[=への〜] 利益がなく、金を無駄に使うことの喩え。 ★江戸幕府が鎖国以前に行なった朱印船貿易への投資は、無事帰国すれば大きな利益を上げるが、海難のときは元も子もなくなるところから言われた<国語大辞典(小)>
・空回り(からまわり) 1.車や機関などが、無駄(むだ)に回転すること。 類:●空転 2.転じて、行動や考えが、同じところを回っていて一向に発展しないこと。 例:「議論が空回りする」
・殻を言う(からをいう)[=抜かす] 法螺(ほら)を吹く。 用例:伎・伊勢平氏梅英幣−大切「大風に、からを云うても」 ★一説に「から」はほら貝の殻の意という<国語大辞典(小)> 用例の出典:伊勢平氏額英幣(いせへいじうめのみてぐら) 歌舞伎。鶴屋南北(四世)、松井由輔(二世)、勝兵助、松井幸三(二世)合作。文政3年(1820)。6幕。・・・詳細調査中。
・空を踏む(からをふむ) 目当てが外れて目的が達せられないこと。また、一文にもならない時にいう。 類:●無駄足を踏む 用例:伎・日本晴伊賀報讐−六幕「尋ねて行ったら空(カラ)を踏み」 用例の出典:日本晴伊賀報讐(にほんばれいがのあだうち) 歌舞伎。河竹黙阿弥。・・・詳細調査中。 人物:河竹黙阿弥(かわたけもくあみ) 幕末・明治初期の歌舞伎脚本作者。江戸の人。1816〜93。本姓吉村、のち古河。名は芳三郎。俳名其水。五世鶴屋南北の門に入り、初世勝諺蔵(かつげんぞう)を名のる。のち二世河竹新七を襲名。特に世話物に優れ、活歴物、散切物にも多くの作品を残し、江戸歌舞伎の集大成者とされる。作品「三人吉三廓初買」「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」「島鵆月白浪(しまちどりつきのしらなみ)」など。