−おく(oku)−
・屋烏の愛(おくうのあい) 愛するあまり、その愛する人の家の屋根に留(と)まった烏(からす)までも愛すること。人を愛すると、その人に関わる全てのものが愛しくなるということの喩え。また、愛情がとても深いこと。 類:●愛は屋上の鳥にも及ぶ●痘痕も笑窪●惚れた欲目 反:■坊主憎けりゃ袈裟まで憎い 出典:「説苑−貴徳」「愛其人者、兼屋上之烏」、「尚書大伝−牧誓・大戦」「愛人者兼其屋上之烏」 ★太公望(呂尚)の言葉。
・屋下屋を架す(おくかおくをかす) 屋根の下にもう一つ屋根を作る。 1.無用な仕事のこと。2.真似ばかりして、新しい発明がないこと。 出典:「世説新語−文学」「屋下架屋耳」  →屋下に屋を架す
・屋上屋を架す(おくじょうおくをかす) 屋根の上にもう一つ屋根を作る。重ねて無益なことをすること。 類:●屋下に屋を架す●川に水を運ぶ
・奥の手(おくのて) 1.左手を尊重していう言葉。大切な手。2.技芸などの秘訣。転じて、取って置きの手段。 ★「おく」は、左のことで、左を尊んだことによる<国語大辞典(小)>
・奥歯に衣着せる(おくばにきぬきせる) ものごとをはっきり言わず、思わせ振りに言う。 類:●奥歯に物が挟まる●奥歯に剣(つるぎ) 反:■歯に衣着せぬ
・奥歯に物が挟まる(おくばにものがはさまる)
・に出るほど(おくびにでるほど) 十分過ぎるくらいの状態であること。嫌になるくらい。 ★「」は、げっぷ、もしくは欠伸(あくび)のこと。
・にも出さない(おくびにもださない) 心に秘めて、口に出して言わず、それらしい様子すらも見せない。 例:「苦しみ(反感)をおくびにも出さない」 類:●にも立てず●にも見せない●素振りにも見せない
・臆病風に吹かれる(おくびょうかぜにふかれる) 臆病な心が起こってくる。 類:●臆病風に誘われる●臆病風を起こす●臆病風を引く●怖じ気付く
・臆面もない(おくめんもない) 恥ずかしがったり遠慮したりする様子がない。図々しい様子。 例:「臆面もなく嘘をつく」
・奥床しい(おくゆかしい) 1.心が惹かれて、見たい、聞きたい、知りたいと思う。 用例:源氏−橋姫「おぼつかなく思しわたることの筋を聞ゆれば、いとおくゆかしけれど」 2.深い心遣いが見えて、なんとなく慕わしい。上品で慎(つつし)み深く、心が惹き付けられる。また、深い思慮があるように見える。 例:「奥床しい人柄」 用例:源氏−末摘花「ざれくつがへる今やうのよしばみよりは、こよなうおくゆかしうとおぼさるるに」 ★「ゆかし」は「行かし」で、心が対象に向かって行きたくなるようすをいう<古語辞典(学研)>
・奥行きがない(おくゆきがない) 思慮が浅い。 類:●浅はか
・お蔵入り(おくらいり) 1.品物が使われずに蔵の中に入っていること。2.上演することが内定していた見世物などが、上演取り止(や)めになること。 ★芝居(歌舞伎)や映画業界の言葉。 3.完成した映画やコマーシャルフィルムが、公開を中止すること。4.一般に、計画が取り止めになること。
・お蔵にする(おくらにする) 1.上演することが内定していた見世物などの上演を取り止(や)めにする。2.転じて、何か計画していた事柄を止めにする。 ★「くら」は、「千秋楽」の「らく(楽)」を逆にしたものともいう<国語大辞典(小)>
・お蔵に火が付く(おくらにひがつく) 事態が差し迫ってくるたとえ。 類:●尻に火が付く
・送り狼(おくりおおかみ) 1.山中などで、道行く人の後に付いてくる狼。 ★群狼から旅人を守ってくれるという話と、転ばずに歩けば必ずしも害を加えないが、転べば食いつくという話とがある<国語大辞典(小)> ★自分の縄張りを守る狼の習性によるという。 2.転じて、人の後から付いてきて、害を加えようとする人間。特に、親切を装って若い女性を送っていき、機会があれば乱暴を働こうとする男。
・遅れ馳せながら(おくればせながら)・後れ馳せながら 時機を逸してしまいましたが。自分の言動が、時宜に適(かな)わなかったことを恐縮して言う。 例:「遅れ馳せながらお礼を申し上げます」 ★「遅れ馳せ」は、戦(いくさ)に遅れて参じること。人より遅れてその場に着くこと。
・後れを取る(おくれをとる) 1.他におとる。負ける。失敗する。 用例:浅井三代記−一〇「武者のつかひやう御存なきゆへにおくれを取り」 2.恐れて気力がなくなる。気おくれする。 用例の出典:浅井三代記(あさいさんだいき) 近江小谷城主浅井亮政・久政・長政3代にわたる興亡を記した軍記物語。著者は其阿雄山、1671年(寛文11年)頃の成立と推定される<乾坤一擲>
・屋漏に愧じず(おくろうにはじず) 人が見ていない所でも恥ずかしい行ないをしないこと。 類:●君子は独りを慎む●暗室を欺かず 出典:「詩経−大雅・抑」「相在爾室、尚不愧于屋漏」 ★「屋漏」は、家の西北の隅のことで、家の神がおわす所とされた。