−おち(oti)−
・落ち落ち(おちおち) 落ち着いている。安らかに。多く、下に打消しの言葉を伴って、安心して…できない。 用例:雑俳・柳多留−九「江戸へ出ておちおちと寝るさらし売り」 例:「落ち落ち昼寝もできない」
・落ち零れ(おちこぼれ) 1.容器から落ちて零れたもの。特に、稲の落穂(おちぼ)を指して言う。 類:●掻き零れ 2.残り物。余り物。転じて、他人や他のものごとのお陰で得る利益。 類:●お零れ 3.学校で、授業に付いていけない子供。
・落ち込む(おちこむ) 1.落ちて低い所や物の中に入る。 類:●嵌(はま)る●陥(おちい)る 例:「穴に落ち込む」 2.深く窪む。一段と低くなる。 例:「落ち込んだ眼」 3.良くない状態になる。売上や業績が悪くなる。 類:●陥る 例:「危険な破目に落ち込む」 4.気分が滅入る。心を奪われて動けない状態になる。 類:●滅入る 5.取引相場で、基準値段や円台より下がる。 類:●台を割る
・落ち着く(おちつく) 1.移り動いていたものが、ある場所に留まる。住居・職業・地位などが定まり、安定する。 用例:浜松中納言−二「里にぞいそぎおちつきにける」 2.高い所から落ちて地面や底に達する。類:●落着(らくちゃく)する 用例:太平記−二九「落付処にて陶山(すやま)上になりければ」 3.動揺が収まり、ものごとが安定した状態になる。 用例:虎寛本狂言・惣八「やれやれ、そなたの咄を聞て落着た」 例:「病状が落ち着く」「天候が落ち着く」 4.決まりが付く。議論などが結論に達する。 類:●決まりが付く●帰着する 用例:日葡辞書「クジガッパウニヲチツイタ」 5.人の態度や言葉などが、どっしりしとて動じないように見える。穏やかで沈着である。 用例:虎寛本狂言・居杭「『何事じゃ』『何事とは落着た〈略〉なぜに打擲召れた』」 6.表現、色合い、音色などが調和が取れていて、穏やかである。周囲のものと調和して、こちらの気分が休まる。 用例:俳・去来抄−先師評「句はおちつかざれば真のほ句にあらず」 例:「落ち着いた色合い」 用例の出典@:惣八(そうはち) 狂言。各流。金持ちに召し抱えられた惣八と名乗る出家上がりの料理人と元料理人の俄(にわか)出家とが、互いの過去を知り、役目を取り替えた方が好都合と、惣八が経を読み、俄出家が魚を料理しているところへ金持ちが帰ってきて慌てる。 用例の出典A:居杭(いぐい) 狂言。各流。少年「居杭」は何かというと頭を叩く「何某」に困り果て、観音様にお願いして、隠れ頭巾(ずきん)を授かる。行方占いの「算置き」も交(まじ)え、ちょっとした騒動となる。
・落ち武者は薄の穂に怖ず(おちむしゃはすすきのはにおず)[=恐る] 落武者は常にびくびくしているからどうということもないようなちょっとしたことにも驚く。転じて、怖いと思えば、なんでもないものまで、すべて恐ろしく感じられる。 類:●風声鶴唳(ふうせいかくれい)●水鳥の羽音に驚く
・落ち目に祟り目(おちめにたたりめ) → 弱り目に祟り目
・お茶っぴい(おちゃっぴい) 1.働いても金にならない、割りの合わないこと。 用例:浄・神霊矢口渡−四「御褒美(はうび)を貰ふ時は親方一人であたたまる。此六蔵はおちゃっぴい」 2.女の子がお喋りで出しゃばりな様子、また滑稽な振る舞いをする様子。年齢に似合わずに老成(ませ)ていること。また、そういう少女。 類:●おしゃま●跳ねっ返り 用例:雑俳・川柳評万句合−宝暦一三「おちゃっぴい鼻の穴からけむをふき」 ★「おちゃひき(御茶挽)」が変化した語<国語大辞典(小)> ★「お茶挽き女郎」との関連が強い語。
・お茶の子さいさい(おちゃのこさいさい) ものごとが容易(たやす)くすらすらとできることを、調子良くいう言葉。 類:●朝飯前●朝腹に茶漬け ★「お茶の子」は、お茶請けの菓子のこと。お茶の子は気軽に食べられることから、容易にできることを言う。また、「お茶の子」を「農民が朝仕事前に食べた軽い食事(=朝飯前)」とし、「朝飯前」と結び付けたものとも言う。 ★俗謡のはやしことば「のんこさいさい」をもじっていう<国語大辞典(小)>
・お茶を濁す(おちゃをにごす) 表面だけ取り繕(つくろ)ってその場を切り抜ける。取り繕って誤魔化す。 ★かつて、お茶は大変貴重なものとして珍重されていたので、お茶を出せばその場を丸め込め、急場を凌ぐことができたことによる。また、茶を点(た)てる作法を碌に知らない人が、適当に茶筅で掻き回して湯を濁したことによるともいう。 ★「お茶“で”(その場を)濁す」の意味から転じたものか。
・お茶を挽く(おちゃをひく) 1.芸妓や娼妓がお客がなくて暇でいることにいう。 用例:浮・好色二代男−二「下駄はいてうすをいただき、お茶をひかしゃれぬまじないといふ」 ★暇な時には、葉茶を臼にかけて粉にする仕事をしたからいう<広辞苑第四版(岩)> 2.一般に、商売が暇なこと。 類:●開店休業
・お調子者(おちょうしもの) 好い加減に調子を合わせる者。他人の意見に見境なく賛成する人。直(す)ぐ調子に乗り易く、軽はずみな行動をする者。
・落ちを取る(おちをとる) 良い評判を得る。役者などが、見物人の喝采を受ける。 用例:談・地獄楽日記−一「手々(てんで)に一つ宛おちを取らせる様に」 用例の出典:地獄楽日記(じごくらくにっき) 増谷白楽撰。絵入5巻。宝暦5年(1755)。・・・詳細調査中。