−もん(mon)−
・門下(もんか) 1.門の下。邸内。また、その人の近くに伺候(しこう)すること。転じて、食客。門客。 用例:御湯殿上−文明18「門下の人より折三がう、御樽三かまゐる」 2.師の門に入り、直接教えを受けること。また、その人。 類:●門人●門弟 3.特定の寺院やその住職を敬って言う言葉。書札礼(しょさつれい)で、宛所の下に敬意を表するために付ける脇付(わきづけ)などに用いられた。 用例の出典:御湯殿上日記(おゆどのうえにっき) 室町時代、清涼殿の御湯殿の上に奉仕する女官が交代で付けた日記。仮名で記されていて、中には天皇が書いた部分もある。任官・叙位、下賜・進献などの宮中の動向が詳しく記されている。文明9年(1477)から文政9年(1826)までのものが伝存。「御湯殿上記」「御湯殿記」「御浴殿記」。
・門外漢(もんがいかん) その道の専門家でない人。また、そのことに直接関わりのない人。 類:●畑違い
・門外雀羅を設く可し(もんがいじゃくらをもうくべし) 訪れる者がなく、門前がひっそり寂れている様子の喩え。 類:●門前雀羅を張る 出典:「史記−汲黯鄭当時列伝・賛」「及廃、門外可設雀羅」
・門外不出(もんがいふしょつ) その家の門から外に出さないこと。貴重な書画などを、滅多に他人に見せたり貸したりせず、秘蔵すること。 例:「門外不出の古文書」
・文句を付ける(もんくをつける) 苦情を言う。 例:「何かというとすぐ文句を付ける」
・門戸開放(もんこかいほう) 1.禁止や制限をしないで、出入りを自由にすること。2.その国の海港・市場を諸外国の経済活動のために開放すること。
・門戸に傍うて飛ぶ(もんこにそうてとぶ) 巣が壊れてしまった燕が門戸に沿って飛んでいる。 1.他人に頼(たよ)って立身しようとすることの喩え。2.落第生が、他人に縋(すが)る姿などの喩え。 出典:「書言故事−不捷類」「下第帰投人、傍門戸飛」
・門戸を成す(もんこをなす) 1.一家を興(おこ)す。2.一派を作る。
・門戸を張る(もんこをはる) 1.一家を構える。2.見栄を張って、家の外観を立派にする。3.一流一派を立てる。
・門戸を開く(もんこをひらく) 禁止や制限をしないで、交流・通商・出入りなどを自由にする。 類:●門戸開放
・文字の法師(もんじのほうし) 禅僧が、学問僧を嘲(あざけ)って言う言葉。経典の注釈や教理の研究にのみ勉(つと)めて、実践的な修行を疎(おろそ)かにしている僧のこと。
・文殊の知恵(もんじゅのちえ) 文殊菩薩のような優れた知恵。素晴らしい考え。 例:「三人寄れば文殊の知恵」 参考:文殊菩薩(もんじゅぼさつ) 智慧を司(つかさど)るとされる菩薩。脇侍として左に侍し、普賢(ふげん)菩薩とともに三尊を形成する。中国では五台山をその霊地とし、日本では葛城山を当てる。
・門前市を成す(もんぜんいちをなす) 門前に人や車馬が群がり集まる。権力や名声があり、それを慕って、その家に出入りする人が多いことの喩え。 類:●門庭市の如し 反:■門前雀羅を張る
・門前雀羅を張る(もんぜんじゃくらをはる) 訪れる人がなくて門前には雀が群れ遊び、網を張って捕らえられるほどである。門前がひっそりとして寂しい様子。 類:●門外雀羅を設くべし 反:■門前市を成す■門庭市の如し 出典:白居易「寓意詩」「賓客亦已散、門前雀羅張」
・門前の小僧習わぬ経を読む(もんぜんのこぞうならわぬきょうをよむ) 常に見たり聞いたりしていれば、知らず知らずのうちにそれを学び知るようになるということの喩え。環境がその人に与える影響は大きいということの喩え。 類:●勧学院の雀は蒙求を囀る 反:■習わぬ経は読めぬ
