−かわ(kawa)−
・可愛い子には旅をさせよ(かわいいこにはたびをさせよ)
・可愛さ余って憎さ百倍(かわいさあまってにくさひゃくばい) 人を愛するあまり、却(かえ)ってその人を憎み、また、呪うようになることがある。 類:●思えば呪う●余桃の罪 反:■憎い憎いは可愛いの内
・可哀相(かわいそう)・可哀想 哀(あわ)れで、人の同情を誘うような様子である。気の毒で、直視できないような様子である。不憫(ふびん)である。 用例:咄・無事志有意−はやり諷「かわいそふに、おとなしくしている物を」 ★「可哀相」「可哀想」は、当て字。 ★「かわいい」は「顔映(は)ゆし」からの転で、『恥ずかしくて顔が火照(ほて)る→見るに忍びない→気の毒で見ていられない→可憐だ→愛らしい』と意味が変遷し、現在では「愛らしい」の意味だけが残っている。本来の意味「見るに忍びない」は、「かわいそう」にだけ生きている。・・・現代の「可愛い」には様態の助動詞「そう(だ)」は使えない。
・皮が取れない(かわがとれない) 種子や果物が殻を被っていてまだ熟していないという意味から、未熟であること。 用例:浮・傾城禁短気−六「未だ上人にも皮(カハ)のとれぬ所がござる」
・皮か身か(かわかみか) 物の差別が付き難いこと、はっきり分からないことの喩え。 類:●身か皮か 用例:浄・五十年忌歌念仏−上「かはかみか合点がいかぬ」 用例の出典:五十年忌歌念仏(ごじゅうねんきうたねんぶつ) 近松門左衛門。宝永4年(1707)。処罰物。奉公先の娘お夏と密通の手代清十郎は、同僚が企んだ悪だくみを知って殺害しようとするが、誤って他の同僚を刺殺し逃亡。お夏も狂乱して後を追うという、おなじみの話<近松門左衛門でござーい!>
・皮切り(かわきり) 1.最初に据えるお灸(きゅう)のこと。 ★最初に据えるお灸は身の皮を切るように痛く感じたことから。 2.ものごとのし初め。ある行動をする、その第一着手。 類:●手始め 例:「話の皮切り」 用例:日葡辞書「カワキリガダイジヂャ」
・皮切りの一灸(かわきりのひとひ) 最初に据えるお灸。何事も最初は苦痛であるということの喩え。
・川竹の流れの身(かわたけのながれのみ)[=女] 遊女などの定めない身の上。 類:●浮き川竹●流れの身 ★「流れの身」に枕詞「川竹」が付いたもの<国語大辞典(小)>
・川に水を運ぶ(かわにみずをはこぶ) 水があり余っている川に水を運んでもなんの意味もない。無駄な骨折りの喩え。 類:●屋上屋を架す●泥裏に土塊を洗う●聾に耳擦り●才太郎畑へ行く●笊に水●水に絵を描く
・川の字(かわのじ) 三人が並んで川の字の形で寝る様子。特に、子供を中にして寝る形を言い、夫婦円満であることを表わす。
・皮一重(かわひとえ) 容貌が美しい醜いは、唯(ただ)一枚の皮膚の表面上のことであり、その下は皆同じであるということ。転じて、僅かな差異のこと。 類:●紙一重
・皮算用(かわざんよう) 「捕らぬ狸の皮算用」の略。不確実な事柄に期待を掛けて、まだ実現してもいないのに、あれこれ宛てにして計算すること。
・川立ちは川で果てる(かわだちはかわではてる) 川に育ち川に慣れた者は、兎角(とかく)油断のために川で死ぬことが多いということ。得意な技を持つ者も油断すれば失敗し、そのために却(かえ)って身を滅ぼすものだという喩え。 類:●泳ぎ上手は川で死ぬ●木登りは木で果てる
・川へ流す(かわへながす) 川に流した物は見る間に流れ去るという意味から、過去の争いや、揉(も)め事、それに伴う憎しみや恨みなどの感情を全て忘れてしまうこと。 類:●水に流す●水にする●思い切る
・変わり果てる(かわりはてる) すっかり変わってしまう。主に、悪い状態に一変するようなときに使う。 例:「変わり果てた姿」 用例:大和−一五七「男、妻まうけて心かはりはてて」 用例の出典:大和物語(やまとものがたり) 平安中期の歌物語。作者は在原滋春、花山院、敦慶親王侍女大和など諸説あるが未詳。天暦期頃の成立。170余段からなり、前半は歌語りの集成として天暦期を中心とした貴族社会における生活儀礼としての和歌の諸相を示し、後半約40段は、物語的、説話的傾向の大きい歌話を集めている。
・代わり番こ(かわりばんこ)・代わり番 互いに代わり合ってものごとをすること。交替で務(つと)めること。 用例:俳・生玉万句「かはり番余所目の関や霞むらん」 用例の出典:生玉万句(いくたままんく) 俳諧選集。寛文13年(1673)。井原西鶴撰。大坂の生玉で催された万句興行を編んだもの。自由な言語遊戯を目指す談林俳諧の新風を鼓吹した。寛文13年春興行6月刊行とみる説と、奥書を万句成就の日と考え6月の興行とみる説があるが、後者では追加発句の季が疑問として残る。 ★出雲説では、近世蹈鞴(たたら)製鉄の「鞴(ふいご)の踏み番「番子」が交代するところから」とするが、天秤鞴(てんびんふいご)の完成は元禄4年(1691)であり、用例の1673年より後である。出雲説は疑わしい。
・変われば変わる(かわればかわる) ものごとは、変わるとなると本当にすっかり変わるものだ。驚嘆の気持ちを込めて言う。 例:「へえ、彼が警察官とはね。変われば変わるもんだ」
皮を被る(かわをかぶる) 本性や本心を包み隠す。 類:●猫を被る