−めん(men)−
・面がある(めんがある) 盗人の隠語。面識がある。互いに顔を知っている。
・面が通る(めんがとおる) 顔が通用するという意味のやくざ仲間の隠語。顔が広く知られていて勢力がある。
・面が割れる(めんがわれる) 顔が知られる。また、面通しの結果、その人であると特定できる。
・面食い(めんくい) 顔立ちの美しい女ばかりを選び好むこと。また、その人。 類:●器量好み
・面食らう(めんくらう) 1.突然のことで、慌てふためく。驚き、まご付く。狼狽する。 例:「不意の来訪ですっかり面くらった」 ★「とちめんぼう(橡麺棒)」を食らうの意という<国語大辞典(小)> ★「橡麺棒(栃麺棒)」は、「とちめく坊」からの転とされ、うろたえる者という意味。 2.凧(たこ)が空中で舞い狂う。〔随・嬉遊笑覧〕 出典:嬉遊笑覧(きゆうしょうらん) 随筆。12巻、付録1巻。喜多村信節(のぶよ)ら。文政13年(1830)。江戸時代の風俗習慣、歌舞音曲などを中心に、諸書から抄録して私見を加えたもの。風俗の百科事典的なもの。
・面向不背(めんこうふはい) 前後どちらから見ても申し分がないこと。形が整っていて、非常に美しいこと。 例:「面向不背の玉」
・面従後言(めんじゅうこうげん) 面前では媚(こ)び諂(へつら)って服従し、陰であれこれ論(あげつら)うこと。 類:●面従腹背●面従腹誹 出典:「書経−益稷」 「予違汝弼、汝無面従退有後言」 ★中国古代の伝説上の聖天子舜(しゅん)が、臣の禹(う)に説いた言葉。 
・面従腹背(めんじゅうふくはい) 上辺(うわべ)では服従するように見せ掛け、内心では反抗すること。
・面従腹誹(めんじゅうふくひ) 上辺では従うように見せ掛け、内心では謗(そし)ること。
・面牆の譏り(めんしょうのそしり) 「面牆」は、垣に面していることで、見識が狭いこと。無知・無学に対する非難の言葉。 類:●無学の譏り 出典:「書経―周官」
・面張牛皮(めんちょうぎゅうひ) 鉄面皮なこと。厚かましいこと。 類:●鉄面皮●面の皮が厚い●厚顔無恥
・面倒臭い(めんどうくさい・めんどくさい) 手数が掛かって煩(わずら)わしい。とても厄介(やっかい)だ。 例:「返事を書くのが面倒臭い」 ★接尾語の「臭い」は、そのような傾向がある・そんなふうに思える・それに似ている・〜らしいなどの意。 例:「胡散臭い」「辛気臭い」「洒落(しゃら)臭い」「いんちき臭い」
・面倒を掛ける(めんどうをかける) 手間が掛かることをして貰う。余計な手間を掛けさせる。 類:●世話になる
・面倒を見る(めんどうをみる) 人の世話をする。手伝う。助ける。
・面と向かう(めんとむかう) 相手と正面から顔を合わせる。直接に相手と向かい合う。 例:「面と向かって悪口を言う」
・雌鶏歌えば家亡ぶ(めんどりうたえばいえほろぶ) 妻が夫に代わって権勢を揮(ふる)うようになると、夫の権威が保てなくなり、遂には家が滅ぶということの喩え。 類:●騒(わわ)しい女は夫を食う ★雌鳥が雄鶏に先んじて朝の時を告げるのは不吉な兆しであるといわれるところから<国語大辞典(小)>
・雌鶏勧めて雄鶏時を作る(めんどりすすめておんどりときをつくる)[=に突突かれて時を歌う] 夫が妻の言いなりになることの喩え。
・面皮が厚い(めんぴがあつい) 厚かましい。 類:●面の皮が厚い
・面皮を欠く(めんぴをかく)[=失う] 評判を落とす。世間の人に合わせる顔をなくす。 類:●面目を失う 用例:金色夜叉「座にも堪ふべからざるばかりの面皮を欠かされたり」
・面皮を剥ぐ(めんぴをはぐ) 厚かましく知らぬ振りを決め込んでいる者などの本性を暴(あば)く。厚かましい者を辱(はずかし)しめる。 類:●面の皮を剥(む)く
・面壁九年(めんぺきくねん) ものごとを根気よく続けることの喩え。 故事:禅宗の始祖、達磨(だるま)が嵩山(すうざん)の少林寺で壁に向かって9年間、終日坐禅し続けて悟りを開いた。
・面目が立つ(めんぼくがたつ) 名誉が保たれる。 類:●顔が立つ●面(おもて)が立つ
・面目が無い(めんぼくがない) 恥ずかしくて合わせる顔がない。世間に顔向けができないほど恥かしい。 類:●合わす顔がない●決まりが悪い
