−しに(sini)−
・死に至る病(しにいたるやまい) 絶望的な事柄。絶望。 出典:「新約聖書−ヨハネ福音書」 参考:キュルケゴールが強調したもので、同名の著書もある。 人物:キュルケゴール(セーレン・オービュエ) デンマークの宗教思想家。1813〜55。抽象的、全体主義的なヘーゲル哲学や審美主義的な態度に反対し、また現実のキリスト教、教会を批判、ひたすら自己の純粋な生き方を追求した。単独者、主体性、絶望、実存的思惟(しい)の意義を強調して、のちの実存哲学、弁証法神学に大きな影響を与えた。主著「不安の概念」「死に至る病」「あれかこれか」「反復」「おそれとおののき」。
・死に馬が屁を扱く(しにうまがへをこく) 1.有り得ないことの喩え。2.有り得ないことが起こること。 類:●死に馬に蹴られる●鼈(すっぽん)が時を作る
・死に馬に蹴られる(しにうまにけられる) 俗語。 1.十中八九間違いなかったものが覆(くつがえ)ることの喩え。2.馬鹿馬鹿しいことの喩え。
・死に馬に鍼(しにうまにはり) 1.なんの効果もないことの喩え。2.どう考えても絶望だと思えるものごとに、万が一を期待して、最後の手段を講じてみることの喩え。時機に遅れることの喩え。
・死に馬に鞭打つ(しにうまにむちうつ) 死んだ馬には、いくら鞭打っても走らない。無駄な努力の喩え。 ★西洋のことわざ。
・死に様(しにざま) 1.まさに死のうとする、そのとき。 類:●死に際(ぎわ) 用例:徒然草−六十「師匠死にさまに、銭二百貫と坊ひとつを譲りたりけるを」 2.死ぬ時のありさま。死に臨(のぞ)んでの、人としてのあり方。また、死んだときの様子。 類:●死に様(よう) ★「しによう」の誤読からか。 ★「生き様(ざま)」は、造語。昨今では、「取り沙汰するに値する生き方」の意味で一般化しつつある。
・史に三長あり(しにさんちょうあり) 歴史書を書く人が具(そな)えなければならない長所は、「才」「学」「識」の三つである。 出典:「唐書−劉子玄伝」「史有三長、才、学、識。世罕兼之、故史者少」
・死に損ない(しにぞこない) 死ぬべきときに死ねないこと。また、その人。老人などを罵(ののし)っていうのに用いる。 類:●くたばり損ない
・死にたる人は生ける鼠に及かず(しにたるひとはいけるねずみにしかず) 死んだ人は生きている鼠以下である。死ぬのはつまらないことだということ。 類:●死んで花実が咲くものか●死ぬ者貧乏●死んで骨は光るまい●死しての長者より生きての貧人 出典:山上憶良「沈痾自哀文」「生は貪る可し。死は畏(い)む可し。天地の大徳を生と曰ふ。故に死人は生ける鼠に及かず」
・梓に上す(しにのぼす) 書画を板木に彫刻し、印刷して発行する。書物を出版する。 類:●上梓(じょうし)する 参考:昔は、版木には、梓(あずさ)の木が使われていたことから。
・死に花が咲く(しにばながさく) 立派な死に方をして、死後に名が残る。 類:●死に光り 例:「お国のため、見事死に花を咲かせて参ります」
・詩に別才あり(しにべっさいあり) 詩の才能は、学問、教養の深浅によるものではなく、特別なものである。 類:●詩に別趣あり 出典:「滄浪詩話−詩弁」
・死に水を取る(しにみずをとる) 1.死に際に口に水を注いでやる。死に際の人の唇(くちびる)を水で湿(しめ)してやる。 2.転じて、死に際の面倒を見る。 参考:死に水(しにみず) 死に際に口に注いでやる水のこと。末期(まつご)の水。
・死に目に会う(しにめにあう) 「死に目」は死ぬ間際の意味。親などの臨終に立ち会うこと。 例:「放蕩者は親の死に目に会えない」
・死に物狂い(しにものぐるい) 1.死ぬことも恐れないではげしく行動すること。2.必死の覚悟で行動すること。 類:●死に狂い 参考:葉隠「武士道は死に狂いなり、気違いになりて死に狂いするまでなり。武道にて分別できれば遅れるなり。忠も孝も要らず、武士道においては死に狂いなり。忠孝はおのずから籠るべし」 参考の出典:葉隠聞書(はがくれききがき) 江戸前期の武士道論書。11巻。享保元年(1716)成立。鍋島藩士山本常朝の談話を同藩士田代陣基が筆録したもの。「武士道と云は、死ぬ事と見付たり」といった思想を基軸に尚武思想を説き、肥前藩を中心とする逸事、逸聞などを伝える。「葉隠」「葉隠論語」「鍋島論語」とも。
・死人に口なし(しにんにくちなし)
・死人に妄語(しにんにもうご)[=文言(もんごん)] 嘘を言い立てて、死人に無実の罪を着せること。