−おも(omo)−
・思い余る(おもいあまる) 1.あれこれ考えたがどうしても良い考えが浮かばない。 類:●思案に余る 例:「思い余って死を選ぶ」 2.恋しさに耐え切れなくなる。 用例:伊勢−五六「臥して思ひ、起きて思ひ、思ひあまりて」
・思い内にあれば色外に現わる(おもいうちにあればいろそとにあらわる・ほかに〜) 心の中に思っていることがあると、それが自然に顔色や動作に現われる。 出典:「礼記− 大学」「此謂誠於中、形於外」 出典:大学(だいがく) 中国の経書。四書の一つ。孔子の遺書とも子思または曾子の著作ともいう。もと「礼記」の一編(第42)で学問の根本義を示す。唐の韓愈、宋の二程子に推重され、朱熹が章句を作って四書の一となる。朱子の校訂によって現形に固定。明明徳・止至善・新民の三綱領を立て、それに至る格物・致知・誠意・正心・修身・斉家・治国・平天下の八条目の修養順序を挙げて解説したもの。
・思い立ったが吉日(おもいたったがきちじつ) 何かをしようという考えが起きたら、直ちに着手すべきである。暦を見て吉日を選ぶまでもなく、思い立った日を吉日として行なえということ。また、何かを決めたら、直ぐにでも実行に移せということ。 類:●思い立つ日が吉日●思い立つ日に日咎(ひとが)なし●善は急げ 用例:謡曲・唐船「思ひ立つ日を吉日と船の纜(ともづな)解き始め」 用例の出典:唐船(とうせん) 能楽の曲名。四番目物。各流。外山(とび)吉広作と伝える。九州箱崎の男の捕虜となっている唐人・祖慶官人(そけいかんにん)を慕って、子ども二人が唐から来て、官人は帰国することになる。しかし、日本で儲けた二人の子どもが引き留めるので、海に身を投げようとする。最後は許されて父子五人喜んで船出する。
・思い半ばに過ぐ(おもいなかばにすぐ) 考えてみて思い当たることが多い。凡(おおよ)そは推測できる。 出典:「易経−繋辞・下」「知者観其彖辞。則思過半矣」
・思いの丈(おもいのたけ) 1.思いの全て。思慕や愛情のすべて。思いの限り。特に、男女間の恋愛に関して使う。 類:●思いの山 例:「思いの丈を綴る」 ★「丈」は、「有りっ丈」の上略。 2.(副詞的に)思い切り。思う存分。 例:「思いの丈大声で泣く」
・思いの外(おもいのほか) 1.思い掛けないこと。 類:●意外 用例:土左「いとおもひのほかなる人のいへれば」 2.上の句を「と」で受けて、「と思ったが意外にも」という意味で下を修飾する。 用例:談・古朽木−五「定めて影人形碁盤人形などの御馳走にこそと思ひの外、〈略〉能い物尽しの座敷狂言」 3.思い掛けず。思っていた以上に。案外にも。 用例:人情・閑情末摘花−初「女にかかっちゃア思ひの外強いかも知れねへ」 用例の出典@:土左日記(とさにっき・とさのにき) 紀行日記。1巻。紀貫之(きのつらゆき)。承平4年(934)12月21日、任国土佐を発して翌年2月16日に京都に着くまでの見聞や、海路の辛苦のさまに、亡児への追想や歌論などをおりまぜ、女性に仮託して仮名書きで作品化したもの。 用例の出典A:古朽木(ふるくちき) 談義本。5巻合1冊。朋誠堂喜三二(ほうせいどうきさんじ)。安永9年(1780)。・・・詳細調査中。 用例の出典B:閑情末摘花(かんじょうすえつむはな) 人情本。松亭金水。天保10年(1839)〜12年。・・・詳細調査中。
・思いも寄らない(おもいもよらない) まったく予想もしない。考えもしない。思い付きもしない。意外である。 用例:源氏−末摘花「ただ、おもひもよらずにはかにて」
