−もう(mou)−
・猛火燎原より甚だし(もうかりょうげんよりはなはだし) 1.火事の火の勢いは、野火よりも甚だしい。 用例:太平記−十七「遂乃去春之初、猛火甚於燎原、九重之城闕成灰燼」 2.悪い行ないが世間に広がって行く様子は、野火が勢いよく広がってゆくよりも更に甚だしい。悪が、たちまち蔓延(まんえん)することの喩え。 類:●燎原の勢い 出典:「春秋左氏伝−荘公十四年」「書曰、悪之易也、如火之燎于原」 ★「燎原」は、野を焼く火のこと。悪事や過乱が蔓延(はびこ)る喩えとしても用いられる。→参照:燎原の火
・盲亀の浮木(もうきのふぼく) 極めて得難い機会に巡り合うことの喩え。 類:●浮木(うきき)に会える亀 用例:日葡辞書「ソナタノゴカウリョク(合力)ヲマウキノフボクトタノム」 出典:「涅槃経」など 説話:「阿含経」 百年に一度だけ浮上して頭を出すという盲目の亀が、海上に漂流している孔(あな)のある浮木に会い、その孔に偶然頭を入れてしまうという、非常に稀(まれ)なこと。
・儲け物(もうけもの) 1.予(あらかじ)め準備してある物。設備してある物。また、手持ちの品物。2.思い掛けなく手に入った物。 類:●拾い物●目っけ物 例:「行かないで済めば儲け物だ」
・妄言多謝(もうげんたしゃ) 自分が言った出任せや暴言を深く詫びるという意味で、意見や考えをきっぱり述べた後などに言ったり、書き添えたりする言葉。 類:●妄言多罪
・申し合わせ(もうしあわせ) 1.相談をして、取り決めること。一定の了解のもとに、口約束をすること。また、その約束。 類:●言い合わせ 例:「予てより申し合わせの通り」 2.能楽や狂言の出演者が、予(あらかじ)め打ち合わせをすること。また、その内容。 ★楽屋で行う簡単な打ち合わせのほかに、当日と同様に行う舞台稽古をも含めていうことが多い<国語大辞典(小)>
・申し入れる(もうしいれる) 1.こちらの意見や希望を相手に伝える。申し上げる。告げ知らせる。 用例:今鏡−三「檜扇の片端引き折りて書きつけて、御たちの中に申いれさせける」 例:「和解を申し入れる」 2.招待する。お招きする。 用例:虎明本狂言・煎物「ぎおんの絵のとうにあたってござる程に、おのおの達を申いれうと存る」 3.年始の祝詞を言う。 用例:談・風流志道軒伝−二「大黒屋槌右ヱ門、恵美寿屋鯛兵衛、年始の御祝儀申入ます」 用例の出典:煎じ物(せんじもの) 狂言。各流。祇園会(ぎおんえ)の頭人仲間が囃子物の練習をしていると、煎じ物売りが来て練習の邪魔をする。売るなと言うと、囃子物に合わせながら売り、更に頭人を真似て舞い、炮烙(ほうろく)を割る。
・申し受ける(もうしうける) 1.お願いを申し上げる。お願いをして、その許可を得る。 用例:今昔−四・四一「我閻魔王の所に詣で、此の子を見む事を申し請む」 2.お願いして貰い受ける。願い出て請(こ)い受ける。 類:●頂戴する 用例:百座法談−二月二九日「こがねの銭はべらばまうしうけむ、といひけるに」 例:「送料は実費を申し受けます」 3.招待する。招く。 用例:浮・好色二代男−六「大坂のあけの日すぐに、揚屋にて申請(ウク)る」
・申し子(もうしご) 1.「申す」は、お願い申し上げるの意味。神仏に祈願して授(さず)かった子。 例:「天神様の申し子」 2.霊力を備えた者から生まれた子。また、神仏から授かったかと思われるような際立った特徴を持った子。 例:「天狗の申し子」 3.特殊な背景を素地にして生まれ出た物。その特性を著しく反映して生まれたもの。 例:「情報化時代の申し子」
