−ねこ(neko)−
・猫が顔を洗い、耳を過ぎると客が来る(ねこがかおをあらい、みみをすぎるときゃくがくる) 猫は、人が近付く気配を素早く感じ、ストレスの転移行動として、猫は顔を洗うような仕種(しぐさ)をしたり、落ち付きがなくなったりする。そのため、猫が顔を洗うと客が来るという。 用例:酉陽雑俎続集「猫洗面過耳、則客至」 出典:酉陽雑俎(ゆうようざっそ) 中国、唐代の子部の小説類の一つ。20巻。続集10巻。段成式撰。860年頃成立。仙仏人鬼から、動植物に至るまでの広範な怪事異聞を、36の部立に分けて随筆風に叙述したもの。
・猫が肥えれば鰹節が痩せる(ねこがこえればかつおぶしがやせる) 鰹節を食った猫は太るが、齧(かじ)られた鰹節は痩せて細くなる。一方が得をすれば、他方が損をするということの喩え。 類:●あちらを立てればこちらが立たぬ●出船に良い風は入り船に悪い
・猫が糞を踏む(ねこがばばをふむ) 猫は排便した後に後ろ足で砂を掛けて隠す習性があることから、悪事を隠して知らん顔をする喩え。特に、拾得物や預かり物を自分のものにしてしまうことをいう。 類:●猫糞
・猫被り(ねこかぶり・ねこっかぶり) 本性を包み隠して、表面は大人しそうに見せること。あるいは知らない振りをすること。また、その人。猫っ被り。 類:●蒲魚(かまとと)
・猫可愛がり(ねこかわいがり・ねこっかわいがり) 猫を可愛がるように、子や孫を甘やかして可愛がること。無闇矢鱈に可愛がること。 例:「孫を猫可愛がりする」
・猫舌(ねこじた) 猫が熱い食物を嫌うところから、熱いものを飲食できない舌。また、その人。
・根刮ぎ(ねこそぎ) 1.草などを根まですっかり抜き取ること。 類:●根扱ぎ 例:「庭の松が根こそぎになった」 ★「こそぐ・こそげる」は、表面に付いているものを削(けず)り取ること。 2.残すところなく、全て取り除くこと。また、禍(わざわい)の元などを根絶すること。 例:「麻薬組織を根こそぎにする」 3.(副詞的に) 余すところなく。悉(ことごと)く。多く、窃盗被害に遭(あ)ったときなどに使う。 類:●洗い浚い●一切合切●残らず 例:「貴金属を根こそぎ奪われた」
・猫撫で声(ねこなでごえ) 猫が人に撫でられるときに出すような、優しく媚びを含んだ声音(こわね)。
・猫に鰹節(ねこにかつおぶし)[=鰹・乾鮭(からざけ)] 猫の好物の鰹節をその傍(そば)に置くということで、みすみす過ちや危険な状態を招くこと。また、そのような危うい状況にあること。 類:●狐に小豆飯
・猫に小判(ねこにこばん)[=石仏(いしぼとけ)]
・猫に木天蓼お女郎に小判(ねこにまたたびおじょろうにこばん) 1.大好物の喩え。2.また、それぞれにとって効果が著しいもの。
・猫にもなれば虎にもなる(ねこにもなればとらにもなる) 猫のように大人しくなれば、虎のように狂暴にもなる。相手の出方次第で、優しくもなれば猛々(たけだけ)しくもなる。
・猫の魚辞退(ねこのうおじたい) 魚を見れば飛び付く猫が、その魚を辞退するという意味から、内心は欲しくて堪らないのだが、上辺だけ一応は辞退して見せること。また、一時だけで長続きしないことの喩え。 類:●猫の精進(しょうじん)
・猫の恋(ねこのこい) 春に牡猫が牝猫を恋うこと。猫が交尾期になること。
・猫の子の貰いがけ嫁の取りがけ(ねこのこのもらいがけよめのとりがけ) 「貰いがけ」は、貰った当座。「取りがけ」は、嫁などを迎え入れた初めのころ。猫も嫁も、貰った当座は大切にされる。初めのうちだけ可愛がること。<招き猫の部屋>
・猫の逆恨み(ねこのさかうらみ) 気持ちの捻(ね)じ曲がった者が、人から助けてもらいながら、その人を逆に恨んだりすること。 ★猫には陰険な性質があるとされ、人から恩を受けても有り難いとも思わず、却(かえ)って不快に思うと考えられたことから。
