−くち(を)(kutiwo)−
・口を開かす(くちをあかす) 相手にものを言わせる。他の人に喋らせる。 用例:無名抄「くちあかすべくもなく難ぜられければ」 用例の出典:無名抄(むみょうしょう) 鎌倉初期の歌学書。2巻。鴨長明著。建暦元年(1211)頃成立。和歌の風体や表現、詠歌の心得、歌人の逸話や思い出などを記した、80段ばかりから成る随筆風の書。無名秘抄、長明和歌物語とも。
・口を合わせる(くちをあわせる) 1.相手の話に調子を合わせる。 類:●話を合わせる 2.言うことが違わないように予め話を一致させておく。言葉を示し合わす。 類:●口裏を合わせる
・口を掛ける(くちをかける) 1.前もって先方に事を通じておく。予め申し入れておく。 類:●渡りを付ける 2.芸娼妓などを席に呼び出す。
・口を藉る(くちをかる) 口実を作る。託(かこつ)ける。藉口(しゃこう)する。 類:●口に敷く
・口を箝す(くちをかんす) 1.口を噤(つぐ)んで喋らない。 類:●口を噤む 2.口を塞ぐ。言いたいうことがあっても言えないようにする。
・口を利く(くちをきく) 1.物を言う。話をする。 例:「生意気な口を利く」 2.巧みに言う。口が達者である。大言壮語する。3.人々の間で重んぜられる。 類:●幅が利く 4.関係が巧くいくよう取り持つ。第三者が話をする。調停する。仲立ちをする。
・口を切る(くちをきる) 1.まだ開いていない樽や瓶や箱などの蓋や詮を開ける。2.話をし始める。多くの人たちの中で最初に発言する。 類:●口火を切る 3.遊女などと前もって遊興の約束をしておく。江戸深川の遊里で言った。4.馬を歩かせ始めるために、手綱を緩(ゆる)める。
・口を極める(くちをきわめる) ありったけの言葉を尽くす。あらゆる言い方で述べる。 例:「口を極めて賞める」
・口を消す(くちをけす) 1.他言させないようにする。2.前にした証言を取り消す。
・愚痴を零す(ぐちをこぼす) 言っても益のないことを言う。
・口を過ごす(くちをすごす) 1.暮らしを立ててゆく。生活する。 類:●口を過ぎる 2.余計なことを言う。 類:●言い過ごす●口が過ぎる
・口を酸っぱくする(くちをすっぱくする) 同じことを何度も繰り返して言う。嫌になるほど何回も同じ事を言う。 類:●口を酸(す)くする
・口を滑らす(くちをすべらす)[=滑らせる] うっかりして、言ってはならないことを言ってしまう。
・口を窄める(くちをすぼめる)[=つぼめる] 遜(へりくだ)った物言いをする。言い訳やお世辞を言う。
・口を添える(くちをそえる) 1.ちょっとひと口飲む。付け差しをする場合などにいう。 参考:付け差し(つけさし) 飲みさしの杯をそのまま相手に与えること。親愛の気持を表すものとされ、特に、遊里などで遊女が情の深さを示すしぐさとされた。 2.人の言うことなどに、端(はた)から助成の言葉を足して取り成す。 類:●口添えをする
・口を揃える(くちをそろえる) 1.二人以上の人が同時に同じことを言う。異口同音に言う。2.示し合わせて同じことを言う。 類:●口を合わせる
・口を出す(くちをだす) 他人のすることに対して、あれこれ言う。 類:●嘴を容れる
・口を垂る(くちをたる) 卑下した物言いをする。下手(したて)に出て言う。 類:●言葉を垂れる
・口を衝いて出る(くちをついてでる) 次から次へと自然に言葉が出てくる。
・口を噤む(くちをつぐむ) 口を閉めて開かない。黙る。 類:●口を閉ざす
・口を尖らす(くちをとがらす)[=尖らせる] 唇を前に突きだして尖らせる。怒ったり、言い争ったりするときなどの口付き。また、不平不満を表わす顔付き。
・口を閉ざす(くちをとざす) 黙る。沈黙を守る。一切喋(しゃべ)らない。 例:「貝のように口を閉ざす」
・口を拭う(くちをぬぐう)[=拭(ふ)く] 盗み食いをした後、口を拭いて素知らぬ顔をするということ。何か悪いことや拙(まず)いことをしておきながら、していない振りをする。また、知っていながら知らない振りをする。
・口を濡らす(くちをぬらす) 1.少しばかり飲み食いする。口の中を潤(うるお)す。2.⇒口を糊(のり)す
・口を糊す(くちをのりす)[=餬(こ)す] 1.「糊す」は粥(かゆ)を啜(すす)ること。ぎりぎりの暮らしの喩え。貧しい生活を送ること。 類:●糊口を凌ぐ●露命を繋ぐ●一箪の食一瓢の飲●手鍋を提げる 2.食客や居候(いそうろう)になる。
・口を挿む(くちをはさむ)・挟む[=入れる] 人が話しているところに横から何かを言う。
・口を開く(くちをひらく) 喋(しゃべ)り始める。話し始める。発言する。 例:「口を開けば姑(しゅうとめ)の悪口ばかりだ」
・口を封じる(くちをふうじる) 1.喋(しゃべ)らないようにさせる。口止めする。 類:●口を塞(ふさ)ぐ 例:「脅迫して口を封じる」 2.殺す。 例:「そこまで知られては口を封じるしかない」
・口を塞ぐ(くちをふさぐ) 物を言わせないようにする。悪事や秘密などを喋らせないようにする。金品を与えて喋ることを封じる。
・口を守ること瓶の如くす(くちをまもることかめのごとくす) 瓶に蓋(ふた)をして紐(ひも)で締めるように、口もしっかりと閉じなさいということ。 1.言葉は慎(つつし)むべきであるという戒(いまし)め。 出典:「宋名臣言行録−富弼」「守口如瓶、防意如城」 ★富弼を評した劉器(りゅうき)の言葉。 2.秘密を漏(も)らしてはならない。
・口を毟る(くちをむしる) 誘いを掛けて尋ねる。問い落とそうとする。 類:●鎌を掛ける
・口を寄す(くちをよす) 巫女(みこ)が霊魂を招いて自分に乗り移らせ、その口から思いを述べさせる。 類:●口寄せをする
・口を割る(くちをわる) 自白する。