−それ(sore)−
・それかあらぬか 1.それかそうでないか。 用例:源氏−浮舟「物よりのぞきなどして、それかあらぬかと見定めん」 2.そのせいかどうか。 用例:洒・遊子方言「まだひく四つの拍子木も、それかあらぬか駒下駄の、音に色めくありさまは」 用例の出典:遊子方言(ゆうしほうげん) 江戸中期の洒落本。1冊。田舎老人多田爺(ただのじじい)作。明和7年(1770)刊。書名は漢の揚雄著「揚子方言」のもじり。江戸吉原で、通人ぶった男が振られ、野暮な初心者が厚遇される構想を、洗練された会話文を生かして展開。洒落本の定型を作り上げた傑作。
・それからそれと[=それへと] 話したり考えたりすることなどが、次々に続く状態。
・それそれまで 限られたそれだけのこと。それまでのことだ。止むを得ない。 用例:浮・好色二代男−五「それからそれ迄切の身とはなりけるとや」 用例の出典:好色二代男(こうしょくにだいおとこ)⇒諸艶大鑑(しょえんおおかがみ) 浮世草子。8巻。井原西鶴。貞享元年(1684)刊。副題「好色二代男」。首章と最終章では「好色一代男」の続編の型をとるが、他の38章は独立。
・それ来た(それきた)[=そら来た] 1.待ち構えていたものが来た時に言う。2.物の受け渡しの際などに、動作に応じる掛け声として言う。
・それ御覧(それごらん)[=御ろうじませ・御ろうじろ・御覧なさい] 「それ見ろ」を柔かに言ったもの。結果は前から分かっていたのだと、相手に同意を強要する表現。
・それしき 1.(「しき」は遣り方・方法) その遣り方。その方法。その様式。2.(「しき」は接尾語) 事柄の性質、内容、程度が問題とするに足りないほどであること。その程度。高(たか)がそれくらい。
・それとない・それとなく はっきりそれという訳ではない。遠回しに。 例:「それとなく断っておいて呉れ」
・それとなしに・それとはなしに 1.何がどうということもなく。2.具体的にそれと指すことをしないで。 類:●それとなく●暗に
・それにしては そうではあると認めてもなお。そうである割りには。 例:「台風が近付いているというが、それにしては静かだ」  ★前の事柄を踏まえて、なお反論したり批判したりするときに用いる<国語大辞典(小)>
・それにしても 1.そうだとしても。そのことはそれであるにしても。 例:「会合があると言っていたが、それにしても帰りが遅い」 ★前の事柄を一応認めて、更に付け加えるときに用いる<国語大辞典(小)> 2.しかし。 例:「それにしても寒いね」 ★話題を転換するときに用いる語。<大辞林(三)>
・それにつけて そのことに関連して。それによって。 ★前の事柄との関係から、後の事柄が生ずることを示す<国語大辞典(小)> 
・それにとりて[=とって] 1.そのため。その場合に。それに関して。 用例:徒然草−一八八「人に先だちて、小を捨て大につくが如し。それにとりて、三つの石をすてて、十の石につくことは易し」 2.それはそれとして。ところで。 ★一続きの話の中で、話題の少し逸(そ)れる場合、また、逸れていた話を元に返す場合など、文頭に置く語<国語大辞典(小)>
・それに引き換えて(それにひきかえて) …とは違って。それと比べ、これは全く異なって。 ★前の事柄に比べて、後の事柄が対照的に相違していることを示す。<国語大辞典(小)>
・それはさておき ところで。 類:●閑話休題 ★話題を他に転じるとき、その最初に置いて用いる<国語大辞典(小)>
・それはそれとして[=そう・そうと] それはそれで置いておいて。それはそれで良いとして。そのことは兎も角。 ★それまでの話をひとまず置いて、他の話題に転じるときに用いる<国語大辞典(小)>
・それはそれは 1.大変…。とても…。非常に…。 例:「それはそれは美しい景色でした」 ★副詞的に用いて、以下の意を強める<国語大辞典(小)> 2.おやまあ。なんとまあ。例:「それはそれは、お気の毒に」 ★恐縮の意や驚きの意などを表す<国語大辞典(小)>
・それ見たか(それみたか)[=見たことか・見たこそ] 忠告を無視して失敗した相手に、やや軽蔑の意を含めていう言葉。 類:●様を見ろ
・それ見ろ(それみろ) 「それ見たか」をやや俗語的に、また、罵(ののし)りの意味合いを強めた言葉。 ★「それ見てみなさい」などとも言う。