・思い遣られる(おもいやられる) →先が思い遣られる
・思いを馳せる(おもいをはせる) 遠く離れている場所や人に自分の気持ちを向ける。思い遣る。
・思う事一つ叶えばまた一つ(おもうことひとつかなえばまたひとつ) 望みが一つ達成されると、すぐに、次の一つが欲しくなるものである。人の欲望には際限がないことの喩え。 類:●望蜀●隴を得て蜀を求む●千石取れば万石羨む
・思うたり叶うたり(おもうたりかのうたり) 思っている通りになる。 類:●願ったり叶ったり
・思う壺(おもうつぼ) 予期した状態。目的としたところ。また、期待した通りになること。 類:●思う図 例:「思う壺にはまる」 ★「壺」は、賽子(さいころ)賭博で振る壺のことで、思った通りの賽子の目が出るという意味から転じて言う<国語慣用句辞典(集)>
・思うに別れて思わぬに添う(おもうにわかれておもわぬにそう)[=思うに添わで〜] 思いを寄せている人とは夫婦になれず、思ってもいなかった相手と結婚する。男女の仲は思い通りにならぬものである。また、縁とは不思議なものだということ。 類:●思う人には遠ざかり思わぬ人のしげしげ
・思えば思わるる(おもえばおもわるる) 人に好意を示せば、相手も自然に自分に好意を示すようになるものだということ。 類:●情けは人の為ならず●Love is love's reward.
・思えば呪う(おもえばのろう) 人を愛するあまり、却(かえ)ってその人を憎み、また、呪うようになることがある。 類:●可愛さ余って憎さ百倍
・面影の人(おもかげのひと) いつまでも思い出される懐かしい人。
・重きを置く(おもきをおく) 多く「〜に重きを置く」の形で使われ、〜を重大なことと考える。貴重に思う。重視する。
・お文字(おもじ) 1.帯を指す女房詞。2.「恐(おそれ)」をいう女性語。 用例:浄・右大将鎌倉実記−五「おもじながら申上まゐらせ候」 ★「おもじながら」の形で、「恐れ多いが、失礼ながら」の意に用いる<国語大辞典(小)>
・面白い(おもしろい) 1.見て楽しい。愉快だ。気持ちが良い。 用例:日本書紀−斉明四年一〇月・歌謡「於母之楼枳(オモシロキ)今城(いまき)の中(うち)は忘らゆましじ」 例:「同窓生と面白い夜を過ごした」 2.興味がある。興味をそそられる。 類:●興味深い 用例:霊異記−上・三〇(興福寺本訓釈)「甚だ价(オモシロキ)国有り」 例:「明かりを消したら面白い反応を示した」 3.趣(おもむ)きがある。風流である。風情(ふぜい)がある。 類:●をかし 用例:万葉−3442「於毛思路伎(オモシロキ)野をばな焼きそ」 4.望ましい状態である。思う通りである。多く打消しの語を伴う。 例:「病状がどうも面白くない」 5.滑稽(こっけい)である。可笑(おか)しい。風変わりである。 用例:虎清本狂言・猿座頭「わごりょはおもしろい事を、ふしんさします」 ★目の前(=面・おも)がぱっと明るく(=白く)なるようにはっきりと目立つようす。現代語の「おもしろい」のこっけいだという意味は、近世以降のもの<古語辞典(学)> ★もと、美しい景色を形容する語<広辞苑第四版(岩)> ★上代では目の前の明るい景色についていうとみられる例が多いから、「面(おも)白(しろ)し」で、おもて(表面)が明るいが原義か。後に一般に情趣、風情また興趣のあるもの、さらに風の変わったものの意にも移った<国語大辞典(小)>
