−にく(niku)−
・憎い憎いは可愛いの内(にくいにくいはかわいいのうち) 人を憎いと思っても、ずっとその人のことを考えていると、妙に愛着が湧いてくるものであるということ。 類:●嫌よ嫌よも好きの内 反:■可愛さ余って憎さ百倍
・憎き鷹には餌を飼え(にくきたかにはえをかえ) 刃向かう者を力ずくで屈服させるよりも、ご馳走や金品を与えて手懐(てなず)ける方が良いということ。 類:●鷹を養う如し●下種と鷹には餌を飼え
・肉が落ちる(にくがおちる) 体が痩せる。 反:■肉が付く
・肉が付く(にくがつく) 体が太る。
・憎からず(にくからず) 1.愛情を感じてはいるが、それを直接表さず、嫌ではないと間接的に表わす。好きである。愛(いと)しい。慕(した)わしい。可愛(かわ)い。 用例:大和−六四「にくからず思ふ若き女を」 2.感じが良い。見苦しくない。不調和でない。そつがない。奥床(おくゆか)しい。 用例:竹取「御返りさすがににくからず聞えかはし給て」 ★形容詞「にくし(憎)」に打消の助動詞「ず」の付いたもの<国語大辞典(小)>
・憎さも憎し(にくさもにくし) いかにも憎い。憎んでも憎み足りない。
・肉付きの面(にくづきのめん) 仏教の説話。仮面を被って悪事などを働くと、その仮面が取れなくなるという筋の話。念仏を唱えるとすぐとれるなど、浄土真宗の説教によく引用され、また、お伽草子などに類話が多い。
・肉薄する(にくはくする)・肉迫する 1.肉弾戦で敵に迫る。砲撃戦や包囲戦ではなく、身を危険に曝(さら)して敵に近付く。敵の間近まで押し寄せる。 例:「敵陣に肉薄する」 ★「薄」は迫るの意<国語大辞典(小)> 2.距離や実力などが、すぐ間近まで迫る。特に、競技などで、もう少しで追い越す所まで迫る。 例:「首位に肉薄する」 3.議論などで、鋭く問い詰める。また、相手が触れたがらない真実などを指摘して問い質(ただ)す。 例:「舌鋒鋭く肉薄する」 ★2.3.は、日本での特別な意味。
・憎まれ口を叩く(にくまれぐちをたたく) 相手から憎まれるようなこと言う。人に嫌われるようなことを言う。また、そういう憎々しい口の利き方をする。 類:●憎てい口●憎まれ●悪口
・憎まれっ子世に憚る(にくまれっこよにはばかる)
・逃ぐるに手無し(にぐるにてなし) その場から逃走する以外に方法はない、または、逃げることが最良の策である。 類:●逃ぐるに如かず●三十六計逃げるに如かず
・肉を斬らせて骨を断つ(にくをきらせてほねをたつ)[=斬らして〜] 敵に自分の肉体を傷付けられても、敵にはそれ以上の打撃を与えられる。自分の生死を賭けて敵に向かい、それに打ち勝つことを言う。
・肉を付ける(にくをつける) 骨格にそれを覆う肉を付けるという意味から、足りない点などを補って、内容を豊かにすること。
・肉を以って餓虎に委ねる(にくをもってがこにゆだねる) 自分の肉体を飢えた虎に委ねるようなものである。無益な死の喩え。 類:●犬死に 故事:「史記−張耳陳余列伝」「今必倶死、如以肉委餓虎、何益」 趙(ちょう)王を助けて秦軍に包囲された張耳(ちょうじ)が親友の陳余(ちんよ)に救援を求めたとき、陳余は「共々に死んでは報復する者がいなくなり、犬死にである」と返信した。
・肉を委ねて餓虎の蹊に当たる(にくをゆだねてがこのみちにあたる)・肉を委(い)して〜 肉をぶらぶらさせて飢えた虎の待つ道を歩くようなものである。わざわざ自分を危険の真っ只中に置くような行為であるということ。 故事:「史記−刺客列伝」「是謂、委肉当餓虎之蹊也、禍必不振矣」 燕(えん)の太子丹(たん)が秦王のお尋ね者である樊於期(はんおき)を匿(かくま)っていることを、老臣・鞠武(きくぶ)が諌(いさ)めて言った言葉。