−おと2(oto2)−
・音沙汰無し(おとさたなし)[=が無い] 消息がない。連絡がない。 類:●音信不通 用例:人情・恋の若竹−下「其の後一向音沙汰無く」
・落とし前(おとしまえ) 1.露店などで、商品の値段を適当なところまで落とすこと。2.転じて、揉(も)めている人たちの間に入って、話を付けること。3.失敗や事故・無銭飲食などの後始末を付けること。無礼な言動の責任を取ること。また、そのための金銭。 例:「この落とし前はきっちり付けてもらうからな」 ★やくざなどが用いる語<国語大辞典(小)>
・音高し(おとたかし) 1.音や声が高く響く。2.噂が広まる様子。 用例:万葉−3555「韓楫(からかぢ)の於登太可思(オトダカシ)もな寝なへ児ゆゑに」
・一昨日来い(おとといこい)[=お出(い)で・失(う)せろ] もう二度と来るな。人を罵(ののし)って追い返すときに言う。 ★「おととい(をとつひ)」の原義「遠い日」として言われた言葉か。「遠い日に来い」→「ずうっと来るな」。
・大人気ない(おとなげない) 大人としての思慮分別がない。大人らしくない。つまらないことに向きになって、ばかげている。 用例:平家−七「わか殿原に争ひて、先をかけんもおとなげなし」 例:「子供を相手に大人気ないことをするな」
・音無し(おとなし) 1.音がしない。静かである。2.人に断わりを言わない。返事や音沙汰(おとさた)がない。 用例:蜻蛉−中「それより後も、をとなし」 3.秘密などを人に知られないように黙っている。隠して、言わない。 用例:源氏−夕霧「年経にけることを、をとなく、けしきももらさで過ぐし給うけるなり」 4.世間に評判されない。世評にのぼらない。 用例:源氏−真木柱「をとなく、いづかたにも人のそしり恨みなかるべくをもてなし給へ」
・大人しい(おとなしい)・温和しい 1.一族の長らしい、また、年長者らしい思慮や分別がある。主要な人物である。年配である。 用例:蜻蛉−上「返りごとは、かしこなるおとなしき人して、書かせてあり」 2.成人している。大人びている。一人前のようである。 用例:源氏−紅葉賀「今日よりは、おとなしくなり給へりや」 3.温和である。穏やかである。落ち着いている。また、従順である。 用例:虎清本狂言・猿座頭「そなたが何共いひだされぬが、おとなしいほどに、花見につれていて」 ★名詞「おとな(大人)」の形容詞化で、「大人」らしいが原義<語大辞典(小)> 用例の出典:猿座頭(さるざとう) 狂言。各流。清水(きよみず)で夫の勾当(こうとう)と花見をしている女に、猿回しが勾当が盲目なのを良いことに言い寄る。勾当が女の挙動を怪しんで帯で結びつけるが、猿回しは女と猿を結び替え、女を連れて逃げる。鷺流(さぎりゅう)では「花見座頭」、「狂言記」では「猿替勾当」。
・音無しの構え(おとなしのかまえ) 1.音を全く立てない姿勢。また、そのような態度。2.転じて、働き掛けに対して何の反応も示さないこと。なんの音沙汰(おとさた)もないこと。 類:●梨の礫 例:「催促しても音無しの構えだ」
・大人びる(おとなびる) 1.大人らしくなる。体(からだ)付きや考え方、態度などが、一人前の感じになる。老成(ませ)てくる。 用例:源氏−乙女「子のおとなぶるに、親のたちかはり痴れゆくことは」 2.女性が、結婚したり子を産んだりして、一人前の女になる。 用例:源氏−東屋「はじめの腹の二三人は、みなさまざまに配りてをとなびさせたり」 3.かなりの年配になる。年功を積んで、重々しい人になる。老(ふ)けている。 用例:宇津保−国譲中「まさご君の御乳母、おとなびにたれど、かたち宿徳にてあり」 ★現代語の「大人びる」には、2.3.の意味はない。
・音に聞く(おとにきく) 1.人伝(づて)に聞く。噂に伝え聞く。 用例:万葉−1105「音聞(おとにきき)目にはいまだ見ぬ吉野川」 2.世間の評判が高い。有名である。 用例:金葉−501「音に聞く高師の浜のあだ波は」 用例の出典:金葉和歌集(きんようわかしゅう) 平安後期の歌集。10巻。白河天皇の命による源俊頼の撰。二度の改修を経て大治2年(1127)成立。三次にわたる各撰集を初度本、二度本、三奏本と区別し、二度本がもっとも流布した。勅撰和歌集の5番目。源俊頼、源経信、藤原顕季ら227人の歌約650首を収録。四季、賀、別離、恋、雑、および連歌一九首を雑下に分類。客観的、写生的描写が多く、新奇な傾向も目立つ。
・音に聞こゆ(おとにきこゆ) 1.世間の噂に上る。動静が人々に知られる。 用例:源氏−宿木「この年頃、をとにも聞え給はざりけるが」 2.評判が高い。有名である。
・驚き桃の木山椒の木(おどろきもものきさんしょのき) これは驚いた、吃驚(びっくり)したということ。 ★「おどろき」の語呂合せで樹木の名を続けたもの。
・驚くなかれ(おどろくなかれ) 驚いてはいけないよ。これから驚くべきことを言うという前触れとして使う語。 例:「驚くなかれ、二人は実の兄弟だった」