−ねす(nesu)−
・鼠鳴き(ねずなき) 1.鼠が鳴くこと。また、口を窄(すぼ)めて鼠の鳴き声を真似ること。 用例:枕−一五一「雀の子の、ねずなきするにをどり来る」 2.特に、忍んできた男が女の元に近付いたときや、遊女などが客を呼び入れようとするときなどにする、鼠の鳴き真似をいう。 類:●鼠(ねずみ)鳴き
・鼠が塩を引く(ねずみがしおをひく) 鼠が塩を盗んでいくのはごく少量ずつで目立たないが、いつの間にか多量になるということで、目に付かない小事が積もり積もって大事に至るということ。また、物が目立たないくらいに減っていって、やがてなくなってしまうこと。
・鼠壁を忘る、壁鼠を忘れず(ねずみかべをわする、かべねずみをわすれず) 壁に穴を開けた鼠はそのことを忘れてしまうが、穴を開けられた壁は、鼠のことを忘れないものである。被害者は、受けた痛手を生涯忘れないものだということの喩え。
・鼠窮して猫を噛み、人貧しうして盗みす(ねずみきゅうしてねこをかみ、ひとまずしうしてぬすみす) 切羽詰まると、鼠が猫に噛み付くように、人もやむなく盗みを働くようになるということ。
・鼠無きを似て捕らざるの猫を養う可からず(ねずみなきをもってとらざるのねこをやしなうべからず) 害をなす鼠がいないから、鼠を捕る能力はない猫を、差し支えないといって、飼っておくべきではない。無能な者は、養っておけない。<招き猫の部屋>
・鼠に引かれそう(ねずみにひかれそう) 鼠が塩を盗んでいくようにいつの間にか消えて、神隠しでも遭うのではないかと心配される様子。独りで家に残されて寂しい様子の喩え。
・鼠に引かれる(ねずみにひかれる) まるで鼠が引っ張ってどこかへ持っていってしまったように、忽然と姿を消したもののこと。 ★独りで留守番をする者に、「鼠に引かれないように気をつけて」などと言ったりもする。 参照:鼠が塩を引く
・鼠の嫁入り(ねずみのよめいり)[=婿(むこ)取り] あれこれ迷っても、結局は平凡なところに落ち着くことの喩え。 昔話:鼠の夫婦がその娘に天下一の婿を取ろうとして、太陽がこの世で一番だと思い申し出ると、太陽は、雲に出合うと照らせないから雲が良いと言う。そこで雲に申し出ると、雲は風に吹かれるから風が良いと言う。だが風は築地に遭えば無力だと言う。そこで築地に頼むと鼠に穴を掘られて適わないと言ったので、結局同じ仲間の鼠を選んだという。
・鼠を投たんと欲して器を恐る(ねずみをうたんとほっしてきをおそる) ものを投げて鼠を殺そうと思うが、近くにある器物を損なうのではないかと恐れて、中々できない。君主の傍らに蔓延(はび)る奸臣の喩え。 類:●城狐社鼠 出典:「漢書−賈誼(かぎ)伝」
・鼠を以って璞と為す(ねずみをもってはくとなす) 価値のないものを宝物とすること。美名に目が眩(くら)んで実質を見失うことの喩え。 出典:「戦国策−秦」「鄭人謂玉未理者璞、周人謂鼠未[月+昔]者朴」 鄭(てい)では、掘り出してまだ磨き上げていない宝玉のことを「璞」と呼び、周ではまだ乾き切っていない鼠の干物(ひもの)を「朴(はく)」と呼ぶ。周の人が鄭の商人に「ハクを買わないか」と問うたところ、「買いたい」と言うので、懐(ふところ)から取り出すとそれは鼠だった。 ★魏(ぎ)の范雎(はんしょ)が言った言葉。