・面白くない(おもしろくない) 1.望ましい状況ではない。 例:「どうも病状が面白くない」 2.つまらない。楽しくない。滑稽(こっけい)でない。 例:「面白くない映画」 3.気に入らない。 類:●気に食わない 例:「あいつだけもてるのが面白くない」
・お持たせ(おもたせ)・お持たせ物 人が持ってきた贈り物や手土産(てみやげ)のこと。それを持ってきた人を敬(うやま)って言う。多くは、持ってきた客にそれを、茶菓子などとして勧(すす)める時に言う。 例:「お持たせで恐縮ですが」 ★「運んできていただいた物」の意味から。
・玩具にする(おもちゃにする) 好い加減に弄(もてあそ)ぶ。相手を慰み物にする。
・面が立つ(おもてがたつ) 他に対して名誉が保たれる。 類:●顔が立つ●面目が立つ
・表に金色の交わりを結び、心に是非の錐を使う(おもてにこんじきのまじわりをむすび、こころにぜひのきりをつかう) 表面は親密を装っているが、内心では相手を冷たく品評していること。
・面に泥を塗る(おもてにどろをぬる) 面目丸潰れにする。名誉を傷付ける。恥を掻かせる。 類:●顔に泥を塗る
・面を犯す(おもてをおかす) 主君などの意に逆らうのも憚(はばか)らずに諫(いさ)めること。目上の人に、敢えて自分の考えを申し上げる。
・面を曝す(おもてをさらす) 1.人々の面前に顔を露(あらわ)にする。 2.公衆の面前で恥ずかしい思いをする。恥を晒(さら)す。 用例:光悦本謡曲・千手「あづまのはて迄も、かやうに面をさらす事」 用例の出典:千手(せんじゅ) 能楽の曲名。三番目物。各流。喜多流では「千寿」と書く。作者不詳。一谷の戦いで生捕られた平重衡を、手越の長者の娘千手が、歌い舞って慰める。やがて勅命によって都に送り返される重衡を千手は泣きながら見送る。
・面を汚す(おもてをけがす) 体面を傷付ける。 類:●面に泥を塗る●顔に泥を塗る●顔を潰す
・重荷に小付け(おもににこづけ) 大きい荷物に小さな荷物を上乗せすること。重い負担があるところに、更に新たな負担が加わること。 類:●大荷に小付け●泣き面に蜂●弱り目に祟り目 用例:浄・寿の門松「恋の重荷に小付して親子の哀れ打乗せて」
・重荷を下ろす(おもにをおろす) 重大な責任、義務を果たして負担を免(まぬが)れる。心配事がなくなってほっとする。 類:●肩荷が下りる
・思惑話(おもわくばなし) 思うところがあってする話。裏に何らかの目的を持ってする話。
・思わしい(おもわしい) 1.心に何かを思っている状態である。 類:●物思わしい 2.思い通りで望ましい。良いと思われる。普通、下に打ち消しの言葉を伴って使う。 例:「病状が思わしくない」 3.好ましいと感じる。良いと考えられる。 用例:兼盛集「いとおもはしかりける女に」 用例:枕−四九「ただ口つき愛敬づき〈略〉声憎からざらん人のみなん思はしかるべき」 用例の出典:兼盛集(かねもりしゅう) 私家集。平兼盛(たいらのかねもり)。正暦元年(990)。後撰集時代の代表的歌人で、三十六歌仙に名を連ねる。恋歌が多いのが特徴。「平兼盛集」。
・思わせ振り(おもわせぶり) 何か特別な意味がありそうに人に見せ掛ける言葉や態度。特に、期待を抱かせるような素振(そぶ)り。 用例:浄・釈迦如来誕生会−二「じっと寄ってはしみじみと好い中中の思はせぶり」 例:「思わせ振りなウインクをされた」 用例の出典:釈迦如来誕生会(しゃかにょらいたんじょうえ) 浄瑠璃。時代物。元禄8年(1695)。近松門左衛門。5段。釈迦の伝記に、様々な仏教説話を加えて脚色したもの。