−きの(kino)−
・昨日の今日(きのうのきょう) 昨日に続いての今日。ある事件があって、それからまだ日が経っていないこと。 例:「昨日の今日だというのにまた飲みに行くのか」
・昨日の襤褸今日の錦(きのうのつづれきょうのにしき) 昨日までは貧しくみすぼらしかった者が、今日は立身出世して富貴の身となり立派な装(よそお)いをしているということ。世の中の移り変わりが激しいことの喩え。
・昨日の友は今日の敵(きのうのともはきょうのてき・あだ) 昨日まで仲間だと思っていた者が、今日には敵方へ回っているということ。人の心や運命などは、変わり易いものだということの喩え。 反:■昨日の敵は今日の味方
・昨日の花は今日の夢(きのうのはなはきょうのゆめ)[=塵(ちり)] 昨日まで繁栄していたのに、夢であったかのように、今日には没落してしまうということ。人の世が移ろい易いものだということの喩え。 類:●昨日の襤褸今日の錦
・昨日の淵は今日の瀬(きのうのふちはきょうのせ) 昨日まで淵であった所でも、一度流れが変わると今日は瀬になってしまうことがある。人生が転変無常であることについて言う。 ★「古今和歌集−雑・下」にある歌「世の中は何か常なる飛鳥川きのふの淵ぞけふは瀬になる−よみ人しらず」に基づく。
・昨日は昨日、今日は今日(きのうはきのう、きょうはきょう) 昨日あったことは飽(あ)くまでも昨日のことに過ぎず、今日また同じようになることはない。ものごとは、前日までと同じようにはいかないものだということ。 ★不運のために沈んでいる者を元気付けて、また、幸運に浮かれた者を戒(いまし)めて言う。
・昨日は人の身今日は我が身(きのうはひとのみきょうはわがみ)
・気の薬(きのくすり) 心の慰めになるものや面白いこと。 反:■気の毒
・気の所為(きのせい) 現実には起きていない現象を見聞きしたり、理由のない感情を持ったりなど、原因が自分の心の持ち方にあり、そのように感じること。 例:「気の所為か家が揺れているようだ」
・気の尽き(きのつき) 精根が尽きること。または、気分がくさくさすること。
・気の毒(きのどく) 1.自分の心に苦痛や困惑を感じること。 @気が揉(も)めたり、気掛かりであったりして、腹立たしく思ったり、厭(いや)に思ったりすること。 反:■気の薬 用例:虎寛本狂言・縄綯「あれも成まい、是も成るまいと申は、近来気のどくに御座るが」 A困ってしまうこと。 類:●困惑●迷惑 用例:虎寛本狂言・萩大名「さてさて気のどくな事で御ざる。是は何によそへた物で御ざらうぞ」 B決まりが悪いこと。恥ずかしいこと。 用例:浮・浮世親仁形気−一「わしが年をむしゃうにふけたやうに沙汰せらるるも気毒(キノドク)」 2.他人の不幸、苦痛、難儀などに同情して心を痛めること。 用例:虎寛本狂言・船渡婿「扨々(さてさて)夫(それ)は気のどくな事を致いて御ざる」 用例の出典@:浮世親仁形気(うきよおやじかたぎ) 浮世草紙。5巻。享保5年(1720)。八文字屋自笑(はちもんじやじしょう1666−1745)と江島其磧の合作。当時の父親像をまとめた15話の短編集。  用例の出典A:船渡婿(ふなわたしむこ) 狂言。各流。婿入りのみやげに酒樽を持参の婿は、途中の船の中で船頭に酒を飲まれてしまう。船頭が帰宅してみると、先程の男が自分の家の婿だったので、大切な髭をそって面会するがついに露顕する。
・木登り川立ち馬鹿がする(きのぼりかわだちばかがする) 木登りや川泳ぎのような危険なことは愚かな者がすることであるということ。
・木登り川渡り(きのぼりかわわたり) 危険な事の喩え。 用例:狂・鳴子遣子「総じて木登川渡、男の云はぬものは、あらがひ一大事の事なり」 用例の出典:鳴子遣子(なるこやるこ) 狂言。山に遊びに出掛けた二人の男が、鳥を追う道具を「鳴子」と呼ぶか「遣子」と呼ぶかで言い争う。二人は判定を茶屋の主人に委(ゆだ)ねる。「音が鳴るから鳴子、鹿などを余所へ遣るから遣子」と歌を詠み、双方の賭けの品を持ち逃げする。
・木登りは木で果てる(きのぼりはきではてる) 木登り上手の者は、木から落ちたりなどして死ぬことが多いということ。得意の技能のある者は却(かえ)ってその技能のために我が身を滅ぼすものであるという喩え。 類:●川立ちは川で果てる●泳ぎ上手は川で死ぬ●好く道より破る
・着の身着の儘(きのみきのまま)[=着た儘] 1.着たままで衣服を取り替えないこと。 類:●着の儘 2.着ている着物の他に何も持っていないこと。 用例:滑・膝栗毛−発端「びんぼう人のきさんじさ、きの身きたまま」
・木の実は本へ落つ(きのみはもとへおつ)
・気の病(きのやまい)[=煩(わずら)い] 精神の疲れなどから起こる病気の総称。 類:●気病み●乗り気薄
・気乗り薄(きのりうす) 1.気が進まないこと。ものごとをする気がないこと。 類:●気が乗らない 2.取引所で、人気が引き立たない市況。売買しようという気分が出ないこと。