−もつ(motu)−
・木鶏に似たり(もっけいににたり・ぼっけい) 見たところ、まるで木で作った鶏のようだ。 1.敵意を持たない人に対しては、これに反抗する者はない。無為自然の心の状態で他に対することが、万事を処理し、困難に打ち勝つ最上の方法であるということ。 出典:「荘子−外篇・達生」「鷄雖有鳴者、已無變矣、望之似木鷄矣」 2.真に強い者は、敵に対して少しも動じないものだということ。 蛇足:双葉山の連勝記録が69で止まった日、陽明学者の安岡正篤に宛てた電報には「イマダモッケイタリエズ(未だ木鶏たり得ず)」とあった。
・勿怪の幸い(もっけのさいわい) 想像もしなかったことが幸福を齎(もたら)すこと。思い掛けなく得た幸運。 類:●棚から牡丹餅●不幸中の幸い ★「勿怪」は、思い掛けないこと、意外なこと。元は、不吉なことや怪(け)し
からぬことを言ったもので、異変や災害を意味した。
・沐猴にして冠す(もっこうしてかんす)
・物相飯を食う(もっそうめしをくう) 牢屋の飯を食うこと。罪を犯して囚人になること。 類:●臭い飯を食う ★「物相」は、飯を型抜きするときに使う器。近世の牢獄では、抜かず、器のまま出して食べさせた。
・勿体ない(もったいない) 重々しさがない様子である。 1.本来備わる品位を無視するということで、あるべき様子から外れていて不都合である。不届きである。 用例:宇治拾遺−一・一五「あはれ、もったいなき主哉」 2.自分にとって、受けるべき処遇ではない、過ぎた処遇であると、遜(へりくだ)ること。身に過ぎて忝(かたじけな)い。 類:●畏(おそ)れ多い 用例:虎寛本狂言・悪坊「アア勿躰ない。尊い御出家を何と跡にさるる物じゃ」 3.そのものの価値を無視していて惜しいというところから、使えるものが捨てられたり、無くても済むものを使ったり、働ける人がその能力を発揮しないでいたりして、惜しい感じである。 用例:浮・日本永代蔵−三「茶沸す事も勿体(モッタイ)なし」 用例の出典:悪坊(あくぼう) 狂言。各流。乱暴者の悪坊は眠っている間に無理に道づれにした僧に持ち物を取り替えられ、目覚めてから、前非を悔いて発心する。「悪太郎」の原形らしい。
・勿体振る(もったいぶる) 1.いかにも物々しく振る舞う様子。重々しげに扱うこと。 用例:詞葉新雅「モッタイブッテアルクねる。静に歩む也」 2.尊大ぶる。気取った様子をする。 例:「勿体振った話し方をする」 ★「ぶる」は接尾語<国語大辞典(小)> 用例の出典:詞葉新雅(しようしんが) 辞書。初編
1冊。富士谷御杖著。寛政4年(1792)刊。・・・調査中。
・勿体を付ける(もったいをつける) 1.さほど重大なことでないのに、さも大事(おおごと)であるかのように振舞う。物々しげな様子をする。 類:●勿体振る 2.殊更(ことさら)に威厳を付ける。偉そうに振舞う。気取った風を見せる。 類:●勿体振る●堂が歪んで経が読まれぬ ★「勿体」は、本来は「物体」で、物の形の意<大辞林(三省堂)> ★元来の「物のかたち」の意から、ものものしい態度、いかにも重々しいようす、また、その物に備わっている品位・品格などの意に用いる<国語大辞典(小)>
・持ったが病(もったがやまい) 1.なまじ金銭などを中途半端に持ったがために、それに関わる面倒なことに悩まされること。 類:●璧を懐いて罪あり 2.半端な金は、遊びに使ってしまいがちなので、身を滅ぼす原因になるということ。
・持って生まれた(もってうまれた) 生まれつき身に備(そな)わっている。生得の。 例:「持って生まれた知性」
・持って来い(もってこい) 巧(うま)く適合している様子。好都合。 類:●誂(あつら)え向き 例:「彼には持って来いの仕事」 用例:洒・卯地臭意「どうらくものの女房にゃアもってこいといふ女だ」 用例の出典:卯地臭意(うじしゅうい) 洒落本。鐘木庵主人。1783。・・・調査中。
・以ての外(もってのほか) 1.事柄が、常識や予想を越えていて程度が甚(はなは)だしいこと。大変なこと。多く、困った状態、どうにもならない状態に用いる。 類:●殊の外 例:「以ての外の慌てよう」 2.事柄が普通でなく、咎(とが)め立てされるような場合に用いる。 類:●とんでもない●言語道断●けしからん 例:「無断欠勤とは以ての外だ」
・持って回る(もってまわる) 1.持ってあちらこちらへ行く。持ち回る。2.妙に遠回しな言い方や遣り方をする。 用例:評判・色道大鏡−九「もってまはりたる文章」
・以って瞑すべし(もってめいすべし) それによって安らかに死ねるだろうという意味で、それくらいできれば死んでも良いという気持ち。宿願を果たしたので、もう安心して死ねる。 例:「偉業を成し遂げたのだから、以って瞑すべしだ」
・専らにする(もっぱらにする) 1.そのことに専心する。只管(ひたすら)〜をする。2.縦(ほしいまま)にする。 例:「平家が権勢を専らにする」