−くち(な)(kuti5)−
・口尚乳臭し(くちなおちくさし・ちちくさし)[=乳臭(にゅうしゅう)あり] 口がまだ乳臭いということで、年がまだ若くて経験不足である。 類:●口尚乳臭●嘴(くちばし)が黄色い●青二才 出典:「漢書−高帝紀」「是口尚乳臭、不能当韓信」
・口に合う(くちにあう) 飲食物が、好みと合致する。好きな味付けである。 例:「お口に合いますか」
・口に合わない(くちにあわない) 食べ物や飲み物が、自分の好みに合わない。 例:「妻の作る料理はどうも口に合わない」
・口にする(くちにする) 1.口に出して言う。喋(しゃべ)る。噂する。また、話題にする。 例:「そんなことは口にするべきじゃない」 2.口に入れる。口に咥(くわ)える。食べる。味わう。 例:「口にしたことのない食べ物」
・口に地代は出ない(くちにちだいはでない)[=税は掛からぬ・年貢(ねんぐ)はいらぬ] どんなに勝手なことを言っても、それに地代(税)が掛かる訳ではないという意味で、身勝手、好き勝手な放言をすること。
・口に絶つ(くちにたつ) 1.あることを、決して話さない。喋らない。2.ある特定の物を決して飲食しない。 類:●断ち物をする
・口に手を当てる(くちにてをあてる) 口を手で隠してひそひそ話すということから、陰口を利く。陰口を言って嘲(あざ)笑う。
・口に土用が入る(くちにどようがはいる) 江戸時代、夏の土用には仕事を休む職業が多かったところから、口が休みになる。食物が口に入ったので、お喋りが途絶える。
・口に乗る(くちにのる) 1.人々の話題の種になる。世の中に広く知られる。評判になる。 類:●人口に膾炙(かいしゃ)す 2.相手の言葉に騙されて言い成りになる。 類:●口車に乗る
・口に入る物なら按摩の笛でも(くちにはいるものならあんまのふえでも) 意地汚くなんでも食べる。
・口に針あり(くちにはりあり)[=棘(とげ)あり] 言葉が刺々しく、皮肉や悪意が感じられる。
・口に任せる(くちにまかせる) 深く考えないで、思い付くままに喋る。類:●口から出任せに言う
・口に蜜あり、腹に剣あり(くちにみつあり、はらにけんあり) 口先では優しいことを言いながら、心の中は陰険なこと。 出典:「唐書−李林甫伝」「世謂林甫、口有蜜腹有剣」 ★中国、唐の玄宗の時の宰相・李林甫(りりんぽ)の人柄を述べた言葉。
・口の子(くちのこ) 売買などの仲介料。また、利息。 類:●口銭(こうせん)
・口の下から(くちのしたから) 主に、「〜という口の下から」の形で使われる。言い終わるか終わらないうちに。 類:●舌の根も乾かぬうち
・口の虎は身を破る(くちのとらはみをやぶる)[=食(は)む] 迂闊(うかつ)なことを言うと身を破滅させてしまう。言葉は慎むべきであるという教え。
・口の端に掛かる(くちのはにかかる) 人々の話題の種にされる。噂をされる。 類:●口に掛かる●口に上る
・愚痴の闇(ぐちのやみ) 愚かゆえにものごとの道理が分からないことを、闇に喩えて言う言葉。
・口の世(くちのよ) やっと食べるだけで生活する。また、やっと食べるだけの僅かな手当て。 用例:浮・日本永代蔵−五「やうやう口の世で抱へられ」 用例の出典:日本永代蔵(にっぽんえいたいぐら) 浮世草子。6巻。井原西鶴。元禄元年(1688)刊。副題は大福新長者教。各巻5章。西鶴町人物の第一作。富を獲得する商人や破産する商人など、様々な町人群像を描く。話題は諸国に渡り、事実と虚構を織り交ぜて金銭を巡る人の心のありようや、町人の経済生活の裏面などを暢達な文体で活写している。