−なま(nama)−
・名前負け(なまえまけ) 1.名前が不相応に立派過ぎること。2.名前と実質とが伴わないために、却(かえ)って人物が見劣りすること。
・生木の燃え立ちしと百姓の怒り立ちしほど恐ろしきものなし(なまきのもえたちしとひゃくしょうのいかりたちしほどおそろしきものなし) 燃え難い生木も、一旦火が点けば激しく燃え上がり、手が付けられない。同様に、我慢強い農民が一揆(いっき)を起こすと、手が付けられないほど勢いが盛んになり、恐ろしいものである。
・生木を裂く(なまきをさく) 相愛の男女を無理に別れさせる。
・生臭坊主(なまぐさぼうず) 僧侶が食べることを禁じられていた、魚肉・獣肉などの生臭物を平気で食べる坊主のこと。または、戒律を守らない僧のこと。品行の悪い僧。
・怠け者の節句働き(なまけもののせっくばたらき)
・憖じい(なまじい)・憖じ・憖じっか 1.できそうもないことを、または気が進まないのに無理にしている様子。 用例:万葉−六一三「物思ふと人に見えじと奈麻強(ナマじひ)に常の面(おもえり)ありそかねつる」 2.すべきでない、またはしなくても良いことをする様子。望んでいないのなら、強(し)いてまでしない方が良いのに、という感じで用いる。 類:●止せばいいのに 用例:源氏−若菜下「及びがたき御仲らひになましひに許され奉りてさぶらふしるしには」 3.中途半端な様子。好い加減である様子。 用例:平家−一「今生も後生も、なまじゐにしそんじたる心ちにてありつるに」 例:「なまじっかの腕では太刀打ちできない」 4.不用意である様子。迂闊(うかつ)である様子。 用例:古今著聞集−一六・五一七「引きつくろひて参るべきよし仰せくだされければ、なまじひに鬢(びん)かきあげて供奉しけり」 ★「生強い」の意。清音にも<広辞苑第四版(岩)>
・膾に叩く(なますにたたく) 1.魚介や肉などを細く切り刻んで膾にする。細切れにする。2.転じて、人を酷(ひど)い目に遭わせる。特に、大勢で滅多打ちにすること。 用例:浄・聖徳太子絵伝記「膾に叩けと声々にをめいてかかれば」
・生唾を飲む(なまつばをのむ)・飲み込む 1.美味しいものを見たり匂いを嗅(か)いりしたときに、自然と生唾が出てきて、それを早く食べたいと思う。2.転じて、欲望を刺激するものに接して、それを早く手にしたいと思う。 例:「札束を目にして生唾を飲み込んだ」
・生々しい(なまなましい) 1.生きている。 用例:大和−六〇「君をおもひなまなまし身を焼くときは」 2.死んだばかりで、まだ、生新しい。 用例:読・弓張月−後「なまなましき髑髏あり」 3.生き生きとしている。目前に見るような感じである。 例:「生々しい記憶」
・生温い(なまぬるい) 1.少し温(ぬる)い。少し暖かい。また、気味の悪い暖かさである。 例:「生温い風が顔に当たる」 用例:天草本伊曾保「ナマヌルイユヲイッパイ」 2.なんとなく柔弱である。意気地がない。強さが感じられない。 用例:仮・東海道名所記−一「なまぬるき、色の白きひな男也」 3.厳しさが十分でない。好い加減で徹底しない。 類:●手緩(ぬる)い●甘い 例:「叱り方が生温い」 用例:浄・大経師昔暦−上「エエなまぬるい旦那殿」 用例の出典:大経師昔暦(だいきょうじむかしごよみ) 浄瑠璃。世話物。3段。近松門左衛門。正徳5年(1715)大坂竹本座初演。京都の大経師の妻おさんが手代茂兵衛と通じ、二人で丹波に逃れたが捕えられ、仲介をした下女お玉と三人処刑された事件を脚色。『堀川波鼓』『鑓の権三重帷子』と共に、近松三姦通物の一つ。「おさん茂兵衛」。
・生半可(なまはんか) ものごとが好い加減で十分でないこと。 類:●中途半端●不十分●生半(なまなか) 例:「生半可な知識」
・生兵法は大疵の基(なまびょうほうはおおきずのもと・もとい)[=怪我の基] なまじっか少しばかり武術を知っていると、それを頼んで軽々しく事を起こすので、大怪我をする原因となる。生半可な知識を持つ者が、それを自負してものごとを行ない、大失敗をすること。 類:●生兵法は知らぬに劣る●A little learning [knowledge] is a dangerous thing.(少しばかりの学問は危険)●He who commences many things finishes but few. (あれこれ手をつける者はほとんど中途半端に終わる)<「英⇔日」対照・名言ことわざ辞典>
・生返事(なまへんじ) 1.好い加減な返事。はっきりしない返事。2.気のない返事。 例:「上の空の生返事」
・生身を削る(なまみをけずる) 生きている肉体を刃物で削るという意味から、極度の精神的な苦痛のことを喩えて言う。
・生酔い本性違わず(なまよいほんしょうたがわず) 酒に酔っても、その本来の性質は変わらない。 類:●酒の酔い本性忘れず●上戸本性違わず