−さし(sasi)−
・差し(さし) 二人ですること。 1.二人で向かいあいになること。主に、遊興や情事を二人だけで、人目を忍んで行なうこと。 類:●差し向かい 例:「さしで飲む」 用例:評判・色道大鏡−一「さし。男女さしむかひ、両吟にかたるをいふ」 ★元来は、「男女の差し向かい」の意味合いが強かったが、現代では、「上司と差しで飲む」「好敵手と差しの勝負」など、色気抜きの用法も多く使われる。 2.二人で荷物や責務を担ぐこと。 類●:差し担(にな)い 用例:雑俳・川柳評万句合−安永五「つりかねをさしでかつぐと雨がふり」 3.(俗語)一対一で勝負をすること。 類:●一騎打ち 例:「サシの勝負」
・差し当たり(さしあたり) 1.今この場合。今のところ。目下(もっか)。当面。当座(とうざ)。さしずめ。 用例:有明の別−三「今の世の公達(きんだち)はたださしあたり見たてまつるに」 例:「差し当たり給料日まではどうにかなる」 ★多く、「将来はどうなるか分からないが」という意味を込めて言う。 2.差し迫って。緊急に。咄嗟(とっさ)に。突然。 用例:浮・好色五人女−一「清十郎又さしあたり、是はと悦ぶ時」
・差し入れ(さしいれ) 1.中へ入れること。また、その入れる品物。2.刑務所などに拘留されている者に、外部から食物、衣類、日用品、書籍などを届けること。また、その品物。 例:「実家の父からの差し入れ」 3.(2.から)一般に、閉じ篭もって仕事をしている人などに、慰労のための飲食物を届けること。 例:「差し入れに一升瓶をぶら下げてきた」 4.芝居や寄席などで、楽屋の俳優や芸人へ、客から飲食物などを贈ること。また、その贈り物。
・匙加減(さじかげん) 1.薬剤を調合するとき、匙で薬をすくう分量の多少。薬の調合の加減。2.医者の治療の仕方。手当ての方法。3.料理の味の加減。一般的に、配合の具合い。また、取り合わせ。4.手加減すること。 類:●配慮●手心を加える 用例:雑俳・柳多留拾遺−巻三「薬礼の時はこっちで匕かげん」 例:「事の成否は彼の匙加減一つで決まる」
・差し金(さしがね)・指し金 1.大工道具。鋼(はがね)または真鍮(しんちゅう)で作った、直角に折れ曲がった形の物差し。曲金(まがりがね)、曲尺(かねじゃく)。 ★「指矩」とも<国語大辞典(小)> 2.文楽の操(あやつ)り人形の腕にしかけた長い棒。その棒に付けた麻糸を引いて人形の手首や指を動かす。3.歌舞伎の小道具で、黒塗りの細い竹竿の先に針金を結わえて弾(はず)むようにし、これに作り物の蝶、小鳥、鬼火などを付けて黒衣(くろこ)の後見が差し出して動かすもの。4.(2.3.から転じて)陰で人を唆(そそのか)し、また、指図(さしず)して動かすこと。 類:●入れ知恵 例:「どうせ親父の差し金だろう」 5.代金の一部として、または手付け金として予(あらかじ)め支払う現金。差し金(きん)のこと。
・差しつ押さえつ(さしつおさえつ) 相手の杯(さかずき)に酒を注いだり注がれたり、注がれるのを留めて注ぎ返したりすること。 類:●差しつ差されつ ★「さいつ押さえつ」とも。「押さえつ」は押しとどめること<国語大辞典(小)>
・差しつ差されつ(さしつさされつ) 相手の杯(さかずき)に酒を差したり、逆に差して貰ったりすること。盛んに杯を取り交わすこと。多く、男女が睦(むつ)まじく杯を遣り取りする場合に言う。 ★「さいつ差されつ」とも<国語大辞典(小)>
・差し出がましい(さしでがましい) 己の分際を弁(わきま)えず他人のことに係わる。 類:●出しゃばる 用例:浄・用明天皇職人鑑−三「近比さし出がましう候へ共、日本国があつまっても、財宝費ゆる斗にて」
・差し出口(さしでぐち) 出しゃばっておせっかいを言うこと。 類:●差し出で口●横槍 例:「いらぬ差し出口を利く」
・坐して食らえば山も空し(ざしてくらえばやまもむなし)・[=座して食らわば山をも空し] 働かないで暮らしていては山のような財産もやがて尽きてしまう。 類:●居て食えば山も空し●坐吃山空 用例:小説・浮雲「坐して食へば山も空しの諺に漏れず、次第々々に貯蓄の手薄になる所から」 出典:「京本通俗小説−錯斬崔寧」「坐喫山空、立喫地陥」 出典:京本通俗小説(きょうほんつうぞくしょうせつ) 伝奇小説集。宋代。・・・調査中。
・刺身の妻(さしみのつま) 1.刺身の彩りや取り合わせとして、盛り添えられる野菜や海藻などの類。2.あってもなくても、それほど影響がないものの喩え。 類:●付け足り●付け足し
・差し向かい(さしむかい) 二人が向かい合っていること。 類:●対座●差し
・然しもの(さしもの) あれほどの。流石(さすが)の。 用例:金刀比羅本保元−中「さしもの者にてはよもあらじ」 ★「然」は、程度や性質を抽象的に指示する言葉。
・砂上の楼閣(さじょうのろうかく) 砂地の上に建てた楼閣という意味で、一見すると立派だが、基礎が脆(もろ)いために長く維持できないこと。また、実現不可能なことにも言う。
・匙を投げる(さじをなげる) 1.医者や薬剤師が調剤用の匙を投げ出すという意味。医者がこれ以上治療の方法がないと診断する。医者が病人を見放す。 用例:雑俳・誹風柳多留「田舎医者さじを投げては馬で逃げ」 2.前途の見込みがないと諦めて、手を引く。救いようがなく断念する。 類:●匙を捨つ