−けむ(kemu)−
・煙が懸かる(けむがかかる)[=掛かる] 災いが自分の身に及ぶ。 用例:伎・初冠曾我皐月富士根−四立「おれが旧悪をしゃべったら、こんたの身にも煙(ケム)がかからう」 用例の出典:初冠曾我皐月富士根(げんぷくそがさつきのふじがね) 歌舞伎。鶴屋南北。文政8年(1825)。・・・調査中。
・煙たい(けむたい) 気詰まりである。気兼ねがある。窮屈である。また、相手を敬遠したい。 類:●けぶたい●煙い 例:「煙たい存在」 用例:浄・嫗山姥−二「道理道理、身にかからぬこちとさへ、けむたうてたまられぬ」 用例の出典:嫗山姥(こもちやまんば) 浄瑠璃。時代物。五段。近松門左衛門。正徳2年(1712)大坂竹本座初演。謡曲「山姥」をもとにして、これに頼光四天王の世界を取り入れたもの。二段目の「八重桐廓話」は「しゃべり」の演技として名高く、四段目の山姥と快童丸のくだりは歌舞伎所作事「山姥」の原拠となる。
・煙になる(けむになる) 消え失せる。跡形も無くなる。 類:●灰と化す●灰燼(かいじん)に帰す 用例:伎・霜夜鐘十字辻筮−三幕「金が烟(ケム)になったら」 用例の出典:霜夜鐘十字辻筮(しもよのかねじゅうじのつじうら) 歌舞伎脚本。世話物。5幕。河竹黙阿弥。明治13年(1880)初演。散切物。士族六浦正三郎が天下のため恩師を討ったが、妻に自殺され、乳呑児を抱えて苦労する。助けてくれた巡査が恩師の子息と知った正三郎は討たれようとするが、和解して剃髪する。
・煙に巻く(けむにまく) 相手がよく知らないようなことを一方的に言い立てて、戸惑わせたり、茫然(ぼうぜん)とさせたりする。
・煙となる(けむりとなる・けぶりと〜)[=になる] 1.死んで火葬にされる。また、死ぬ。 用例:源氏−柏木「ゆくへなき空のけぶりとなりぬとも」 2.焼けてなくなる。焼失する。 用例:源氏−橋姫「見し人も宿もけぶりになりにしを」 3.焼けてなくなるように、ものごとがすっかりなくなってしまう。
・煙を立てる(けむりをたてる・けぶりを〜) 1.竈(かまど)を炊く煙を上げる。2.生計を立てる。 類:●けぶりを立てる