−おし(osi)−
・教うるは学ぶの半ばなり(おしうるはまなぶのなかばなり) 人を教えるときには、調べ直したり知識を整理し直したりするから、半分は自分が学ぶことになるということ。教えることによって、自分の知識の曖昧(あいまい)さや未熟さを悟(さと)れるものであるということ。 類:●教学相長ず●教えるときが学ぶとき●Teaching
others teaches yourself.(人に教えることがあなたを教える) 出典:「詩経−兌命・下」「惟教学半、念終始典于学、厥徳修罔覚」
・押しが利く(おしがきく) 人を抑えて従わせる力がある。 例:「痩せていては押しが利かない」 類:●押し手が利く
・押し掛ける(おしかける) 1.招かれないのに人の家へ行く。 用例:浄・淀鯉出世滝徳−上「こちから先越(せんご)してにょっとおしかけてはどふござんしょ」 2.相手を圧倒しようとして、大勢で出向く。押し寄せる。 例:「陳情に役所に押し掛ける」 3.物に襲い掛かる。進撃する。 用例:大鏡−四「雑人はいとおほくはらはれてをしかけられ奉りぬれば」
・押しが強い(おしがつよい)[=重たい・堅(かた)い] 1.自分の意見や希望を通そうとする根気がある。 用例:雑俳・柳多留−一六四「押がつよくて平ったく口説いてる」 2.厚かましい。図太く、横着(おうちゃく)だ。 用例:洒・傾城買四十八手「くがい十年塩だちをしても、こんな着物がきられるものか。をしのつゑへ」 用例の出典:傾城買四十八手(けいせいかいしじゅうはって) 洒落本。1冊。山東京伝作・画。寛政2年(1790)刊。客と遊女との恋の手管を、軽妙な会話のはこびの中に的確にとらえ、京伝独特の精細な筆致が十分に生かされている。
・お仕着せ(おしきせ)・お為着せ 1.江戸幕府から諸役人、囚人に衣服を支給すること。また、その衣服。2.時候に応じて主人から奉公人、客から遊女などへ衣服を与えること。また、その衣服。 例:「会社お仕着せのユニフォーム」 3.上から強(し)いられて型通りにものごと行なわれること。そうするように習慣化していること。また、その物。 類:●お決まり 用例:浮・好色一代女−五「盃のくるたびにちと押へましょ、是非さはりますとお仕着の通り」 例:「お仕着せの社内旅行」
・押し切る(おしきる) 1.物を押し当てて切る。2.反対や無理などの障害を押し退けてやり通す。 用例:仮・浮世物語−一「をしきるべき軍場(いくさば)をも逃げくづして」 例:「反対を押し切って結婚する」 3.櫓を押し続けて、波をのり切って船を進める。 用例:浄・国性爺合戦−千里が竹「千波万波をおしきって〈略〉もろこしの地にもつきにけり」 4.「切る」を強調して言う言葉。断ち切る。ぷつりと切る。 用例:蜻蛉−中「汁にあへしらひて柚(ゆ)をしきりてうちかざしたるぞ」 ★「おし」は接頭語<国語大辞典(小)>
・押し込む(おしこむ) 1.狭いところに無理に入れる。 例:「満員電車に押し込む」 2.狭いところに無理に入り込む。びっしり詰まる。 用例:宇津保−国譲下「公達おしこみ入れて、御文を奉り給へば」 3.他人の家などに強引に入り込む。侵入する。特に、文句を言いに人の家に押し掛ける。 類:●押し入る 用例:人情・春色辰巳園−初「ひょっとまたうかれ仲間が押込むといけねへから」
・押し付ける(おしつける) 1.上から重みを掛けて押さえる。また、力を入れて押し、あるものに付着させる。 用例:宇津保−蔵開上「白き薄様に書きてをしつけたまふ」 例:「体を押し付ける」 2.威力を以って自由な振る舞いをさせないようにする。 類:●抑圧する●圧倒する 用例:評判・色道大鏡−六「髪をきるは、女にいひまはし押付てもさする業(わざ)也」 3.強引にやらせる。無理に引き受けさせる。無理に受け取らせる。 用例:荘子抄−八「伊尹が事を云はんとてをしつけて登恒と名を付て云也」 例:「責任を押し付ける」「嫁を押し付けられる」 4.念を押す。 用例:上杉家文書−年月日未詳「御条目に而おしつけおしつけたづね、御申御尤存候」 5.昂(たか)ぶる感情を抑える。我慢する。 例:「怒りを押し付ける」
