−きに(kini)−
・気に入る(きにいる) 1.意向に適(かな)う。満足する。好きになる。 用例:虎寛本狂言・仏師「其上見れば御印相が気に入らぬ」 2.機嫌を取る。取り入る。子供をあやす。 用例:浮・好色盛衰記−一「大夫抱きあげて、色々お気に入て、すかし給へども」 用例の出典:仏師(ぶっし) 狂言。各流。詐欺師が田舎者(でんじゃもの)を騙(だま)して仏像を作る約束をし、自分が面を付けて仏像に成りすますが、田舎者が印相(いんぞう)が気に入らないと、色々注文を付けているうちに、化けの皮が剥(は)がれる。
・気に掛かる(きにかかる)・懸かる 心配になる。気になって忘れられない。 用例:狂言記・布施無経「いやいや、しんぜねば気にかかります」
・気に掛ける(きにかける)・懸ける[=障(さ)える] 心配する。懸念する。拘(こだわ)って、忘れないようにする。 用例:狂言記・伊文字「みな人ごとにわるくちをいふものぢゃ。気にかけな」 用例の出典:伊文字(いもじ) 狂言。各流。「恋しくは問うても来ませ(来たれ)伊勢の国伊勢寺もとに住むぞわらはは」という歌の下半分を忘れた主従ふたりが、道行く人を掴まえて、「い」の字が付く地名を尋ねる。
・気に食わない(きにくわない)[=ぬ] 心にそぐわない。嫌に思う。 類:●面白くない 用例:狂歌・堀河百首題狂歌集−雑「気にくわぬ人」 用例の出典:堀河百首題狂歌集(ほりかわひゃくしゅだいきょうかしゅう) 狂歌集。寛文11年(1671)。・・・調査中。
・岐に哭して練に泣く(きにこくしてれんになく) 分かれ道は本人の意思で南にも北にも行ける、白い糸は好みによって黄色にも黒にも染められる。人が習慣によって善人にも悪人にもなれるということを嘆くこと。また、善悪の区別が明らかでないことを嘆くこと。 類:●亡羊の嘆●墨子糸に泣く 出典:「淮南子−説林訓」「楊子見岐路而哭之、〈略〉墨子見練糸而泣之」
・気に障る(きにさわる) 心中面白くないと感じる。 類:●癪に障る●腹が立つ 例:「気に障ることをいう奴」
・気にする(きにする) 心配する。懸念(けねん)する。気に掛ける。 用例:雑俳・柳多留−二〇「気にしてはつまんでは見る偃のいぼ」 例:「もうちょっと服装を気にした方が良い」
・気に染む(きにそむ) 気にいる。心に適(かな)う。 類:●気に入る
・木に竹を接ぐ(きにたけをつぐ)
・気に留める(きにとめる) 心に留(とど)めておく。留意する。また、拘って、忘れないようにする。 類:●気に掛ける
・気になる(きになる) 1.心配に思う。心に引っ掛かる。気に掛かる。 用例:雑俳・柳多留−一二「気に成て負ると内義たたき付」 2.(連体修飾語を受けて) そういう気持ちになる。 用例:洒・傾城買二筋道「今夜が此二階のいとまごひだと思へば、ばかなあじな気になった」 用例の出典:傾城買二筋道(けいせいがいふたすじみち) 洒落本。1冊。梅暮里谷峨(うめほりこくが)作。雪華画。寛政10年(1798)刊。好男子の自惚(うぬぼ)れ男と、誠実な醜男との遊女に対する二様の態度を写し、後者がついには遊女に愛されるにいたる経緯を描く。「契情買虎之巻」の影響を受け、後の人情本発生の過程を示す作。
・機に臨み変に応ず(きにのぞみへんにおうず) その場、その時に応じて適切に処置する。 類:●臨機応変 ★単に「機に応ずる」とも<国語大辞典(小)> 出典:南史(なんし) 中国の正史。80巻。唐の李延寿撰。二十五史の一つ。高宗(649〜683)のときの成立。南朝の宋・斉・梁・陳の四国の正史を改修した通史。本紀10巻、列伝70巻からなる。
・木にのぼす(きにのぼす)[=彫(え)る] 板木(はんぎ)に彫(ほ)り付けるということから、書物などを出版すること。
・木にも萱にも心を置く(きにもかやにもこころをおく)[=草にも〜] 敵が潜んでいるかもしれないと、草木の僅かな動きにも警戒すること。周囲の人やものごとに細心の注意を払うこと。 類:●草木にも心を置く
・気に病む(きにやむ)[=持つ] 心に掛けて色々心配すること。苦労に思うこと。 用例:常磐津・三世相錦繍文章−序「十九や二十は、箸の転んだ事も気に病むものだが」 用例の出典:三世相錦繍文章(さんぜそうにしきぶんしょう) 歌舞伎脚本。常磐津。世話物。6段。三世桜田治助。安政4年(1857)江戸中村座初演。大坂南新屋敷の遊女お園と大工の六三郎の心中事件を題材とする。お園が兄長庵を殺して六三郎と心中、地獄極楽をめぐり歩く五段までを夢とし、長庵から宝の色紙を取り返し、お園と六三郎は結ばれる。全段常磐津なのが珍しい。通称「お園六三(ろくさ)」。 参考:常磐津節(ときわずぶし) 浄瑠璃の一流派。宮古路文字大夫が豊後節の分派として、延享4年(1747)に始めた曲調。彼が常磐津文字太夫と名乗ったところからの名称。曲調は、半ば唄い半ば語るもので、新内のように情緒本位ではなく、劇的であるために、歌舞伎の所作事と深く結び付いて今日に至る。常磐津。
・機に因って法を説く(きによってほうをとく) 仏教の真理は一つであるが、状況に応じて適切な説法をすること。転じて、臨機応変の処置をすること。
・木に縁りて魚を求む(きによりてうおをもとむ)