−そて(sote)−
・袖打ち合わす(そでうちあわす)[=掻き合わす] 相手に敬意を示すために、または、畏(かしこ)まる気持ちを表わすために、着物の両袖を掻き合せる。 用例:枕−七六「塀のかたにうしろおして、袖うちあはせて立ちたるこそをかしけれ」
・袖掻き合わす(そでかきあわす) 両袖を重ね合わせる。身なりを整えてかしこまる。 用例:徒然草−90「問はれて、掻き合わせて」
・袖片敷く(そでかたしく) 男女が互いに袖を敷き交わして寝るのに対して、自分だけの袖を敷いて寝る。また、独りで旅寝をする。 類:●独り寝をする 用例:万葉−3625「蘇弖加多思吉(ソデカタシキ)て独りかも寝む」
・袖から火事(そでからかじ) 小さな事から大事が引き起こされることの喩え。明暦の大火「振袖火事」から来ているとされる。 参考:振袖火事(ふりそでかじ) 明暦3年(1657)1月18・19の両日に亘って江戸の大半を焼き尽くした大火。明暦の大火。施餓鬼(せがき)の仏事で焼いた振り袖が強風にあおられて空に舞い上がったのが原因になった。
・袖交わす(そでかわす)[=交(か)う] 1.男女が互いに衣の袖を振り交わす。また、男女が袖を敷き合いして寝る。2.袖が触れるほど近くに並ぶ。 類:●共寝する●袖を連ねる
・袖狭し(そでせばし) 衣服の袖の幅や丈(たけ)が短い。身分が卑しいこと。不遇の身であることや、十分にできない様子を指す。
・袖続ぐ(そでつぐ) 男女が袖を交わして共寝する。 類:●袖を連ねる
・袖に時雨る(そでにしぐる) 衣の袖に時雨(しぐれ)が降り掛かるということで、悲しみの涙で袖が濡れる喩え。
・袖に縋る(そでにすがる)[=付く] 袖に取り付いて引き止める。相手の同情を引いてその助けを求める。 類:●哀願する
・袖に墨付く(そでにすみつく) 人に恋い慕(した)われる時には、衣の袖に墨が付くと言われる。誰かに恋い慕われている印であることを言う。
・袖にする(そでにする)[=なす] 1.手を袖に入れたままで、何もしないこと。2.そのものごとを重んじないで疎略にする。疎(おろそ)かにする。また、人を冷淡にあしらい、邪魔者扱いにする。 例:「彼女から袖にされた腹いせ」 ★「身」に対しての「袖(=付属物の意味)」から、粗略、ないがしろにすること。
・袖に露置く(そでにつゆおく) 袖に露が掛かって濡(ぬ)れる。悲しみの涙で袖が濡れる。
・袖になる(そでになる) 冷淡になる。余所余所しくなる。 ★「身」に対しての「袖(=付属物の意味)」から、粗略、ないがしろにすること。
・袖に湊の騒ぐ(そでにみなとのさわぐ) 湊が打ち寄せる波で騒ぐように、激情のあまりに、泣き声と共に涙が袖に降り掛かること。 用例:伊勢−二六「思ほえず袖にみなとのさはぐ哉」
・袖の朝明き(そでのあさあき) 衣の袖の辺りが寒く感じる夜明け方。
・袖の雨(そでのあめ) 悲しみの涙で衣の袖が濡れること。
・袖の上の玉の砕けたよう(そでのうえのたまのくだけたよう) 最愛の子を失うことの喩え。 類:●掌中の玉を取られたよう
・袖の海(そでのうみ) 涙が多く流れること。
・袖の子(そでのこ) 稲の異名。 ★僧が衣の袖で受けるところからの称という<国語大辞典(小)>
・袖の氷(そでのこおり)[=氷柱(つらら)] 衣の袖を濡らした涙が凍ってしまったという意味で、悲しみに閉ざされた心の喩え。
・袖の柵(そでのしがらみ) 流れる涙を堰(せ)き止める衣の袖のことを、川の流れを堰き止める柵に見立てて言った言葉。
