−むし1(musi1)−
・虫抑え(むしおさえ)・虫押さえ 1.空腹のとき、一時凌(その)ぎに、少しばかり物を食べること。何か少し食べて、空腹を紛(まぎ)らせること。また、その食物。 類:●虫養い 2.癇(かん=ひきつけなど)が起こらないようにすること。子供の虫気(むしけ)が起こらないように抑えること。また、その薬。3.増長の気持ちや怒りを抑え鎮(しず)めること。腹の虫を抑えること。また、その行為。 ★江戸時代の初期ごろからの俗信による。「三尸(し)九虫」といって、人の体内には九つの虫がいて、それぞれが、病気を起こしたり、心の中の意識や感情を呼び起こすのだと言われた。
・虫が合う(むしがあう) 心が一致する。気持ちや考えがなんとなくぴったり合う。 類:●胸が合う
・虫がある(むしがある) 人間としての意地がある。ちょっとした自尊心や名誉心を持っている。誇りを持つ。
・虫が好い(むしがいい・よい)[=良い] 1.自分勝手である。自分の都合だけを考えて、他人のことなどはまったく考えない。身勝手である。 類:●厚かましい 例:「そんな虫の好い話を誰が認めるか」 2.機嫌が良い。また、人が好い。
・蒸し返す(むしかえす) 1.一度蒸したものを、もう一度蒸す。 用例:浮・日本永代蔵−四「蘓枋木の下染其上を酢にてむしかへし、本紅の色にかはらぬ事を思ひ付」 2.同じことを、懲りずに、再び繰り返す。また、治(おさ)まっていたことを再び問題にする。 例:「昨日の議題を蒸し返す」 用例:雑俳・川柳評万句合−明和五「蒸返へす四百四町はまた新年」
・虫が治まる(むしがおさまる) 腹立ちが治る。怒りが解ける。 類:●腹の虫が治まる
・虫が齧る(むしがかぶる) 腹の中にいる虫が齧(かじ)るという意味。 1.腹痛が起こる。癪(しゃく)が起こって、苦しくなる。 用例:滑・膝栗毛−5「つれの者が少し虫が齧るさうだから宿をおたのみ申しやす」 2.産気付いて陣痛が起こる。 用例:滑・膝栗毛−発端「しきりに虫が齧ると見え」
・虫が嫌う(むしがきらう) なんとなく気に食わない。気に入らない。 類:●虫が好かない
・虫が込み上げる(むしがこみあげる)[=取り上(のぼ)す] 欲望が次第に昂(たか)ぶる。
・虫が承知せぬ(むしがしょうちせぬ) 心が納得しない。腹が立って我慢がならない。 類:●腹の虫が治まらない
・虫が知らせる(むしがしらせる)[=知らす] なんとなく感じる。何か起こりそうな予感がする。 →「虫抑え」の★を参照
・虫が好かない(むしがすかない) なんとなく気に入らない。どうも好感が持てない。
・虫が据わる(むしがすわる) 心が定まる。覚悟ができる。 類:●腹が据わる
・虫が付く(むしがつく) 1.衣類や書画などに害虫が集(たか)って食い荒らす。穀物や農作物に害虫が集って、被害を受ける。2.未婚の女性や後家などに愛人ができる。遊女・若衆などに情夫ができる。 例:「娘に悪い虫が付いては困る」
・虫気付く(むしけづく) 陣痛が起こる。産気付く。
・虫酸が走る(むしずがはしる)[=虫唾]・[=出る・来る] 1.腹が減って、胃液が口の中に逆流する。2.口中に胃液が上がってきて、吐き気を催(もよお)す。多く、酷く忌み嫌うことに喩える。 類:●反吐(へど)が出る 例:「顔を合わせるだけで虫唾が走る」