−しれ(sire)−
・知れた(しれた) 1.分かり切った。言うまでもない。当たり前の。 用例:浄・一谷嫩軍記−三「知れた事をと鋭(するど)なる」 例:「そんなことは知れたことさ」 2.一般に、良く知れ渡っている。 類:●公然の 用例:浮・好色一代男−四「人の噤子(むすめ)にかぎらず、しれたいたづら」 3.高(たか)が知れた。大したものでない。 例:狂言記・蟹山伏「やいやい強力(がうりき)。きゃつはしれた蟹じゃは」 例:「あいつがキャプテンなら知れたものだ」 用例の出典@:一谷抉軍記(いちのたにふたばぐんき) 浄瑠璃。時代物。五段。宝暦元年(1751)大坂豊竹座初演。並木宗輔が三段まで執筆したが没し、その後を受け継いで浅田一鳥、浪岡鯨児らが完成したという。熊谷次郎直実と平敦盛、岡部六弥太忠澄と平忠度との二つの物語を組み合わせて脚色した作品。 用例の出典A:蟹山伏(かにやまぶし) 狂言。各流。原型は室町時代。強力(ごうりき=下僕のこと)を引き連れた山伏が山中で蟹の精に出会う。強力は晩のおかずにしようと棒で殴り掛かるが、逆に耳を挟(はさ)まれてしまう。「わが行力(ぎょうりき)を見せてやろう」と自慢して念じたが効果はなく、山伏も蟹に耳を挟まれて突き倒される。