−むし2(musi2)−
・狢を使う(むじなをつかう) 狢や狸(たぬき)が使うといわれる化かしの術を使うという意味で、人を騙(だま)すために、知らぬ振りをしたり、味方のように見せ掛けたりすること。
・虫の息(むしのいき) 今にも死にそうな弱々しい息遣い。やっと生きているような状態の喩え。 類:●風前の灯 例:「A社は経営不振で虫の息だ」
・虫の居所が悪い(むしのいどころがわるい) 機嫌が悪く、ちょっとしたことでもすぐ腹を立てる状態。不機嫌である。 例:「出掛けに小言を言われて虫の居所が悪い」
・無始の罪障(むしのざいしょう)[=罪業(ざいごう)] 「無始」は、仏教用語で、無限に遠い過去のこと。「罪障」は、成仏の障害となる罪業。限りない前世からの罪障。
・虫の知らせ(むしのしらせ) なんとなくそういう予感がすることを、腹の中の虫が知らせる為だとしたもの。 類:●胸騒ぎ →「虫抑え」の★を参照
・無始無終(むしむじゅう) 仏教用語。 1.真理は常に変わることなく永久に無限であるということ。2.生き変わり死に変わり、この世の巡り合わせは永久に続くということ。輪廻は限りなく続くということ。
・虫眼鏡(むしめがね) 1.小さい物を拡大して見るための、焦点距離の短い凸レンズを用いた道具。拡大鏡。ルーペ・顕微鏡など。2.相撲の、序の口の力士の俗称。番付の最下段に、ごく小さい字で記され、虫眼鏡を使わないと読めないことから言われる。
・虫も殺さぬ(むしもころさぬ)[=ない] 虫さえも殺さないほど性質が穏やかで大人しいことの形容。また、そういう人。 例:「虫も殺さぬ顔をして心は鬼のよう」
・虫養い(むしやしない) 1.空腹を一時的に凌(しの)ぐこと。また、その軽食。 用例:玉塵抄−四五「尊宿長老などに酒をかんをして果子肴をすすむるを叢林のことばに虫やしないの薬と云」 類:●虫抑え 2.転じて、性欲その他の欲望を一時的に満たすこと。 用例の出典:玉塵抄(ぎょくじんしょう) 注釈書。惟高妙安(いこうみょうあん)。55巻。永禄年間(1558〜1570)の言語研究資料。
・武者振り付く(むしゃぶりつく) 激しい勢いで抱きつく。遮二無二(しゃにむに)齧(かじ)り付く。 類:●齧(かぶ)り付く 用例:浄・長町女腹切−中「べりべりしゃべるほうげたけはないてしまはんと、むしゃぶり付」 ★「貪(むさぶ)り付く」の転。「武者振り付く」は当て字<大辞林(三)>
・武者震い(むしゃぶるい) 戦いや重大事に臨んだときに、心が奮い立つあまり、身体が小刻みに震えること。
・矛盾(むじゅん)
・むしょ 監獄のことを指す俗語。 ★監獄をいう盗人仲間の隠語「虫寄場・六四寄場(むしよせば)」の略「むしよ」の変化。「刑務所」の略と解されることもあるが、「監獄」を「刑務所」と改称したのは大正11年(1922)で、この語はそれ以前から使われていた<国語大辞典(小)>
・無常迅速(むじょうじんそく) 仏教用語。万物の生滅転変が速やかであること。人の世の移り変わりが非常に早いこと。人の死が思い掛けず早くくること。
・無常の風(むじょうのかぜ)[=嵐(あらし)] 人の命を奪うこの世の無常を、花を散らす風に喩えたもの。 用例:狂・朝比奈「無常の風に誘はれ、ただいま冥途へ赴く」
・無常の殺鬼(むじょうのせっき) 死。人の命を奪うこの世の無常を、恐ろしい鬼に喩えたもの。
・寧ろ千金を失うとも一人の心を失う毋かれ(むしろせんきんをうしなうともいちにんのこころをうしなうなかれ) 多額の財産を失う結果になろうと、一人の信頼を失ってはならない。財貨よりも信用を重んじなさいということ。 出典:「越絶書−越絶外伝記范伯」「伝曰、寧失千金、毋失一人之心」 出典:越絶書(えつぜつしょ) 史書。前漢。袁康(えんこう)、一説に子貢(しこう)の著とも言われる。15巻。春秋時代の越族の歴史を記録したもの。
・筵を踏む(むしろをふむ) 寝床に敷く筵に共に寝るという意味から、夫婦が同衾すること。
・虫を起こす(むしをおこす)[=病(や)む・煩(わずら)う] 1.寄生虫などのために、腹痛を起こす。2.子どもが虫気(むしけ)を起こす。 参考:虫気(むしけ) 子供が罹(かか)るもので、寄生虫により、腹痛・不眠・癇癪(かんしゃく)などの症状が出るもの。
・虫を殺す(むしをころす)[=死なす・押さえる・堪(こら)える・鎮(しず)める・宥(なだ)める・摩(さす)る] 癇癪を抑える。腹が立つのをぐっと堪(こら)えて我慢する。 反:■堪忍袋の緒が切れる
・無心する(むしんする) 1.思慮分別のないことを言うという意味で、相手の迷惑をも顧(かえり)みないで依頼する。2.特に、親などに遠慮なく金品を強請(ねだ)る。 例:「親に金を無心する」 参考:安愚楽鍋「無心をいつて五両もらつたのを」 参考の出典:安愚楽鍋(あぐらなべ) 滑稽小説。仮名垣魯文作。明治4〜5年(1871〜2)。3編5冊。原名「牛店雑談安愚楽鍋」。別名「奴論建(どろんけん)」。開化期の世相を、牛鍋屋に集まる庶民の会話を通して描いた。
・無尽蔵(むじんぞう) 1.仏教用語。尽きることのない財宝を納めた蔵(くら)のこと。無限の功徳(くどく)を有することの喩え。 出典:「大乗義章−十四」「名為無尽、無尽之徳包含曰蔵」 2.見聞きしても無くならないことから、大自然のこと。 出典:蘇軾・前赤壁賦「是造物者之無尽蔵也」 3.仏教用語。寺に設けられた庶民のための金融機関。信者の布施した財物を蓄(たくわ)えて貸し出した。 類:●無尽●頼母子講(たのもしこう) 4.取っても取っても尽きないこと。無限にあること。 例:「無尽蔵の太陽光で発電する」 出典:大乗義章(だいじょうぎしょう) 大乗経典の注釈書。北斉〜隋。浄影寺の慧遠(えおん)(523〜592年)。全26巻より成っていたが、雑法聚を除く20巻が大正蔵(巻44)に収められている。地論宗の見地から見た六朝以来の各派の教説を集大成したもの。教理史上において重要視される。