・門前払い(もんぜんばらい) 1.江戸時代、受取人のない受刑者を奉行所の門前から追い出したこと。2.面会しないで、来訪者を追い帰すこと。 例:「門前払いを食わせる」
・問題外(もんだいがい) 1.問題として取り上げるには、その範囲の外であること。 類:●論外 2.取るに足りないこと。劣っていて、比較の対象にもならないこと。 類:●論外●以ての外
・問題にならない(もんだいにならない) 1.問題として取り上げる価値がない。取るに足りない。2.問題外である。差があり過ぎて、比較対象にならない。
・門庭市の若し(もんていいちのごとし) 多くの人がその家に出入りすること。 類:●門前市を成す 出典:「戦国策−斉策」「令初下、群臣進諫、門庭若市」 斉の威王(いおう)は、相国(しょうこく)の鄒忌(すうき)の提言を受け、「威王の面前で批評する者には上賞を、書面で諌める者には中賞を、公共の場所で批評する者には下賞を授ける」という命令を発した。すると、大臣たちは先を争って諫言しにやってきた。
・問答無用(もんどうむよう) 1.あれこれ議論しても何の役にも立たないこと。あれこれ言うには及ばない。 類:●問答無役●千も万も要らぬ 2.言うな。喋るな。 類:●聞く耳持たぬ
・門徒物忌みせず(もんとものいみせず)[=知らず] 1.門徒宗(浄土真宗)は、方角や六曜(ろくよう)などの迷信に囚われないということ。 類:●念仏者は物忌みせず 出典:御文−第一帖「物忌ということは、わが流には仏法についてものいまわぬといえることなり」 2.門徒宗信者は、他宗が常識として行なっている物忌みもせず、世のしきたりも知らないのかとして揶揄した言葉。 ★「門徒物知らず」との混同から言われたものか。 出典:御文(おふみ)・御文章(ごぶんしょう) 書簡。寛正2年(1461)〜。本願寺第8世・蓮如上人(れんにょしょうにん)が、浄土真宗の教義を分かり易く説(と)いた消息文を編集したもの。後に蓮如の孫円如(えんにょ)がこれを収集して五帖80通[『五帖御文』大永元年(1521)成立]に纏(まと)めた。「御文」という言い方は浄土真宗大谷派(東本願寺)によるものであり、「御文章」という言い方は浄土真宗本願寺派(西本願寺)によるものである。
・門徒物知らず(もんとものしらず) 門徒宗(浄土真宗)の信者が只管(ひたすら)「南無阿弥陀仏」と唱えるのを、他宗の者が無知であると嘲(あざけ)っていう言葉。
・翻筋斗を打つ(もんどりをうつ・もどりを〜)[=切る] 蜻蛉(とんぼ)返りをする。宙返りをする。 例:「翻筋斗打って倒れる」 ★「もんどり」は、「もどり(翻筋斗)」の転<大辞林(三)> ★「翻筋斗」は、「もどり(戻)」から<国語大辞典(小)>
・文無し(もんなし) 1.「一文無し」の略。所持金が少しもないこと。 類:●一文無し 2.それ以上の文(もん)数がないところから、12文より大きい足袋。また、並外れて大きな足袋(たび)。
・門に入る(もんにはいる) 弟子入りする。入門する。 例:「古今亭の門に入る」
・門の限り(もんのかぎり) 門限の時刻。外出から帰らなければならない時刻。
・門の前の痩せ犬(もんのまえのやせいぬ) 弱い者であっても、後ろ立てがあれば強い態度を取るという喩え。また、そういう者の喩え。
・紋も型もないこと(もんもかたもないこと) 紋も、紋を抜く型もないという意味で、なんの根拠もないことの喩え。
・門を打つ(もんをうつ) 門を閉める。
・門を叩く(もんをたたく) 師と仰(あお)ぐ人を訪ね、弟子入りを願う。 例:「歌川豊國の門を叩く」