・申し開き(もうしひらき) 自分がした行為について、その正当さや、そうせざるを得なかった理由などについて述べること。弁解。言い訳。 例:「申し開きの余地がない」
・申し開く(もうしひらく) 1.「言い開く」の謙譲語。考えを詳しく申し上げる。事情や理由を申し上げてはっきりさせる。 用例:平家−一一「此条、故亡父尊霊再誕し給はずは、誰の人か愚意の悲歎を申ひらかん」 2.弁解する。言い訳する。 用例:浄・仮名手本忠臣蔵−六「此度殿の御大事にはづれたるは、拙者が重々の誤り、申ひらかん詞もなし」
・申し分が立つ(もうしぶんがたつ) 申し開きができる。言い訳が立つ。
・申し分がない(もうしぶんがない) 不満に思うところがない。欠点がなく、文句の付けようがない。 例:「我が家の嫁として申し分が無い」
・モーションを掛ける(もーしょんをかける) 働き掛ける。特に、異性の気を引くような行動をする。 類:●言い寄る●粉を掛ける
・申し訳がない(もうしわけがない)・申し訳ない 言い訳ができない。弁解したぐらいでは済まない。相手に済まなく思い、詫(わ)びるときにいう語。 類:●申し訳ない 例:「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」 参考:御免なさい・済みません ★公の立場で使われる。私的な関係の相手には、形式的で空々しく聞こえ兼ねないので、使わない方が良い。
・申し渡す(もうしわたす) 1.はっきりと告げる。上の者が下の者に、命令や決定を伝える。 類:●言い聞かせる●言い渡す 用例:浮・好色一代男−四「関守稠(きび)しく申渡(ワタ)す」 2.江戸時代の白州などで判決や処分を宣告する。 例:「遠島(えんとう)を申し渡す」 3.人から人へと言い伝える。
・毛氈を被る(もうせんをかぶる) 1.失敗する。不首尾に終わる。特に、放蕩して主人や親の家を追い出される。勘当をされる。 用例:浄・神霊矢口渡「親玉へ知れると毛氈をかぶる出入だ」 ★歌舞伎で、死人になった役者を毛氈で隠して舞台を去らせるところから<国語大辞典(小)> 2.女郎買いをして金を使う。また、金がなくなる。 用例:黄・稗史億説年代記「それ毛氈かぶるが放蕩息子(どらむすこ)」 ★遊女が見世に出ているときは毛氈を敷いていたところから<国語大辞典(小)> 用例の出典:稗史億説年代記(くさぞうしこじつけねんだいき) 黄表紙本。式亭三馬。3巻。享和2年(1802)。草双紙の変遷。・・・詳細調査中。
・毛頭〜ない(もうとう〜ない) 毛の先ほど。少しも。些(いささ)かも。 用例:地蔵菩薩霊験記−五・一四「毛頭(モウタウ)虚言なんど申す法師ではなきぞ」 例:「毛頭意に介さない」 用例の出典:地蔵菩薩霊験記(じぞうぼさつれいげんき) 霊験記。平安時代後期。仏教に関わる説話集。続群書類従に所収。
・孟母三遷の教え(もうぼさんせんのおしえ)
・孟母断機の教え(もうぼだんきのおしえ) 学問を途中で放棄するなという教え。 故事:孟子が学業半ばにして帰省した際、孟子の母が織っていた織布を断ち切って、学問も中途で止めるとこのようなものであると戒(いまし)めた。 出典:「古列女伝−母儀・鄒孟軻母」
・盲目的(もうもくてき) 感情や衝動に引きずられて、理性や分別を欠く状態。 例:「盲目的に愛する」
・耄碌(もうろく) 年を取って心身の働きが鈍くなること。老い耄(ぼ)れること。 類:●老耄 例:「おやじもだいぶ耄碌してきた」
・蒙を啓く(もうをひらく) 道理や知識に暗い人を教え導く。 類:●啓蒙(けいもう)する ★「啓蒙(けいもう)」を読み下したもの<国語大辞典(小)>