−なに(nani)−
・名に負う(なにおう)[=にし負う] 1.名前として持つ。その実体を伴ったものとしての名を持つ。 用例:古事記−下・歌謡「かくの如那爾淤波(ナニオハ)むとそらみつ大和の国を蜻蛉島とふ」 2.世間一般にその名と共に評判される。有名である。 用例:万葉−3638「これやこの名爾於布(なニオフ)鳴門の渦潮に」 用例の出典:古事記(こじき) 奈良時代の歴史書。3巻。序文によれば、天武天皇の命で稗田阿礼(ひえだのあれ)が暗唱した帝紀(天皇の系譜、年代記)と旧辞(伝承されていた神話、伝説など)を、元明天皇の命を受けた太安万侶(おおのやすまろ)が撰録したもの。和銅5年(712)成立。上巻は天地創造から草葺不合尊(うがやふきあえずのみこと)までの神代の事柄。中・下巻は人代の事柄で、中巻は神武天皇から応神天皇まで、下巻は仁徳天皇から推古天皇までの系譜、事件などを記す。112首(一説、113首)の歌謡や、歌物語風の説話、伝承、神話などを多く含み、文学性にも富む。
・何某より金貸し(なにがしよりかねかし) どこの何某と言われる家柄であるよりも、高利貸しと非難されても金持ちでいる方が良い。名声や名誉より、現実の利益を取った方が良いということ。 類:●某(それがし)より食う菓子 出典:一休狂歌問答
・何かしら(なにかしら) 1.(実体を特定しないまま指示する。「何か」を強めて言う。) 何か分からない、あるもの。どういう点か。どういうものか。何か。 用例:滑・八笑人−初「何かしらちっとは能の有る物だ」 例:「いつも何かしら口に入れている」 2.(原因、理由が不明であることを示す。) 何のせいか分からないが。なんとなく。どうしたことか。 類:●どことなく 例:「何かしら胡散臭く思える」 ★「何か知らん(ぬ)」の略<広辞苑第四版(岩)>
・何かはせん(なにかはせん) 全く価値がない。何の役にも立たない。何にもならない。 用例:徒然草−七「住み果てぬ世に、みにくき姿を待ちえて何かはせん」
・何から何まで(なにからなにまで) 一切の雑多なものを残る所なく含む。完全に。すっかり。
・名に聞く(なにきく) 噂に聞く。また、有名である。 類:●音に聞く
・何食わぬ(なにくわぬ) 実際には食べたのに食べていないようなという意味で、自分のしたことや思っていることが人に知られては困るとき、注意を逸(そ)らすために平然と振舞うこと。多くは「何食わぬ顔」の形で使われる。
・何さ(なにさ) 1.相手に問い返すときに用いる。 例:「何さ。何を探しているの?」 2.相手の言葉を受けて、それを否定するときに用いる。 用例:滑・続膝栗毛−一二「『あなたがたはおやかましからうけれど』『ナニサ、わっちらも、聴聞いたしやせう』」 3.相手が話し掛けることなどに対して、軽く往(い)なす。 例:「『御迷惑をおかけしました』『何さ、御心配なく』」
・名にし負う(なにしおう) (「し」は強意の助詞) → 名に負う
・名に立つ(なにたつ) 広く世に聞こえる。名高くなる。 用例:古今−六二「あだなりと名にこそたてれ桜花」
・名に流れる(なにながれる) 名が流布(るふ)する。評判が世間に広がる。
・何はさておき(なにはさておき) 他のことは別にして。差し当たって。取り敢えず。
・名に恥ず(なにはず) その名声や名前に対して面目ないと思うということから、名声や名前を重んじる気持ちを指す。 ★「名を恥ず」というようにも使う<国語慣用句辞典(集)>
・何はなくとも(なにはなくとも) 当面の一つのものがありさえすれば、他の一切のものは存在しなくても良い、という気持ちを表わす。他に格別のものはなくても。
・何はの事(なにはのこと) 1.事物や事態が不明・不定であること。どんなこと。どんなふうなこと。 用例:月詣−四「津の国のあしでにもなき浦を見てなにはのことにおつる涙ぞ」 2.雑多な事物・事態をさす。 類:●諸事万端●万事 用例:源氏−澪標「かずならでなにはのこともかひなきに」 ★「なには」に地名「難波(なにわ)」をかけていうことが多い<国語大辞典(小)>
・何やかや(なにやかや) あれやこれや。色々様々。 用例:源氏−末摘花「なにやかやとよづけるすぢならで」
・難波の葦は伊勢の浜荻(なにわのあしはいせのはまおぎ) 同じ物でも場所によってその呼び名が変わるということの喩え。 反■阿波に吹く風は讃岐にも吹く
・何を(なにを) 「なんだって?」 「なんだと!」 問い返したり、語気強く反発して言う。 用例:伎・傾城壬生大念仏−上「『夕べ盗まれてござんせぬ』『何を嘘斗(うそばっかり)』」 用例の出典:傾城壬生大念仏(けいせいみぶだいねんぶつ) 元禄15年(1702)。近松門左衛門。近松狂言の集大成で大傑作。京の壬生地蔵開帳を当て込んだお家騒動物。藤十郎の酒粕買いの「やつし事」、酒に酔っての「独り狂言(廓咄)」など見どころ多し。平成10年に近松座が、初演以来296年振りに復活上演<近松門左衛門でござーい!>
・何を隠そう(なにをかくそう) 何を隠すことがあろうか、隠すことなどありはしない、という意味で、包み隠さずに何もかも言ってしまう、また、思い切って事の真実を全て打ち明けてしまうという気持ちを強調していう。