−きを1(kiwo1)−
・軌を一にす(きをいつにす) 1.各地の車の両輪の幅を同一にするということで、世の中または国家が統一され、整っている様子を指す。 出典:「北史−崔鴻伝」 2.前の車が通った轍(わだち)と同じところを通る。転じて、同じ行き方をする、同じ立場を取る。 出典:北史(ほくし) 中国の正史、二十五史の一つ。100巻。唐の李延寿撰。顕慶4年(659)成立。北朝の魏・斉・周・隋の歴史を記す。父李大師の遺志を継ぎ南北朝の公正な歴史を目ざして執筆されたもの。詳密な記述で史料価値が高い。南史と対をなす。
・揆を一にする(きをいつにする)[=同じゅうする] やり方が同じである。また、道が同じである。 類:●軌を一にす
・気を入れる(きをいれる) 1.気を使う。気にする。心配する。 用例:浮・傾城歌三味線−一「気を入れずと寛(ゆっ)くりと遊ばしゃれ」 2.気が急く。焦る。 用例:浄・摂州合邦辻−下「早う、早うと気をいる娘」 3.気合いを入れる。元気付ける。4.やるぞという気になってものごとをする。 用例の出典:摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ) 浄瑠璃。時代物。2段。菅専助・若竹笛躬(ふえみ)作。安永2年(1773)大坂北堀江座初演。能「弱法師(よろぼし)」、説経節「愛護若」系統の作品の影響を受けたもの。河内の国守高安左衛門の後妻玉手御前が、継子俊徳丸を敵の手から守るため、わざと毒酒を飲ませるが、やがてみずからの命を絶って病いを本復させる筋。下の巻の切「合邦内の段」が有名。通称「合邦」。
・気を失う(きをうしなう) 1.しようとする意欲をなくす。 類:●気落ちがする●気を取り失う 用例:太平記−二八「此の城を夜討に落して、敵に気を失はせ」 2.意識をなくす。失神する。
・気を移す(きをうつす) 1.気を他の物や人に移す。気持ちを変える。 用例:十善法語−一一「居は気をうつし養は体をうつす」 2.心を向ける。 用例:浮・日本永代蔵−五「又大浦甚八といふ者は、小哥・小舞に気を移し」 用例の出典:十善法語(じゅうぜんほうご) 慈雲尊者飲光(おんこう)が十善戒の意味内容および功徳を、多くの典籍を引用しながら親しみ深く説いた法語。12巻。安永4年(1775)成立。
・気を置く(きをおく) 1.相手の気持ちを気遣う。遠慮する。2.気を休める。ほっとする。 用例:洒・雑文穿袋「此蔵気を置く間なく段々と書つけながら」 用例の出典:雑文穿袋(ざつもんせってい) 洒落本。朱楽管江。1冊。・・・調査中。
・気を落とす(きをおとす) 元気をなくす。失望する。気落ちする。 用例:浄・双生隅田川−三「武国主従気をおとし、人心地も無き所に」 用例の出典:双生隅田川(ふたごすみだがわ) 浄瑠璃。近松門左衛門。享保5年(1720)。謡曲「隅田川」をお家騒動風にアレンジ。さらわれた吉田家の若君・梅若と松若の双子兄弟を中心に、その行方を追って展開<近松門左衛門でござーい!>
・気を兼ねる(きをかねる) 他人に対して気を遣うこと。 類:●気兼ねをする 用例:評判・色道大鏡−一四「夫の機嫌をはかり、姑(しうとめ)の気を兼ね」
・気を利かせる(きをきかせる)[=利かす] 相手の立場や周囲の状況に応じてそれに相応しいように心を働かせる。気が利くようにする。 例:「気を利かせて座を外す」
・気を挫く(きをくじく) 気力をなくさせる。意気込みを失わせる。 類:●意気消沈させる
・気を砕く(きをくだく) 色々と心配する。 類:●心を砕く
・気を配る(きをくばる) 注意を向ける。気を付ける。 類:●気を使う 例:「辺りに気を配る」
・驥をして鼠を捕らえしむ(きをしてそをとらえしむ) 名馬に鼠を捕らせるようなことをする。優れた人物を、つまらぬ任務に就(つ)かせること。 類:●牛驥同 出典:「荘子−秋水」「騏驥[馬+華][馬+留]、一日而馳千里、捕鼠不如狸[獣+生]、言殊技也」 ★「驥」は、一日に千里を走るという名馬のこと。
・気を嗜む(きをたしなむ) 「嗜む」は心の準備をするという意味。固く覚悟する。強く心掛ける。 用例:浄・淀鯉出世滝徳−下「そなたも死にゃ、おれも死なふと、わかい同士はきをたしなみ」
・気を散らす(きをちらす) 1.集中しなければならない気持ちを、他のことに向けさせる。注意を逸(そ)らせる。 例:「説教している時に気が散らすな」 2.憂鬱な気持ちなどを紛(まぎ)らわす。 例:「TVゲームをして気を散らす」
・気を遣う(きをつかう)[=使う] 1.あれこれ心遣いをする。 類:●気を配る 2.心配する。
・気を尽くす(きをつくす) 1.精を出す。物に凝る。 類:●趣向を凝らす 用例:随・戴恩記−上「後生のわれらを導んために、そくばくの気をつくせる、古賢の心ざし崇めて猶あまりあり」 2.気苦労をする。気力を使い果たす。気疲れする。 用例:浮・世間胸算用−一「一通一文づつにて大晦日から大晦日迄書くらして同じ事に気をつくし」
・木を接げば花は盗めるが血は盗まれぬ(きをつげばはなはぬすめるがちはぬすまれぬ) 接ぎ木をすれば、欲しい花と同じ花を咲かすことはできるが、血統は人の力ではどうしようもない。親から受け継ぐ素質や才能は、他人が真似しようとしてもできないものである。 類:●物種は盗まれず●瓜の蔓には茄子は生らぬ
・気を付け(きをつけ) 〔連語〕 1.元軍隊用語で、直立不動の姿勢を取らせる時に掛ける号令。足を揃(そろ)えて真っ直ぐ立ち、顔を正面に向けよというもの。 反:■休め 2.名詞として、その姿勢。 例:「気を付けをする」 ★英語のAttention!の直訳。
・気を付ける(きをつける) 1.気付かせる。思い出させる。 用例:太平記−三二「中中なる軍して敵に気を著(つケ)ては叶まじとて」 2.注意力を働かせる。 用例:浮・好色貝合−上「気をつけてのあひさつ」 3.意識を回復させる。正気にさせる。 用例:浄・源平布引滝−三「薬を用ひ身を温め、様々、いたはり気を付くれば」 4.元気を取り戻す。 類:●景気を付ける 用例:太平記−三〇「憖(なまじひ)なる事為出して敵に気を著ける事よと」
・気を詰める(きをつめる) 1.精神を集中する。一心になる。 用例:太平記−七「水ふせぎける兵共、夜毎に機(キ)をつめて、今や今やと待懸けけるが」 2.気兼ねをする。遠慮をする。気詰まりする。 類:●気を兼ねる 用例:浄・淀鯉出世滝徳−上「わかいだんなのきをつめさせ、わづらはせてはならぬと」