−きを2(kiwo2)−
・気を取られる(きをとられる) 1.魂を奪われる。 類:●気取(けど)られる 2.注意を奪われる。 用例:人情・閑情末摘花−初「学問に気(キ)をとられてお出なさるから聞えないのだ」
・気を取り直す(きをとりなおす) 失意の状態から脱け出る。思い直して元気になる。 用例:太平記−三〇「其に依るべからずと機(キ)を取直(とりナヲ)して」
・気を取る(きをとる) 1.相手の注意を向けさせる。 類:●気を引く 用例:浮・懐硯−一「其隙に逃のび申べしと存、追手の者の気を取候と」 2.気に入るように振舞う。機嫌を取る。 用例:天草本伊曾保「シュジンノqiuo
toru(キヲトル)モノデゴザルホドニ」 3.気に入る。好都合である。 用例:滑・和合人−初「口取といふやつは、気をとったやつだよ」 用例の出典:懐硯(ふところすずり)
浮世草紙。井原西鶴。貞享4年(1687)。・・・調査中。
・気を抜く(きをぬく) 1.びっくりさせる。肝を抜く。 用例:洒・辰巳之園「からくりの太鼓に気をぬかれて」 2.疲れた神経を解(ほぐ)す。息抜きをする。 例:「気を抜くすきに盗られる」
・気を呑む(きをのむ) 1.じっと息を殺す。 類:●固唾(かたず)を飲む 用例:太平記‐三三「御所中の男女気を呑(ノ)み」2.気持ちの上で相手を威圧する。「相手の気を呑んで掛かる」。多くは「気を呑まれる」の形で用い、気持ちの上で相手の勢いに威圧される、思いがけない様子にあっけにとられる、の意にいう。 用例:太平記−一三「源氏は若干の大勢と聞ゆれば、待軍して敵に気を呑(ノマ)れては叶はじ」 3.苦しい状況になる。
・気を吐く(きをはく) 威勢の良い言葉を発する。または、意気を示す。 例:「一人気を吐く」
・気を晴らす(きをはらす) 塞(ふさ)いだ気持ちを発散する。憂いを晴らす。
・気を張る(きをはる) 1.心を緊張させる。気持ちを引き締める。 用例:浮・世間胸算用−三「旦那お出といはるるまでの外聞に無用の気をはりける」 2.奮発する。 類:●気張る 用例:太平記−一七「各機(キ)を張(ハリ)心を専(もっぱら)にして攻め戦ふ」
・気を引く(きをひく) それとなく相手の気持ちを探(さぐ)る。誘いを掛けて相手の心を引く。 類:●水を向ける 用例:洒・契情買虎之巻−五「そなたまでわたしが気を引いてみるのかへ」 用例の出典:契情買虎之巻(けいせいがいとらのまき) 洒落本。田螺(たにし)金魚。安永7年(1778)刊。一冊。吉原の遊女瀬川は亡夫幸次郎によく似た五郷と恋仲になるが、周囲の邪魔にあって果たせず、ついには男児を残して死ぬ。遊女と客の悲劇的な姿を描き、後世人情本の祖とされる。
・気を触る(きをふる) 1.注意を他方に向ける。 類:●気を取られる 用例:浄・心中天の網島−橋尽し「よしないことに気をふれ、さいごの念をみださず共」 2.気に障る。怒る。 用例:天理本狂言・酒講式「いけん申たらば、気をふらるる事が御ざらうほどに」 用例の出典:酒講式(さけこうのしき) 狂言。和泉流。大酒飲みの住持が、意見に来た在所の人に対し、酒を飲みながら酒の功徳を説き、はては酔って寝てしまい、在所の人たちを怒らせる。 参考:天理本狂言・狂言六義(てんりぼんきょうげん・きょうげんりくぎ) 和泉流の狂言台本。七代目宗家の1624年ごろに、和泉流の最も基本的な狂言六義(台本)が顕され、九代目宗家によって伝書として、もっとも体裁の整った六義が(承応から元祿の間)完成された。
・気を回す(きをまわす) 色々と余計なところまで心を働かせる。邪推する。当て推量する。 用例:評判・色道大鏡−五「さては物に気をまはすか」
・木を見て森を見ず(きをみてもりをみず) 一本一本の木に目を奪われて、森全体を見ないこと。ものごとの些末(さまつ)な一面に拘(こだわ)り過ぎて、本質や全体を捉(とら)えられないことの喩え。 類:●木を数えて林を忘れる●鹿を逐って山を見ず
・義を見てせざるは勇無きなり(ぎをみてせざるはゆうなきなり) 正義は人の行なうべきものであるが、これを知りながら実行しないのは勇気がない証拠である。 出典:「論語−為政」「子曰、非其鬼而祭之、諂也、見義不為、無勇也」
・気を持たす(きをもたす) それとなく唆(そそのか)して、相手にやる気を起こさせる。
・気を揉む(きをもむ)[=揉み上げる] あれこれ心配する。 類:●やきもきする 用例:浄・浦島年代記−一「女房達は気をもみ上げ、さっても手ばしかいお働き」
・気を許す(きをゆるす) 警戒心や緊張をゆるめ、相手を信用する。また、油断するという意味でも使う。 用例:浮・日本永代蔵−六「空誓文をたつれば是に気をゆるし」
・気を能くする(きをよくする) 気持ちを快適にする。また、状況が都合良く行くなどして調子付く。 例:「評判に気を能くする」
・気を悪くする(きをわるくする) 感情を傷付ける。嫌な気持ちになる。 用例:洒・玉の嚶−三「『とんだにっしょくだ』と両人気をわるくして下へおりる」 用例の出典:玉の嚶(たまのたずな?) 洒落本。・・・調査中。