−きも(kimo)−
・肝煎り(きもいり) 1.あれこれ世話をする人。特に人間関係の取り纏(まと)めなどに骨を折る人。 類:●世話焼き●取り持ち 例:「社長の肝煎りで結婚式を挙げた」 ★「肝を煎ること」すなわち「心遣(こころづか)いをすること」の意<国語大辞典(小)> 2.役名。江戸時代、職制上の肝煎り(=高家肝煎り・寄合肝煎りなど)や、村の庄屋・名主(なぬし)などを指して言った。 ★もと、町内の世話役の意<新明解国語辞典(三)> ★「庄屋・名主」については、北陸・東北地方での称<学研国語大辞典> 3.奉公人、里子(さとご)、遊女などを周旋(あっせん)すること。また、それを生業(なりわい)とする者。 用例:雑俳・川柳評万句合「肝煎は道々うそを言ひ含め」
・亀毛兎角(きもうとかく) 亀の甲羅に毛が生えていることと、兎に角が生えていること。実在しないものごとの喩え。 類:●兎角●兎角亀毛●雪中の筍 出典:「首楞厳経」・「大般涅槃経」・「大智度論」・「摩訶止観」など 出典:摩訶止観(まかしかん) 仏典。随の高僧で天台宗の創始者・天台大師智(538〜597)が説き、阿難に比されるその門人・章安灌頂(561〜632)によって筆録編纂。20巻。仏道修行の実践と理論を具体的かつ体系的に説いたもの。「心は巧みな画師が種々の五陰を描くが如し。一切世間の中、心より造られざるはなし」と説く。日本では平安時代に流行し、以後の日本文化の形成にも大きな影響を与えた。
・肝が煎れる(きもがいれる)[=焼ける] 腹が立つ。癪(しゃく)に障って気がいらいらする。 類:●癪に障る
・肝が大きい(きもがおおきい) 心が強くて、ものごとに怖(お)じない。度胸があること。
・肝が据わる(きもがすわる) 度胸がある。滅多なことでは驚いたりしない。 ★生来の気質などに言う。
・肝が小さい(きもがちいさい) 度胸がない。臆病である。怖がり。 類:●小心
・肝が潰れる(きもがつぶれる)[=抜ける] 酷(ひど)く驚く。 類:●吃驚(びっくり)する●肝消える●魂消(たまげ)る
・肝が菜種になる(きもがなたねになる) 非常に驚く。多く、「あったら肝が菜種になった」の形で用いられる。 類:●肝が潰れる ★肝が、油を搾る菜種粒のようにつぶれる意。一説、菜種粒のように小さくなる意とも<国語大辞典(小)>
・肝が太い(きもがふとい) 胆力が大きい。大胆だ。また、図太い。 類:●胆(たん)が据わる
・気もそぞろ(きもそぞろ) 心が落ち着かないこと。そわそわする様子。 用例:浄・夏祭浪花鑑−七「人は来ぬかと気もそぞろ」
・肝膾を作る(きもなますをつくる) 内臓を切り刻むほどの思いをするという意味で、酷(ひど)く心配すること。非常に気を揉(も)む。 類:●断腸の思い 用例:源平盛衰記−四二「この扇誰か射よと仰せられむと、肝膾を作り、かたづを飲るものもあり」
・驥も櫪に伏す(きもれきにふす) 駿馬も老いるとむなしく厩に繋(つな)がれたままでいるが、志は大きいものだということ。才能ある者が世に認められず、力を発揮できずにいることの喩え。 類:●驥塩車に服す 出典:曹操「楽府−碣石篇・其四」「老驥伏櫪、志在千里」
・肝に染む(きもにしむ・そむ) 深く感じて忘れないこと。 類:●心に銘ずる●感銘する
・肝に銘ず(きもにめいず) 心に刻み込むようにして忘れない。しっかり覚えておく。 類:●肝に染む●心に銘ず●拳拳服膺(けんけんふくよう)
・肝の束(きものたばね) 1.急所中の急所。五臓六腑が一つに束ねられているものと見て、その束ね目。内臓の中で最も大切な所。2.ものごとに恐れない気力。 類:●肝っ玉 3.ものごとの重要な所。 類:●要点●急所
・肝を煎る(きもをいる) 1.心をいら立てる。腹を立てる。また、心を悩ます。2.心遣いをする。熱心になる。3.世話をする。間を取り持つ。 類:●肝を焼く●肝を焦がす
・肝を砕く(きもをくだく) 1.心配事や悩み事のために、あれこれと思いが乱れること。心が苛(さいな)まれること。2.心を尽して努め、考えること。苦心して考えを巡らすこと。
・肝を消す(きもをけす) 1.酷く驚くこと。 類:●魂消る●肝を潰す 2.心を尽くす。苦心する。 類:●心を砕く
・肝を据える(きもをすえる) 固く決心する。覚悟を決める。 類:●腹を据える
・肝を出す(きもをだす)[=投げ出す] 思い切ってすること。また、負けぬ気を出すこと。
・肝を潰す(きもをつぶす)[=拉(ひし)ぐ・飛ばす] 非常に驚く。 類:●肝を消す●肝を冷やす●肝を飛ばす●肝を拉(ひし)ぐ●肝を減らす
・肝を嘗める(きもをなめる) 酷く苦しい思いをすること。特に、仇討ちやものごとを成就(じょうじゅ)させるために苦しみを経験する。 類:●臥薪嘗胆
・肝を冷やす(きもをひやす) 驚き恐れて、ひやりとする。
・記問の学(きもんのがく) 単に記問に過ぎない学問のこと。「記問」とは、古書を読んでただ暗記しているだけで、自分のものになっていないこと。知識を少しも活用しないこと。 類:●口耳の学●口耳三寸の学●耳学問 出典:「礼記」