−こい(koi)−
・恋教え鳥(こいおしえどり)・恋知り鳥 「鶺鴒(せきれい)」のこと。 神話:「古事記」 伊邪那岐(いざなぎ)、伊邪那美(いざなみ)の二神がこの鳥の所作から交合の方法を学んだという。
・鯉が踊れば泥鰌も踊る(こいがおどればどじょうもおどる) 自分の身の程も弁(わきま)えずに、優れた人の真似(まね)をしても上手く行くものではないという喩え。 類:●鵜の真似をする烏●西施の顰に効う
・恋風(こいかぜ) 恋の切なさが身に染み渡ること。風に喩えて言った言葉。
・鯉口を切る(こいぐちをきる)[=寛(くつろ)ぐ] いつでも刀を抜けるように鯉口を緩(ゆる)める。抜刀の準備の態勢を取る。 参考:鯉口(こいぐち) 形が、鯉の口を開いた形状に似ているところから、刀剣の鞘(さや)の口のこと。
・恋に上下の隔てなし(こいのじょうげにへだてなし)[=差別なし] 恋愛に身分の上下の区別はないということ。
・恋の重荷(こいのおもに) 恋愛のために募(つの)る堪え難い思いを、重い荷を背負う苦しさにたとえた語。 用例:謡曲・恋重荷「名もことわりや恋の重荷」 用例の出典:恋重荷(こいのおもに) 謡曲。四番目物。観世流。世阿弥。古名「重荷」。庭守の老人の懸想を知った女御はこれをあきらめさせるため、重荷を持って庭を歩いたら姿を見せようと伝える。老人は喜んだが重荷を持てず落胆して死ぬ。のち亡霊となって現われ、女御の守りとなることを誓う。古曲「綾の太鼓」の改作。 人物:世阿弥(ぜあみ) 室町前期の能役者、謡曲作者。観世元清。観阿弥清次の子。貞治2年(1363)〜嘉吉3年(1443)。幼名藤若丸。通称三郎。父の跡を継いで観世座を統率。足利義満の後援を得て栄えたが、後年、子の元雅に死なれ、佐渡島へ配流されるなど不遇のうちに没した。卓絶した曲、能楽論を多く残し、猿楽を大成。舞・歌を能の主要素とし、稽古によって妙花風に達した人が「闌(た)けたる位」をもって幽玄美を現出するのが能芸美の極地であるとした。作品「老松(おいまつ)」「高砂」「井筒」「砧(きぬた)」など、能楽論「風姿花伝」「花鏡」「九位」「申楽談儀」など。
・恋の敵(こいのかたき)[=仇(あだ)] 自分の恋の邪魔をする者。恋の競争相手。
・恋の煙(こいのけぶり) 恋い焦がれる情を、物が焦げて煙るのに喩えた言葉。 用例:源氏−篝火「かがり火に立ちそふこひのけぶりこそ世にはたえせぬほのほなりけり」
・恋の坂(こいのさか) 恋の気持ちがだんだんと高まっていくことを坂にたとえた語。 用例:浄・傾城反魂香−上「名を遠山と呼ばれしも、人に登れの恋の坂」
・恋の鞘当て(こいのさやあて) 恋敵(こいがたき)同士が争うこと。 類:●鞘当て ★遊里で一人の傾城(けいせい)をめぐって二人の武士が鞘当する歌舞伎の題材から<国語大辞典(小)>
・恋の関守(こいのせきもり) 恋を妨げる者を、関所の番人に喩えた言葉。 用例:菟玖波集−恋・上「誰がうきゆゑぞ恋のせき守」 類:●恋の関
・鯉の滝登り(こいのたきのぼり) 1.鯉が滝を登ること。2.人が立身出世すること。 参考:登竜門 故事:「後漢書−党錮伝・李膺」 黄河の急流にある竜門という滝を登ろうと、多くの魚が試みたが、ほんの僅かな者だけが登り、竜に化すことができた。 ★ここでの「滝」は、早瀬のこと。竜のような形をした急流。 3.長方形の木箱の一面に滝の図を描き、中央に一筋の穴を空け、その穴から練物の鯉が上下するように仕掛けた玩具(おもちゃ)。
・恋の端(こいのつま) 恋の手掛かり。恋の切っ掛け。 用例:古今六帖「つれづれと袖のみひぢて春の日のながめはこひのつまにぞ有ける」
・恋の峠(こいのとうげ) 恋の情熱が頂点に達したということ。
・恋の初風(こいのはつかぜ) 初恋の心。人を恋い初(そ)める心。
・鯉の一跳ね(こいのひとはね) 1.鯉は、捕らえられると一度だけ強く跳ね、後はじたばたせずじっとしていることから、度胸が良く潔(いさぎよ)いことの喩え。 類:●鯉の水離れ 2.諦(あきら)めが早いことの喩え。
・恋の淵(こいのふち) 恋心が淵のように深いこと。 用例:謡曲・松風「三瀬川絶えぬ涙の憂き瀬にも、乱るる恋の淵はありけり」
・鯉の水離れ(こいのみずばなれ) 鯉は水揚げされても息長く生きているが、俎板(まないた)に乗せられてもじたばたしないことから、度胸が良く潔(いさぎよ)いことの喩え。 類:●鯉の一跳ね ★鯉は、潔い魚として武士階級に尊ばれた。
・恋の奴(こいのやっこ) 恋に夢中になって心を奪われること。恋の虜(とりこ)になっていること。 用例:謡曲・恋重荷「この身は軽し徒らに、恋の奴になり果てて」
・恋の病(こいのやまい) 相手を恋い慕う気持ちが募(つの)るあまりに、心身が病気に罹(かか)ったような状態になること。 類:●恋患(わずら)い
・恋の病に薬なし(こいのやまいにくすりなし) 恋煩(わずら)いをするくらいに誰かに夢中になってしまったら、それを治(なお)す薬はない。自然に治るのを待つ以外手立てはないということ。 類:●惚れた病に薬なし●恋は盲目
・恋の山には孔子の倒れ(こいのやまにはくじのたおれ) 恋のためには、聖人すら過失を犯すことがある。
・恋の闇(しのやみ)[=闇路] 恋のために理性を失った状態。闇に喩えて言った言葉。
・恋は曲者(こいはくせもの) 恋のために、心が乱れ、思い掛けないことを仕出かしてしまうということ。 用例:謡曲・花月「今の世までも絶えせぬものは、恋といへる曲者、げに恋は曲者」 用例の出典:花月(かげつ) 謡曲。四番目物。各流。作者未詳。京都清水寺での父子再会の物語。シテの花月という少年の演ずる雑芸が主眼となる。
・恋は思案の外(こいはしあんのほか)
・恋はし勝ち(こいはしがち) 恋は積極的に仕掛けた者が勝ちで、競争相手への遠慮は無用である。
・恋は盲目(こいはもうもく) 英Love is blindの訳。恋は人を夢中にさせ、理性や常識を失わせるものだ。 類:●惚れた病に薬なし●縁の目には霧が降る
・恋は闇(こいはやみ) 恋は人の理性を失わせるということ。また、恋の逢瀬(おうせ)には闇夜が相応しいという意味でも使うことがある。