−もの2(mono2)−
・物の彼方(もののあなた) 1.物の向こう側。2.来世。後(のち)の世。
・物の折(もののおり)[=折節(おりふし)] 何かの機会があるとき。また、丁度その機会。
・物の数(もののかず) 取り上げて数え立てるほどのもの。注目に値(あたい)する。問題にすべきもの。多く、打消しの語を伴って、問題じゃないという意味で使う。 例:「あいつなど物の数ではない」
・物の聞こえ(もののきこえ) 世間の評判。取り沙汰(ざた)。
・物の先を折る(もののさきをおる) 事柄の出端(でばな)を挫(くじ)く。 類:●出端(でばな)を挫く・折る
・物の諭し(もののさとし) 神仏のお告げ。警告として現れた前兆。
・物の上手(もののじょうず) ある技芸に優れた才能を持つ人。その道の名人。 用例:源氏−若菜・上「何事にも世に難き物の上手におはして」
・物の喩え(もののたとえ・たとい) あるものごとの喩え。ことの喩え。
・物の序で(もののついで) 何か他のことをするのと一緒の機会。何かをする折。事の序で。
・物の弾み(もののはずみ) ちょっとした動機や成り行き。行き掛かり。 例:「物の弾みで喋ってしまった」
・物の本(もののほん) 1.本の総称。書物。2.娯楽的な読物の草紙などに対して、学問的な内容の書物。教養のための固い書物。3.江戸時代の中期以後、物語類・小説類の総称。 用例:人情・梅児誉美−3「徒然をなぐさむ為のものの本」 4.その方面のことが書かれている書物。しかるべき本。 例:「物の本によると」
・物の紛れ(もののまぎれ) 1.繁雑多忙などによる混乱に巻き込まれること。取り紛れて気付かないこと。2.密かに人目を紛らわして事を成すこと。特に、密会のことをそれとなく言う。 類:●密事(みそかごと)
・物の見事(もののみごと) 「見事」を強めた表現。大層見事である。実に立派である。 例:「物の見事に騙された」
・物は言いよう(ものはいいよう) ものごとは言い方によってどうにでも聞こえる。 類:●物は言いなし●事は言いなし
・物は相談(ものはそうだん) 1.ものごとはなんでも、他人とよく相談してみるものである。望みがなさそうなことでも、独り決めにせず、人と相談してみれば、案外巧くいくこともあるということ。 類:●物は談合 2.相談事や頼み事を切り出すときに言う言葉。 類:●物は談合 例:「物は相談なんだが、金を貸して呉れないか」
・物は試し(ものはためし) ものごとはなんでも、実地に試してみなければその良し悪しは分からない。ともかく一度やってみるのが良いということ。
・物見遊山(ものみゆさん) 物見と遊山。あちこち見て回ること。気晴らしに見物や遊びに行くこと。 例:「物見遊山に出掛けた」
・物も言いようで角が立つ(ものはいいようでかどがたつ) 何でもない事でも話の仕方によっては相手の感情を傷付けることがある。「丸い卵も切りようで四角」の後に続けて言う。
・物も覚えず(ものもおぼえず) 1.どうすれば良いのか分からなくなる。また、正気を失う。夢中になる。上(うわ)の空である。 用例:源氏−夕顔「右近は、物もおぼえず、君に、つと添ひたてまつりて」 2.思い掛けない。 用例:栄花−浦々の別「ただ物も覚えぬ水のさと流出づれば」 3.ものごとの道理を弁(わきま)えない。 用例:平家−四「物もおぼえぬ官人共が申様かな」
・物々しい(ものものしい) 1.人を威嚇するようである。厳(いか)めしい。2.堂々としている。厳(おごそ)かである。立派である。 用例:宇津保−蔵開下「けだかく、ものものしき顔してゐ給へり」 3.厳重である。 例:「物々しい警備」 4.大袈裟である。おこがましい。 用例:謡曲・夜討曾我「あらものものしやおのれらよ」 用例の出典:夜討曾我(ようちそが) 能楽の曲名。四番目物。各流。作者未詳。「曾我物語」による。曾我の五郎と十郎は、富士の裾野の狩り場で父の敵・工藤祐経を討とうとし、従者に母に宛てて形見の品を持たせて帰らせ、首尾よく敵を討つ。
・物笑いの種になる(ものわらいのたねになる) 嘲(あざけ)り笑われる元・原因となる。 例:「町中の物笑いの種になる」
・物を言う(ものをいう) 1.話す。口を利く。2.言葉を交わして親しくする。懇(ねんご)ろにする。 用例:源氏−真木柱「いかなる心にて、かやうの人に、物をいひけん」 3.煩(うるさ)く文句を言う。不平や小言を言う。 用例:蜻蛉−中「かかるところにては、物などいふ人もあらじかし」 4.挨拶(あいさつ)をする。声を掛ける。 用例:読・春雨物語−樊噌下「恐しくなりて、物もいはで出ぬ」 5.効力を発揮する。証明する。役に立つ。 例:「結局、コネが物を言う」
・物を言わせる(ものをいわせる)[=言わす] その物の力を十分に出させる。威力を発揮させる。 例:「財力に物を言わす」
・物を思う(ものをおもう) 思い悩む。思いに耽(ふけ)る。
・物を突く(ものをつく) 口から吐く。食べた物を吐く。
・物を見せる(ものをみせる) 1.相手を打ち負かすと同時に、才能や技や力を誇示する。2.相手に思い知らせる。 類:●目に物を見せる
・物をも言わず(ものをもいわず) 何も言わないですぐにという意味で、瞬時も間を置かずに素早い動作をすること。 類:●瞬時も与えず
・物を開き務めを成す(ものをひらきつとめをなす) 1.「易(えき)」の道は、吉凶(きっきょう)を占(うらな)ってものごとを開発し、全ての仕事を成し遂(と)げさせるものであるということ。 類:●開物成務 出典:「易経−繋辞・上」「夫易、開物成務、冒天下之道」 2.一般に、人が知らないところを開発して、事業を成し遂げること。