−なみ(nami)−
・波風(なみかぜ) 1.波と風。また、強風が吹いて波が立つこと。 類:●風濤(ふうとう) 2.世の中や家庭が騒ぎ乱れること。ごたごたすること。 類:●揉(も)め事。 例:「家の中に波風が絶えない」「世の波風に揉まれる」
・涙片手(なみだかたて) 片手で涙を押さえながら。泣きながら。また、泣く泣く。
・涙ながら(なみだながら) 涙を流しながらという意味で、非常に悲しい様子や状態を表わす。
・涙に暗れる(なみだにくれる) 涙のために暗くなる。涙のために曇る。また、泣き沈んで途方に暮れる。悲しみのため分別がなくなる。
・涙に暮れる(なみだにくれる) 泣いて月日を送る。泣いて暮らす。
・涙に沈む(なみだにしずむ) 泣き臥す。 類:●泣き沈む
・涙に迷う(なみだにまよう) 涙の闇に迷う。涙に暮れて心が迷う。
・涙に咽ぶ(なみだにむせぶ) 涙で、声が途絶えがちである。また、泣きに泣く。
・涙に咽る(なみだにむせる) 涙で喉(のど)が詰まって、声が出なくなる。
・涙の糸(なみだのいと) 頬を伝わる涙。糸に見立てて言った言葉。
・涙の色(なみだのいろ) 1.甚(はなは)だしく嘆くと血の涙が出るというところから、血のような色。紅色。2.泣く様子。悲しみ嘆く様子。
・涙の底(なみだのそこ) 流す涙が集まってできた淵の底という意味で、悲しみの底のこと。
・涙の玉(なみだのたま)[=数珠(じゅず)] 涙の粒を玉と見立てた言葉。玉なす涙。大粒の涙。
・涙の端(なみだのつま) 涙を誘う糸口。
・涙の闇(なみだのやみ) 涙に暮れて心が闇になること。悲嘆のあまり分別を失うこと。
・涙脆い(なみだもろい) 涙が出易い性質である。すぐ涙を流しがちである。また、気が弱い。同情し易い。 類:●涙早し 用例:蜻蛉−上「よろづにつけてなみだもろくおぼゆ」
・涙を呑む(なみだをのむ)・飲む 涙が出そうなのを堪(こら)える。また、口惜しさ、無念さをじっと我慢する。 例:「涙を飲んで諦(あきら)める」
・涙を振るう(なみだをふるう) 流れる涙を振り払う。私情や同情を棄てる。
・涙を揮って馬謖を斬る(なみだをふるってばしょくをきる) → 泣いて馬謖を斬る
・波に乗る(なみにのる) 1.波の流れに乗る。2.時の流れに巧く合う。時代の風潮、時勢にあって栄える。3.調子に乗る。勢いに乗る。 類:●調子の波に乗る●調子に乗る●軌道に乗る
・波にも磯にも着かず(なみにもいそにもつかず) 中途半端でどっちつかずの落ち着かない状態。
・波の綾(なみのあや) 波によって作られる水面の模様。細波(さざなみ)の様子を綾織物に喩えたもの。 類:●波紋
・波の緒(なみのお) 1.美しい楽音を立てる波。弦楽器(箏・琴など)で胴の表面を海、側面を磯、揺れる弦を波に見立てるところから、逆に波を弦にたとえて言った言葉。 用例:古今−921「からことは浪のをすげて風ぞひきける」 2.二五弦の琴の初の緒。
・波の通路(なみのかよいじ) 波が行き交う路。海上の通路。 類:●波路
・波の標(なみのしめ) 長く連なった波頭(なみがしら)を、張り渡した標に見立てて言った言葉。
・波の皺(なみのしわ) 1.波で作られる水面の模様。波の綾(あや)。 類:●波紋 2.年老いて皮膚にできる皺。
・波の関(なみのせき)[=関戸(せきど)] 波のために往来が妨げられることを関所に喩えた言葉。
・波の関守(なみのせきもり) 海岸の関戸で、波を関守に見立てて言った言葉。
・波の便り(なみのたより)[=使い] 波音が伝える便り、消息。
・波の鼓(なみのつづみ) 波の音を、鼓を打つ音に喩えた言葉。また、波の調べのように打つ鼓。
・波の手(なみのて) 波の中を船を自由に操る技量や手立て。
・波の音(なみのと) 波が打ち寄せる音。波の音。 用例:丹後風土記逸文(釈日本紀)「奈美能等(ナミノト)聞こゆ」 用例の出典@:丹後風土記(たんごふどき) 風土記。伊預部の馬養(うまかいの)連(むらじ)撰。和銅6年(713)? 聖武天皇の勅命で丹後国が提出した地誌書。 用例の出典A:釈日本紀(しゃくにほんぎ) 「日本書紀」の解説書。28巻。卜部懐賢(兼方)編著。文永11年(1274)〜正安3年(1301)の間に成立。奈良時代以降の書紀研究と卜部家家説を集大成したもの。訓や本書以前の書紀研究史が知られ、引用文によって散逸した古書類を窺える。
・波の花(なみのはな) 1.波が白く泡立つのを白い花に見立てた言葉。 用例:古今−250「わたつうみの浪の花にぞ秋なかりけり」 2.塩。食塩。 ★元は女房詞<国語大辞典(小)>