−せひ(sehi)−
・是非曲直(ぜひきょくちょく) 良いこと(是)と悪いこと(非)、曲がったこと(曲)と真っ直ぐなこと(直)、という意味から、ものごとの正不正、道理のあるなしなどのこと。 類:●理非曲直
・是非ない(ぜひない)・是非もない 1.善悪に関わらない。善い悪いの判断を持たない。 類:●只管(ひたすら)●遮二無二 用例:栄花−岩蔭「中宮は若宮の御事の定りぬるを、例の人におはしまさば、ぜひなく嬉しうこそはおぼしめすべきを」 2.仕方がない。止むを得ない。 用例:上杉家文書−(大永5年)5月18日「直に据候而罷上候、無是非候」 例:「そう言う事情なら是非もない」 3.当然である。言うまでもない。 用例:風姿花伝−二「物狂の出立、似合ひたるやうに出立つべき事、ぜひなし」 用例の出典:風姿花伝(ふうしかでん) 室町前期の能楽論。7編。世阿弥。応永7年(1400)から同9年(1402)頃の成立。世阿弥の現存する21種の伝書のうち最古の書。能に関して、修業・演出の心得、歴史、本質などについて述べる。通称「花伝書」、略して「花伝」とも。
・是非に及ばず(ぜひにおよばず)[=叶(かな)わず] 善し悪しや方法をあれこれ論議する必要がない状況。最早そういう段階でない状態である。どうしようもない。 類:●止むを得ない 用例:狂言・吹取「これは一代一度の事ぢや。是非に及ばぬ」 用例の出典:吹取(ふきとり) 狂言。男が清水の観世音に妻乞いの祈願をしたところ、月夜の晩に五条の橋で笛を吹き、その音につられて出てきた女を妻とせよとのお告げを得た。笛の吹けない男は、笛の上手な何某に頼んで吹いて貰うと、お告げの通り被衣(かずき)を被った女が現れたまでは良かったが、とんでもない醜女(しこめ)だった。
・是非も知らず(ぜひもしらず) 事の良し悪しを意識に留めないという意味で、夢中になって自分を失い、前後の見境をなくしている状態。
・せびらかす 1.強要する。無理にたのむ。 類:●せがむ●せびる●せぶる 用例:虎寛本狂言・縄綯「イヤ、あつうて舌を焼たは、ぬるうてむせたはのと申て、私をせびらかしまする」 2.苛(いじ)める。揄(からか)う。 類:●せぶらかす 用例:虎寛本狂言・鎌腹「向後某をせびらかすまいか」 用例の出典@:縄綯(なわない) 狂言。各流。主人の博打の賭物になって某(なにがし)の家にやらされた太郎冠者は、全然働こうとしないので元の主人の所に戻される。主人の所で縄を綯いながら某の悪口を並べ立てるが、某が後ろにいるので慌てて逃げる。 用例の出典A:鎌腹(かまばら) 狂言。各流。怠(なま)け者と妻に責められた夫が鎌で腹を切ろうとするが、恐くてできず、ついに働く決心をし柴刈りに行く。
・せびり取る(せびりとる) 無理に頼んで手に入れる。強要して無理矢理に取る。 例:「親から小遣いをせびり取る」
・是非を犯す(ぜひをおかす) 事の良し悪しの掟(おきて)を破るという意味で、善悪の道理に背(そむ)くこと。