−もの1(mono1)−
・物合う(ものあう) ものごとが思い通りになる。ものごとが都合良くいく。
・物有れば則有り(ものあればのりあり) ものごとには一定の法則があるものである。例えば『五倫(ごりん)』:父子の「親(しん)」、君臣の「義」、夫婦の「別」、長幼の「序(じょ)」、朋友の「信」。 出典:「詩経−大雅・烝民」「天生烝民、有物有則」
・物言う花(ものいうはな) 物の意味を理解し、口を利く花という意味で、美人のこと。 類:●解語の花
・物言えば唇寒し秋の風(ものいえばくちびるさむしあきのかぜ) 人の短所を指摘した後には、なんとなく寂しい気持ちがする。転じて、なまじ余計なことを言えば、そのために禍(わざわ)いを招くということ。 出典:芭蕉の句で、貞享年間に成ったといわれる「座右の銘」、「人の短をいふ事なかれ己が長をとく事なかれ」の後に添えられているもの。
・物入り(ものいり)・物要り 費用が嵩(かさ)むこと。金銭を費(つい)やすこと。また、そういう事柄。 類:●出費●散財 例:「四月は何かと物入りだ」
・物言わぬ花(ものいわぬはな) 美人を「物言う花」というのに対して使う。草木の花のこと。
・物覚ゆ(ものおぼゆ) 1.ものごとを識別することができる。心が確かである。正気(しょうき)である。2.物心が付く。分別(ふんべつ)が付く。
・物が要る(ものがいる) 経費を要する。費用が掛かる。
・物が無い(ものがない) 1.命がないという意を暗にいう語。 用例:浄・博多小女郎−上「此中の事一言いうても物が無いぞ」 2.味も風情もない。つまらない。具合いが悪い。 用例の出典:博多小女郎波枕(はかたこじょろうなみまくら) 浄瑠璃。世話物。近松門左衛門。3談。享保3年(1718)。大坂竹本座。長崎の抜け荷を題材にしたもの。京の商人小松屋惣七は、博多の遊女小女郎との恋のために海賊毛剃九右衛門の仲間となり、捕えられて駕籠の中で自害する。
・物が無ければ影差さず(ものがなければかげささず) 光を遮(さえぎ)る物体がなければ影はできない。原因がなければ結果は生じないということ。どんな行動や現象でも、必ず何かしらの理由があるということ。 類:●火の無い所に煙は立たぬ●蒔かぬ種は生えぬ
・物が分かる(ものがわかる) 物の道理が良く分かる。ものごとの筋道や本質がよく理解できる。また、その人。 類:●物分りが良い●話が分かる
・物聞こゆ(ものきこゆ) お話を申し上げる。
・物臭(ものぐさ) 1.ものごとをするのに面倒がること。不精(ぶしょう)なこと。また、そういう性質やその人。 用例:徳和歌後万載集−雑「人訪(と)はぬ庭も我が身も垢つきて苔むしけりなものぐさの庵」 2.短くて、踵(かかと)の部分がない草履(ぞうり)。足半(あしなか)。 類:●尻切れ草履 用例:一遍上人語録「ものぐさといふものを四十八作りて」 ★古くは「ものくさ」<国語大辞典(小)> ★億劫(おっくう)である・面倒であるの意味の「懶(ものくさ)し」から。 用例の出典:一遍上人語録(いっぺんしょうにんごろく) 語録。宝暦13年(1763)。編者未詳。上下2巻。一遍(1239〜89)は死に臨み「一代聖教みなつきて南無阿弥陀仏になりはてぬ」と、著作物一切を焼いてしまったため、後世、その消息文(手紙)や聖絵(ひじりえ)などを基に編集したもの。上巻は「一遍聖絵」「一遍上人縁起」記載の、和讚、消息、和歌などを収録しただけのもの。
・物承る(ものけたまわる) 「ものうけたまわる」の略。人に何か言うときに、まず言う呼び掛けの言葉。申し上げます。 用例:源氏−帚木「ものけ給はる。いづくにおはしますぞ」
・物心が付く(ものごころがつく) 世の中の状態が分かるようになる。幼年期を過ぎて、世間の情けや有様が理解でき、分別が付く年頃になる。
・物盛んなれば則ち衰う(ものさかんなればすなわちおとろう) 盛んなものは、やがて衰(おとろ)えるのが自然の理(ことわり)であるということ。 類:●月満つれば即ち虧く 出典:「史記−范雎蔡沢列伝」「語曰、日中則移、月満則虧、物盛則衰」
・物知り顔(ものしりがお) いかにもものごとを知っているという顔付きをすること。また、その様子。 類:●飲み込み顔 例:「物知り顔に話す」
・物知り立て(ものしりだて) 物知りのような風をすること。 類:●知ったか振り ★「立て」は接尾語。
・物好き(ものずき)・物数寄・物数奇 1.ものごとに特別の趣向を凝らすこと。風流な趣(おもむき)を好むこと。また、そのような物や人。 類:●数寄 2.好み、趣味。 用例:虎寛本狂言・棒縛「夫はそなたの物好が能らう」 3.普通と違ったものごとを好むこと。風変わりなものを好むこと。また、そのような人。 類:●好事(こうず) 用例の出典:棒縛(ぼうしばり) 狂言。各流。太郎冠者・次郎冠者が自分の留守中いつも酒を盗み飲みすることを知った主人が、太郎冠者の両手首を棒に縛り付け、次郎冠者も後ろ手に縛って外出する。しかし、二人は不自由な態勢のまま知恵を絞って、酒を飲み、酔って歌い舞う。
・物種は盗まれず(ものだねはぬすまれず) 血は争えないことの喩え。
・物問う(ものとう) 占う。
・物ともせず(ものともせず) 問題にもしない。何とも思わない。 例:「強風を物ともせず進む」
・物ならず(ものならず) 問題ではない。大したことではない。容易(たやす)いことである。 類:●事もなし 例:「函谷関も物ならず」
・物に当たる(ものにあたる) 物に突き当たるほど、慌て取り乱す。 用例:源氏−葵「あさましければ殿の内の人ものにぞあたる」
・物に襲わる(ものにおそわる) 夢の中で、恐ろしいものに襲われる。
・物にする(ものにする) 1.意図したように事を運び、成し遂げる。世の中に通ずるものに仕上げる。2.自分のものにする。目がけて女性を手に入れる。 例:「学園一の才媛を物にする」 3.習い覚えて役に立つようにする。習得する。 例:「英語をものにする」
・物になる(ものになる) 1.一角(ひとかど)の人になる。立派な人になる。 例:「今年の新人は物になりそうだ」 2.思い通りになる。意図したように事が運び、成就する。3.目がけていた女性が手に入る。4.習い覚えたものが役に立つようになる。
・物に似ず(ものににず) 並々でない。他に比べようがない。 用例:大和−148「悲しきこと物に似ず、よよとぞ泣きける」
・物には必至あり、事には固然あり(ものにはひっしあり、ことにはこぜんあり) 富貴であれば追従する士が多く、貧賤なれば交友が少ないのは、事の当然であるということ。 ★「必至」は、必ずそうなること。「固然」は、本来そうであるべきこと。 出典:「史記−孟嘗君列伝」「馮驩曰、物有必至、事有固然」
・物には七十五度(ものにはしちじゅうごたび) ものごとには限度があるということ。
・物にもあらず(ものにもあらず) それと認むべきほどの物でもない。問題にもならない。