・袖の時雨(そでのしぐれ) 悲しみの涙が流れて袖に掛かることを、時雨に喩えた言葉。 類:●袖時雨
・袖の雫(そでのしずく) 衣の袖に掛かる雫の意味で、悲しみの涙で袖が濡れることの喩え。
・袖の下(そでのした) 1.多く、下に「より」「から」を伴って使われる。手でする動作を、人目に付かないようにこっそりとする様子。人目を憚(はばか)って内緒でそっと手渡すこと。 用例:浮・好色一代男−三「名残の神楽銭、袖の下よりかよはせて」 2.人に知られないようにして贈り、または、貰う金品。賄賂(わいろ)や心付けなど。
・袖の滝つ瀬(そでのたきつせ)・袖の滝 衣の袖に掛かる滝ということで、涙が激しく流れ出る喩え。
・袖の露(そでのつゆ) 衣の袖に置く露ということで、悲しみの涙で袖が濡れることの喩え。
・袖の波(そでのなみ) 衣の袖が悲しみの涙に濡れていることを、波に喩えていう。
・袖の涙(そでのなみだ) 衣の袖を濡らす涙。
・袖の羽風(そでのはかぜ) 衣の袖を打ち振るときに起こる風を鳥の羽風に喩えていう。
・袖の淵(そでのふち) 溢(あふ)れ流れる涙が衣の袖に淵をなすということで、涙が多く流れる喩え。
・袖の別れ(そでのわかれ) 男女が互いに重ね合わせていた袖を解き放して別れること。
・袖振り合うも多生の縁(そでふりあうもたしょうのえん)[=触り合うも〜]・[=他生の縁]
・袖纏き干す(そでまきほす) 濡れた袖を共寝の枕にして乾かす。
・袖行く水(そでゆくみず) 袖を流れる水という意味で、涙のこと。
・袖別る(そでわかる) 別れる。 類:●袂(たもと)を分かつ
・袖を返す(そでをかえす) 1.袖を裏返しにする。 ★昔は、こうして寝ると、思う人が自分の夢の中に現れる、または、思う人の夢に自分が現れることができると言い伝えられていた<国語大辞典(小)> 2.袖を翻(ひるがえ)す。
・袖を絞る(そでをしぼる) 涙で濡れた袖を絞る。酷く悲しんで泣く様子。
・袖を詰める(そでをつめる) 女子が成人に達して、または結婚して、振袖をやめ、袖丈を短くする。留袖を着るようになる。 類:●袖を留める
・袖を連ねる(そでをつらねる) 1.大勢の人が連れ立ち、並ぶ様子。2.男女が袖を交わして共寝する。 類:●袖交わす
・袖を通す(そでをとおす) 衣服の袖に手を通して着る。特に、新しい着物に手を通して着る。 類:●手を通す
・袖を留める(そでをとめる) → 袖を詰める
・袖を濡らす(そでをぬらす) 雨、露、涙などで袖を濡らすということで、涙を流して泣くこと。
・袖を払う(そでをはらう) 袖に付いた塵(ちり)などを払い落とすという意味から、自分の考えや意志を通すのに邪魔になる物を払い除(の)ける。 類:●袂(たもと)を払う
・袖を控える(そでをひかえる) 袖を捉(とら)えて引き止める。
・袖を引く(そでをひく) 1.袖を取って人を誘う。2.袖を引っ張って、そっと注意を与える。
・袖を広ぐ(そでをひろぐ) 物乞いをする者が、袖を広げてその上に受ける。物乞いをする。乞食をする。
・袖を塞ぐ(そでをふさぐ) 袖の脇明(わきあ)けを縫い合わせて塞ぐ。成人すること。 類:●脇を塞ぐ●元服する ★近世には、男女とも、元服以後は振袖から留袖に変えるのを常とした<国語大辞典(小)>
・袖を干す(そでをほす) 水や涙で濡れた袖を乾かす。涙が出なくなるということで、悲しみや苦労がなくなること。多く、否定的な表現で用いられる。
・袖を分かつ(そでっをわかつ) 人と別れる。また、関係を断つ。 類:●袂(たもと)を分かつ●訣別(けつべつ)