−こころ(な)(kokoro5)−
・心為し(こころなし)・心成し 自分の心だけでそう思うこと。気のせいか。 類:●思い為し 例:「心為しか、妻の顔がやつれて見える」
・心に鬼を作る(こころにおにをつくる) 1.恐れて無用な想像をする。 類:●疑心暗鬼 2.後ろ暗く思って悩む。心に疚(やま)しさを覚える。 類:●心の鬼が身を責める
・心に及ぶ(こころにおよぶ) 予想や想像がつく範囲内にある。思い及ぶ。 用例:源氏−帚木「心にをよばず、いとゆかしき事もなしや」 ★下に打消の語を伴うことが多い<国語大辞典(小)>
・心に垣をせよ(こころにかきをせよ) 油断をしないで用心せよ。常に用心を怠るなという戒(いまし)め。
・心に笠着て暮らせ(こころにかさきてくらせ) 笠を被(かぶ)ると上が見えないところから、上を見ないで、足(た)ることを知れ。高望みをせず、分(ぶん)相応に暮らしなさいということ。 類:●上を見ればキリがない
・心憎い(こころにくい) 1.はっきりしないものに優れた資質を感じ、心惹かれ、近付き、知りたく思う気持ちを持つ。@人柄や態度、美的な感覚などに、上品な深みを感じ、心惹かれる。 類:●奥床しい 用例:源氏−東屋「人がらはいとやむごとなく、おぼえ心にくくおはする君なりけり」 A情緒が感じられる。風情(ふぜい)が深く、心惹かれるようである。 用例:栄花−日蔭のかづら「よろづの事、奥深くこころにくき御あたりの有様なれば」 B間接的な気配を通して、それに心惹かれる。不審である 類:●怪しい 用例:夜の寝覚−一「御簾のうち心にくくうちそよめきて」 C奥底が知れず、侮りがたい。 2.あまりに優れていて憎らしくさえ感じる。欠点がなく、むしろ妬(ねた)ましさを感じるほどに優れている。憎らしいほど完璧である。 礼:「心にくい応対ぶり」 用例の出典@:栄花物語(えいがものがたり) 平安時代の歴史物語。40巻。作者は上編は赤染衛門、下編は出羽の弁とするなど諸説がある。上編30巻は万寿5年(1028)以降長元7年(1034)以前、下編10巻は寛治6年(1092)以降嘉承2年(1107)以前の成立とされる。宇多天皇の代から堀河天皇の寛治6年まで、15代約200年間の歴史を編年体で記述。藤原道長、頼通の栄華を中心に、宮廷、貴族に関するできごとをかな書きで物語風に記す。「世継」・「世継物語」。 用例の出典A:夜の寝覚(よるのねざめ) 平安中期の物語。現存本は5巻または3巻。菅原孝標(たかすえ)の女の作と伝える。平安中期に成立。女主人公寝覚の女君(源氏の太政大臣の次女)と主人公中納言の義兄妹間の悲恋を中心に、女君の数奇な運命を描く。「源氏物語」の宇治十帖の影響が強い。「夜半の寝覚」・「寝覚」とも。
・心に焦がす(こころにこがす) 密かに思い焦がれる。人知れず思い乱れる。 類:●心に忍ぶ
・心に錠を下ろす(こころにじょうをおろす) 1.用心する。気を許さない。2.心を変えまいと堅く決心する。心に決める。
・心に剣を含む(こころにつるぎをふくむ) 相手に危害を加えようという気持ちを持つ。 類:●害心を抱く
・心に蓋なし(こころにふたなし) 心に包み隠すことがない。隠しだての心がない。
・心にもない(こころにもない)[=に〜] 1.身に覚えがない。思いも寄らない。不本意だ。 用例:浮・西鶴織留−三「心にもなき事にうたがはれぬ」 2.本心ではない。思ってもいない。 類:●心にもあらず 反:■心にあり 例:「心にもないお世辞をいう」 用例の出典:西鶴織留(さいかくおりどめ) 浮世草子。6巻。井原西鶴の第二遺稿集。北条団水編。元禄7年(1694)刊。成稿は、「本朝町人鑑」の内容を持つ巻1・2が元禄元年(1688)ごろ、巻3〜6の「世の人心」が元禄2、3年ごろか。巻1・2は「日本永代蔵」を直接受け継ぎ、当時の経済状況の中で生まれる町人層の悲喜劇を小説的に描くが、巻3〜6はより広い視野から町人の様々な生きざまを随想的に把握している。「日本永代蔵」から「世間胸算用」への過程を示す注目すべき作品。