・面目次第も無い(めんぼくしだいもない) 「面目ない」を強調した言葉。まことに恥ずかしくて、合わせる顔がない。まことに面目ない。
・面目玉を踏み潰す(めんぼくだまをふみつぶす) 評判を落とす。世間の人に合わせる顔をなくす。 類:●面目を失う
・面目ない(めんぼくない) 1.恥ずかしくて合わせる顔がない。世間に顔向けができないほど恥かしい。 類:●合わす顔がない●決まりが悪い●汗顔の至り 用例:源氏−蓬生「わか御ためめむぼくなければ、わたり給事はなし」 2.申し訳ない。
・面目丸潰れ(めんぼくまるつぶれ) 酷(ひど)く名誉を傷付けられる。
・面目を失う(めんぼくをうしなう) 1.名誉を傷付けられる。自分の不手際によって世評を悪くする。恥を掻く。体面を損なう。 類:●面目を潰す●面目を灰にまぶす●名を腐す●体面を汚す 2.処罰する。罷免(ひめん)する。
・面目を潰す(めんぼくをつぶす) 名誉を傷付けられる。 類:●顔を潰す●顔に泥を塗る●面目を失う
・面目を施す(めんぼくをほどこす) 1.誉(ほま)れを得る。世間の評判を高める。2.体面を損(そこな)わずに済む。 例:「どうにか面目を施すことが出来た」
・面々の蜂を払う(めんめんのはちをはらう) 他人のことをあれこれ言う前に、まず自分の欠点を反省しなければいけない。他人のことを構うより自分を省みよ、という戒(いまし)め。
・面々の楊貴妃(めんめんのようきひ) 1.男がそれぞれ自分の妻や愛人を、楊貴妃のような美人だと思い込むこと。2.人にはそれぞれ好みがあり、好きになると欠点も目に付かず、美しく見えるということ。 類:●蓼食う虫も好き好き●惚れた目には痘痕もえくぼ
・綿々を絶たずんば蔓々を若何せん(めんめんをたたずんばまんまんをいかんせん) 災いは芽のうちに摘み取らなければ、蔓延(はびこ)ってしまって、除去することができなくなる。 出典:「戦国策−魏策」
・面目一新(めんもくいっしん) 《四熟》 世間の評判が一新して、それまでとは違う高い評価を得ること。また、世間の評判が良くなるように、外見や内容を変化させること。 類:●名誉挽回●面目躍如 ★「目」は「ぼく」とも読む。
・面目躍如(めんもくやくじょ) 《四熟》 世間の評価に値する活躍をしていて、生き生きとしている様子。また、名声や世間体(せけんてい)などがより良くなること。 類:●名誉挽回●面目一新 ★「目」は「ぼく」とも読む。
・面目を改む(めんもくをあらたむ) 1.様子を改める。2.見事(みごと)なことをして世間の評価を高くする。 類:●面目を一新する
・面妖(めんよう・めんよ) 1.稀(まれ)なこと、奇怪なこと。不思議なこと。 用例:滑・浮世風呂−前「ハテ、めんような、たった今汲(くん)だがのう」 ★多く「めんような」の形で連体修飾に用いる<国語大辞典(小)> 2.どういう訳か。不思議と。 用例:浄・安倍宗任松浦寳−一「めんえう彼方の御病気は、お客ごってに重うなる」 用例:洒・甲駅新話「琵琶といふ物はめんよう女の好くものだ」 ★「めいよ(名誉)」の変化した「めいよう」がさらに変化したもの。「面妖」は当て字<国語大辞典(小)> 用例の出典@:安倍宗任松浦寳(あべのむねとうまつらきぬかさ) 浄瑠璃。並木宗輔。5巻。・・・調査中。 用例の出典A:甲駅新話(こうえきしんわ) 洒落本。馬糞中咲菖蒲(大田南畝)。安永4年(1775)。・・・調査中。
・面を打つ(めんをうつ) 仮面を作る。特に、能面を作る。 ★木彫の上に塗料を盛り上げ、これをたたいて形を作るところからいう<国語大辞典(小)>
・面を被る(めんをかぶる・かむる) 1.仮面で顔を覆(おお)う。また、比喩的に、それらしく見せる。ある風を装おう。2.恥ずかしさのため、顔を隠す。3.恥を忍ぶ。4.悪い事をしながら、平気な顔でいる。本性を隠して、善人ぶる。臆面もなくものごとをする。5.ある容貌を持っている。
・面を取る(めんをとる) 1.被っていた仮面を取る。2.部材の角を平らに、または丸みを付けて削り取る。3.剣道で、相手の面に打ちこんで一本取る。