・猫の尻へ才槌(ねこのしりへさいずち) 相応しくないこと。また、釣り合わないことの喩え。<招き猫の部屋>
・猫の手も借りたい(ねこのてもかりたい)
・猫の額(ねこのひたい) 猫の額は狭いという意味で、面積が狭いということ。 例:「猫の額ほどの庭」
・猫の額の物を鼠が窺う(ねこのひたいのものをねずみがうかがう)[=猫の鼻先の物を〜] 鼠が、猫のすぐ近くにある餌を狙うこと。 1.危険を恐れない大胆不敵な行為の喩え。2.不可能なことをする喩え。
・猫の目(ねこのめ) 猫の瞳は明るさによって形を変えるところから、移り変わりが激しいことのたとえ。多く、女心などの喩えとして使う。 例:「意見を猫の目のようにくるくる変える」
・猫の横座(ねこのよこざ) 囲炉裏端(いろりばた)の嫁の座席。主婦権のない嫁が座る最も下位の席で土間に添った面。 類:●木尻(きじり)●嫁座敷
・猫は三年の恩を三日で忘れる(ねこはさんねんのおんをみっかでわすれる) 猫は三年飼われた恩を三日で忘れるものである。猫は、人の恩を知らない動物であるということ。 類:●恩知らず 反:■犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ
・猫糞(ねこばば) 猫は糞をした後、前足で砂を掛けてそれを隠すところから、悪事を隠して素知らぬ顔をすること。拾い物などをして、それを届けたり返したりしないで、自分のものとして素知らぬ顔をすること。 用例:滑・浮世風呂−三「猫糞(ネコババ)で、しゃアしゃアまぢまぢだ」 例:「猫糞を決め込む」
・猫は三月を一年とす(ねこはみつきをひととせとす) 人間の三ヶ月は猫の一年に相当する。猫の成長は早いということ。 類:●犬の一年は三日
・猫跨ぎ(ねこまたぎ) 1.不味(まず)い魚。また、捨てるほど大量に捕れる魚。2.塩味が非常にきつい塩漬けの魚。 ★以前は「鮪のトロ」を呼んでいたこともある。釣り人の間では「外道(ヒイラギなど)」を呼ぶ。
・猫股婆(ねこまたばばあ)・猫又婆 根性の曲がった老婆を罵(ののし)っていう言葉。 用例:徒然草−八九「奥山に、猫またといふものありて」 参考:猫股(ねこまた) 猫が年老いて尾が二つに分かれ、よく化けて人に害をするというもの<国語大辞典(小)>
・猫も杓子も(ねこのしゃくしも) 何もかも。誰も彼も。 用例:咄・一休咄「生まれて死ぬるなりけりおしなべて釈迦(しゃか)も達磨(だるま)も猫も杓子も」 ★元々の漢字は「禰子(←禰宜)も釈子(←釈氏)も」。「禰子」は、"神社の"お弟子さん…神道を信仰する人たちの意味。「釈子」は、"釈迦の"お弟子さん…仏教を信仰する人たちの意味。神道と仏教が混在している日本ならではの言葉。
・猫も跨いで通る(ねこもまたいでとおる) 魚の好きな猫でさえ無視して跨いで通る。活きの悪い魚、味の悪い魚。また、魚好きで食べ方の上手な人が残した身が綺麗に取られた魚の骨のことをいう。<招き猫の部屋> 類:●猫跨ぎ
・猫を一匹殺せば七堂伽藍を建立したるより功徳あり(ねこをいっぴきころせばしちどうがらんをこんりゅうしたるよりくどくあり) 猫は執念深く魔性のものであるから、猫を一匹殺せば、七堂伽藍を建てるより仏のご利益(りやく)がある。
・猫を追うより皿を引け(ねこをおうよりさらをひけ) 魚を狙う猫たちを追い払うより、魚を棚にしまうことの方が大切である。その場凌(しの)ぎの解決策より、根本を正すことが大切であるということ。 類:●猫を追うより魚除(の)けよ
・猫を殺せば七代祟る(ねこをころせばしちだいたたる) 俗信から。猫は魔性のもので、執念深いから、子々孫々七代まで祟られる。
・猫を被る(ねこをかぶる)