・押し詰まる(おしつまる) 1.事態が差し迫る。切迫する。 例:「押し詰まってからでないと始めない」 2.年の暮れが近くなる。年末が近付く。 例:「今年も押し詰まって、2日を残すのみだ」
・推して知るべし(おしてしるべし) どういう経緯であるか、容易に推量して知ることができる。 類:●言うまでもない 例:「結果は推して知るべしだ」
・押し並べて(おしなべて) 1.全て一様に。皆等しく。総じて。 類:●遍(あまね)く 用例:万葉−一「そらみつ大和の国は押奈戸手われこそ居れ」 2.世間並みの。並々の。普通の。 用例:宇津保−国譲・上「西の廊はをしなべての人の曹司」 ★助詞「の」を伴って<国語大辞典(小)> 3.全部がそうとは言えないが、大体の傾向として。 類:●概(おおむ)ね●大略 例:「今年の夏野菜は押し並べて出来が良い」
・押しの一手(おしのいって) 目的に向かって強引に押し進むこと。 類:●攻勢一点張り
・押しも押されもせぬ(おしもおされもせぬ) 実力があって、他人に左右されたり圧倒されたりしない。 類:●びくともしない●安泰 用例:浄・源氏冷泉節−上「伊藤殿は大名でをしもをされもする身でなし」 用例の出典:源氏冷泉節(げんじれいぜいぶし) 浄瑠璃。近松門左衛門。宝永7年(1710)。「孕常磐(はらみときわ)」の追加物で、上下2巻の変則物。源頼朝と愛人・藤の前の話を軸に展開する<近松門左衛門でござーい!> ★「押しも押されぬ」は誤用・・・「押すに押されぬ」との混用か? 但し、認める国語辞典も出始めている。
・お釈迦になる(おしゃかになる) 品物を出来損ないに仕上げてしまう。役に立たなくしてしまう。 例:「新品の皿がお釈迦になった」 ★阿弥陀の像を鋳るはずのものが、釈迦の像を鋳てしまったという話から、鋳物、製鉄関係者の間で用いられ始めた言葉という説がある<国語大辞典(小)> ★鍛冶屋が発祥で、「火が強かった」を「シが強かった」と喋り、4月8日(シがつようか)の花祭り(釈迦の誕生日)→お釈迦様と洒落たもの、ともいう。
・お釈迦様でもご存知あるまい(おしゃかさまでもごぞんじあるまい)[=気が付くまい] 未来を見通すというお釈迦様でも、知らないだろう(気が付かないだろう)という意味で、誰も知らないだろうということを強調する言葉。
・おしゃま 1.子供が老成(ませ)た振舞いをすること。また、そのような子。多く女の子について、愛情を込めて言う。 類:●お茶っぴい 例:「おしゃまさん」 2.猫、または芸者のこと。 ★幕末・明治の俗謡「猫じゃ猫じゃとおしゃますが、猫が下駄はいて杖ついて、絞りの浴衣で来るものか」の「おしゃます」から出た語という<国語大辞典(小)>
・おじゃんになる ものごとが途中で駄目になること。不成功に終わること。 類:●ポシャる ★「じゃん」は近世、火事が鎮火すると半鐘をジャンジャンと二打したところから。原義は終了の意という<国語大辞典(小)>
・お上手(おじょうず) 「上手」を丁寧に言った言葉から、何事にも良く気が付き、口が巧いこと。また、世辞が巧いことを皮肉るときなどにも使う。 用例:随・胆大小心録−109「この卿はとかくに御上手にて」 例:「ま、お上手ですこと」
・お相伴に与る(おしょうばんにあずかる) 1.酒席などで、正客の連れとして、一緒に持て成しを受ける。 例:「社長のお相伴に与る」 2.同行者との釣り合いや行き掛かりで、利益を受ける。 例:「たまたま居合わせて、お土産のお相伴に与った」 3.仲間の行動に付き合う。 例:「映画に行くのなら、お相伴に与るとしますか」